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UI を翻訳・ローカライズする時に注意したい 3 つのポイント

ui

UI とは何か

UI は「User Interface:ユーザーインタフェース」の略称です。具体的には、ソフトウェアなどでは頻繁に出現する画面のことを指します。(メニューやエラーメッセージなど)

ui3

この UI の翻訳やローカライズを行うにあたっては、通常のドキュメントの翻訳とは異なった注意が必要になります。今回は、その主な注意点をご紹介します。

UI 翻訳、ローカライズの準備

まず、作業にあたって準備が必要です。

  1. 翻訳対象原稿(ファイル形式)
  2. 専門用語集
  3. 表記スタイルガイド
  4. (必要であれば)スクリーンショットや実機インストール

 

それぞれについて見ていきましょう。

翻訳対象原稿について

これは読んで字のごとく、翻訳する対象のファイルのことです。しかしながら、UI の場合にはドキュメントとは異なり、様々なファイル形式があります。例えば、以下のような拡張子のファイルがあり、これらが対象となります。

  • .txt :テキスト形式のファイル
  • .resource:リソースファイル
  • .rc:リソースファイル
  • .xls/.xlsx:エクセルに抽出されたファイル

これらは、そのまま開いて作業することができないものもあるため、SDL TRADOS(トラドス) を代表とする翻訳支援ツールなどを使用して翻訳することもあります。

 

SDL TRADOS(トラドス)の解析アルゴリズム

 

またリソースファイルでは翻訳対象文章以外のプログラムコードが記述されているため、それらを誤って削除したりしないように注意する必要があります。

UI の翻訳やローカライズには、TRADOS だけでなく Passolo や Catalyst といった翻訳支援ツールを使用することで一貫性を保つことができます。なおこれらのツールは、上記のようなマニュアル等のドキュメントの翻訳でも効果を発揮します。

ローカライズとは

 

どんなファイル形式で原稿をお借りするかによって、使用ツールや納品形式も変わってしまいますので、翻訳会社への連絡時には、原稿のファイル形式を合わせて伝えた方が良いでしょう。

専門用語集について

用語集は、UI の翻訳やローカライズに関わらず大切です。弊社では、用語集をお持ちでないお客様向けに「用語集構築プラン」をご提供しています。

用語集構築・運用

 

専門性が高くなればなるほど用語集は重要になります。専門用語は、その用語が持っている意味が重要だからです。用語集がなければ、統一が難しくなってしまうシーンもあるため、できるだけ用意しましょう。

表記スタイルについて

用語集と同様に、表記スタイルも大変重要です。例えば、このような場合は何が正解なのかはお客様にしかわかりません。

表記の例ルール
ユーザ インタフェースユーザ、インタ、フェース
ユーザ インターフェースユーザ、インター、フェース
ユーザ インターフェイスユーザ、インター、フェイス
ユーザ インタフェイスユーザ、インタ、フェイス
ユーザー インタフェースユーザー、インタ、フェース
ユーザー インターフェースユーザー、インター、フェース
ユーザー インターフェイスユーザー、インター、フェイス
ユーザー インタフェイスユーザー、インタ、フェイス

どれも ” User Interface” という言葉の訳語であり、意味も変わりません。違うのは表記スタイルだけです。

これは、どれも意味は同じなのに、表記方法が異なっているというほんの一例です。UI の場合、特にこの表記方法が異なると、画面として表示させたときに、かなりバラバラな印象が強く、使いにくいソフトウェアと思われてしまうかもしれません。

スクリーンショットや実機インストール

UI はそのソフトウェアのスクリーンショットがあればより翻訳しやすくなります。これは完成形をイメージできるからです。また、場合によっては翻訳時に作業環境を構築し、実際のソフトウェアをインストール、操作しながら翻訳するケースもあります。

これらはどちらも、実際の画面に表示される状況を想像して翻訳することができるために、品質が高くなるということを意味します。

まず作業前に確認すべき点を洗い出し、準備することで実際の翻訳作業をスムースにすることができるため、より翻訳作業そのものに集中することができ、結果としてお客様が望む品質に近くなるのです。

これらを踏まえ、UI の翻訳時に、特に重要な 3 つの注意点をご説明しましょう。

注意点1:限定された文字数

ドキュメントの翻訳と異なり、UI の翻訳やローカライズではその使用される場所が画面やメニュー画面ということもあり、ダラダラと長い文章で翻訳することができません。

スクリーンショットの幅に収まるように訳文を調整しなければ、どんなに上手な翻訳でも使い物になりません。このため、翻訳後には訳文を実装し表示させ、訳文の微調整などを行わなければならないケースもあります。

例えば、英語から日本語からの翻訳の場合には、英語はシングルバイト、日本語はダブルバイトという前提を踏まえて最大の文字数をあらかじめ決めておいて翻訳する必要があります。

文字数制限のある翻訳では、創意工夫が必要になりますし、上述の用語集や表記スタイルが重要になってくるのです。

注意点2:文脈(コンテキスト)がない

通常、ドキュメントは読み物としての要素を持っているため、「話の流れ」、つまり文脈(コンテキスト)が存在しますが、UI には文脈がありません。そのため、この文章がいったいどういうシーンで使用されているのかが想像できないため、どのように訳せばいいのかがとりわけ困難になります。

文脈は非常に重要です。読み手だけでなく翻訳者にとっても、流れるような、リズムのある文章は、読み手の頭にスッと入っていきますが、逆に、読みにくい文章の場合にはそれがかなり難しくなります。

文脈(コンテキスト)がない分、周辺資料がより一層重要な位置を占めるのがご理解いただけるかと思います。

注意点3:ファイル形式

UI  ファイルには、様々なファイル形式があるのは上述のとおりですが、UI ストリングス内にある文字列では翻訳する必要のないものが多くあります。もっとも一般的なものとして、例のような記述がある場合、以下のように処理します。

example

この際、翻訳対象個所以外を誤って触ったり、変更してしまったりすることがあります。

これについてはツールを使用して回避するか、もしくはエクセル等に翻訳対象個所を抽出していただき、そのエクセルファイルを翻訳するという方法があります。これであれば、余計な文字列を気にすることなく翻訳作業に専念することができるためです。

まとめ

UI はソフトウェア内においてユーザとの接点となる大変重要なコンタクトポイントです。インターフェースとしての機能を果たすためには、適切な訳語である必要があります。

弊社のこれまでの経験でも、ドキュメントは翻訳してもソフトウェアはローカライズしなかったり、UI が英語のままの製品がありました。これは、下手な翻訳をするくらいなら英語のままのほうがユーザに親切だという判断です。UI をはじめとした翻訳・ローカライズ作業は確かにコストのかかるものですが、それは顧客満足度を引きあげるための必要な投資ですから、翻訳の品質をきちんと担保すべきではないでしょうか。

だからこそ今回お伝えした3つのポイントに注意していただき、納得のいく品質で翻訳し、ご利用いただければと思います。

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要注意!無料翻訳トライアルの「落とし穴」

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「無料翻訳トライアル」は、デパ地下の「試食」や OA 機器の「デモ」と同じ

世の中に多く存在する翻訳会社ですが、その多くは、お客様に翻訳の品質を確認してもらうために少量の分量で「無料翻訳トライアル(試訳)サービス」を提供しています。(提供していない企業もあります)

「無料で品質を確認できる」ことはお客様にとって大きなメリットですが、これは別の業界で言えば試食やデモ機の貸し出しと同じことです。

お客としての立場で考えると、試食であれば、食べて美味しいと感じたものを「買いたい」と思いますし、デモ機を導入してもらってその操作性やスピード、コストなどを実感できれば、正式に契約するということになります。

しかしながら翻訳業界の場合、事情が少し違います。

翻訳会社の「無料翻訳トライアル」とは何か

具体的にどう違うのでしょうか?翻訳の品質を事前に確認することは他のお試し行為と何ら変わりはありません。弊社でも無料翻訳トライアルを行っております。

無料翻訳トライアル

 

例えば、弊社の場合には

  • 言 語:英語 → 日本語の場合
  • 分 量:原文英語ワード数 200 ~ 300 ワード程度
  • 納 期:約 1 週間程度
  • 言 語:日本語 → 英語の場合
  • 分 量:原文日本語文字数 300 ~ 400 字程度
  • 納 期:約 1 週間程度

といった条件で対応しています。(分量が極端に多い場合には、有償トライアルという形でも対応します)

これは概ねどの翻訳会社でも行っていることだと思われますし、ここまで見てもほかのお試しサービスとの違いは感じません。お客様にとっては、このトライアルを行うことによって同じ品質の安心感を得ることができます。だからこそ初取引の場合には特に、金額だけで判断することなく、翻訳品質とのバランスが取れているかどうかを確認しなくてはなりません。

 

ご相談内容から分かる「失敗しない翻訳サービス」とは

 

翻訳会社の行う無料トライアルは積極的に有効活用することをお薦めいたしますが、ただ1点だけ注意してほしいことがあります。

「黙っていれば分からない」という声にどう対処すべきか

注意点とは、翻訳会社によっては、「トライアル合格のために、トライアル専用の翻訳者を使用し、実際には別の翻訳者を使用する」という点です。違う言い方をすれば、「トライアルさえ合格してしまえば問題ない」「黙っていれば分からないと考えている」ということです。

そんなバカなという声も聞こえてきそうですが、実際にこういったことが発生しているのは事実であり、いうなれば「トライアルを悪用する」ようなものです。

これが続けば、トライアルそのものの意味がなくなり形骸化することになりますので、由々しき問題です。

実際のお仕事の際には、翻訳会社から納品されたものを確認すれば分かってしまうことの方が多いでしょう(というよりも、ほとんど分かってしまうはずですが)。

しかし、それはあくまで結果論であり、そもそもがそういうリスクを抱えていること自体が問題なのであって、それを回避するにはどうすればいいのでしょうか。

お客様側が個人の翻訳者を指名することはできないケースも多いですが、良心的な翻訳会社であれば、お客様を騙すような行為はそもそもしませんし、そういったシステムになっていません。

トライアル時の翻訳者と実際のお仕事のときの翻訳者は同じ人物かという点を、翻訳会社のスタッフにしっかり確認しておくだけでも大きな予防策になるでしょう。また登録翻訳者の経歴や実績も公開可能な範囲で見せてくれる場合もありますので確認するというのも大きなポイントです。


■コラム:「ドキュメントをわけて発注すればタダになる!?

これは実話ですが、お客様からのトライアルのお問い合わせでビジネスマナーに則っていないものが、ごく稀にあります。

例えば、5ページのドキュメントがあった場合、複数の翻訳会社(5社)に1ページずつ「無料翻訳トライアル」という形で依頼し、それをひとつにまとめて、結果として5ページ分を無料で翻訳するということがあります。

品質はともかく、当然、このようなケースではトライアルの結果なども教えてもらうどころか、一切連絡が取れなくなってしまうこともあります。元々お仕事として発注する気がないのですから当然といえば当然です。

これはクライアント側も無料翻訳トライアルを悪用することもできるという一例で、私たちもにわかに信じられないような話ですが、残念ながらこれもごく稀に起きているケースです。

もはやこれらは仕事と呼べるものではありません。倫理的に間違っているようなクライアントであれば事前にお断りしなければなりません。


化かし合いのような仕事は誰も得しない

例えば、商品についているラべル表示と、実際の原材料や原産国が違っていれば大きな問題となります。通訳の場合には実際のその人が現地に赴きますので誤魔化すことはできませんが、翻訳の場合には「ブラックボックス化」が起きやすいため、今回取り上げたような事態が稀に起きていると言えます。

もちろん、実施されるトライアルのほとんどは「トライアルの翻訳者=実際の作業の翻訳者」ですし、気づかないお客様も多くはないと考えられます。

こういった仕事は短期的にも長期的にも良いことがひとつもありません。どちらも重要な「信頼関係」を失うだけです。

長期的に見て付き合うべきかどうかは、品質だけでなく「バランス」を見る

結局のところ、このようなことが起きるのは、どこかがアンバランスな状態や仕様だからでしょう。バランスの取り方を間違えているということかもしれません。

価格だけでも、品質だけでも、納期だけでもダメなのです。比較検討するのであれば、このすべての項目について検討しなければなりません。本当に信頼に足る会社なのかを見極める目を持たなくてはなりませんが、その一助となれば幸いです。

ご相談内容から分かる「失敗しない翻訳サービス」とは

翻訳業界のこと、翻訳会社のことをもっと知るには

なお、今回の内容は、弊社作成の無料小冊子『翻訳会社の正しい選び方』に詳しく記載しております。またこれ以外の注意点などもまとめておりますのでご興味がございましたらお気軽にお申し込みください。

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また翻訳や通訳に関する情報も公開しておりますのでご覧ください。

https://www.trivector.co.jp/contents/

 

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自動翻訳 API の失敗事例から学ぶ目的の重要性

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成功事例というのは世にあふれていますが、なかなか「失敗事例」についてはお目にかかることが少ないと思います。そこで今回は、失敗事例から学べることをご紹介したいと思います。

※架空の企業 A 社の事例を解説

A 社の多言語翻訳プロジェクト背景

  • 近年増え続けるインバウンド(外国人観光客)向けの Web サイトの多言語翻訳プロジェクト
  • 取り扱う言語は英語や中国語など合わせて5言語以上
  • インバウンド情報を各言語で定期的に発信
  • 多言語への翻訳が必要になるのでコストもそれなりにかかる

最近はよく聞く話ですが、この A 社様では上記の多言語翻訳を行う際に、すべて手動で行うかもしくは、自動翻訳 API を使うかという検討期間がありました。

翻訳が「意味不明」「読めない」という事態

結果としては、「手動で行うとコストもかなりかかるので、自動翻訳で行う」という方針に決定しました。そしてその多言語で自動翻訳された言語を、翻訳会社にチェックしてもらおうという流れになりました。

まずはテストとして少量を自動翻訳し、翻訳会社に見てもらったところ、翻訳会社からは以下のようなコメントが寄せられました。

「この文章が何を言っているのかがわからない。意味を成していない」

「この中国語は簡体字と繁体字が混在していて読めない」

つまり、そもそもの訳文が、チェックしてどうにかなるレベルではないということでした。これには担当者も困り果ててしまいました。当然ながらチェック料金で対応できるものではなく、やり直したほうがいいということになりかねません。

確かに予算が無尽蔵にあれば、手動で翻訳を依頼するほうが品質的には良くなるのかもしれません。しかし、実際にはそんなことはありません。なんとかコストを抑えつつ・・・ということで自動翻訳を選択したものの、テストしてみればそれでは今度は使い物にならないというジレンマ。

そんな状態で進めても Web サイトそのももの評価が下がるのは目に見えています。今回の Webサイトは、インバウンド向けですから、色々な国の方が閲覧する可能性が高いわけです。そのために制作するのですから当たり前です。社内文書ならともかく、外国人が見てネガティブな口コミなど広がってしまったら、その方が影響が大きくなってしまい修復できません。

結局、この後、A 社としてなかなか方向性が定まらず、いったんプロジェクトは頓挫してしまいました。

何を優先するのかの見極めを

これらはよく聞く話かもしれません。ただ実際に「金額と品質と納期」のバランスをどうやって取るのかは本当に難しいものがあります。

ご相談内容から分かる「失敗しない翻訳サービス」とは

 

関連する内容になりますが、数年前に以下の記事を掲載しています。

 

機械翻訳(自動翻訳)と翻訳支援ツール

 

この記事でも触れていますが、自動翻訳にせよ、翻訳支援ツールにせよ、ツールやAPI が悪いではなく、それらを使う「人間がどういう判断基準をもって使用するのか」が重要だということです。

本質的な部分で理解をしていないと、ツールが悪い、API が使えないという話になってしまいます。テクノロジーが進化していっても、それを使う側の発想がまったく進んでいないという事態になれば、ますます「不適切な場面」で使用したり、「必要な場面」で使用しなかったりということになりかねません。

テクノロジーに原因を求めるのではなく、何を優先するのか、つまり「目的は何か」をしっかりと見極めることがますます重要になってきていると言えます。

AI の進化でますます求められる人間の役割とは

「ディープラーニング」という言葉を多く見かけるようになりましたが、このディープラーニングが今後進化し、発達すれば、人間に代わるほどの言語処理を行うことができる可能性があります。

それほどこの「ディープラーニング」は自然言語処理技術でも注目されているテクノロジーです。こちらの内容を解説してしまうとテーマと外れてしまうため、割愛いたしますが、AI が研究段階にある現在では、やはり人間がきちんと基準をもって判断をしていかなくてはならないという事実は何も変わりません。

いやむしろ、AIの真価が進めば進むほど、私たちはより一層人間的な部分を使わなくてはならなくなります。

そうなると、「全体をざっと自動翻訳しておいてあとはチェックすればいい」という発想では、まったく太刀打ちできないということになります。(すでに Google 翻訳はその精度が飛躍的に向上したというニュースが流れたのも昔の話です)

また現時点では、想定される翻訳品質が上述のようなものであれば、翻訳者も喜んで対応するということはないのではないかと推測します。(実際、弊社の翻訳者さんでも、機械翻訳や自動翻訳で翻訳された訳文を積極的にチェックしたいという方はひとりもおりませんでした)

となると、お客様側の想いだけが先行してしまって、その実情が伴ってこないという事態になりかねません。

一番大切なのは「伝わるか伝わらないか」

もっと言えば、自動翻訳でも AI でも人間が翻訳する場合でも、大切なのはその目的が果たせられるかどうかということです。

上記の例であれば、Web サイトを利用する外国人観光客が、この Webサイトを見て、「すごく便利だし使いやすいし、わかりやすいね」と思ってもらえるかどうかが重要なのであって、常に考えなくてはならないのは、それを達成するためにあなたはどうしますか?ということです。

テクノロジーはそれらをサポートしたり効率アップのためのツールです。しかし残念ながら現状ではそこまで辿りついていないとすれば、何か他の手を考えたり組み合わせたりという発想の転換が必要になります。

繰り返しになりますが、この点こそがひとつの多言語翻訳プロジェクトを成功させるかどうかの分岐点になると言えます。

まとめ

  • 自動翻訳 API も人間による翻訳も AI もそれぞれの特性がある
  • その特性を見極めることこそ、人間の重要な仕事
  • 目的に沿った明確な判断基準を持つことで「使われる」のではなく「使いこなす」ことができる

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最初に知っておきたい iPhone / android アプリローカライズ時のポイント

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何事も初めて取り組む事業はトラブルがつきものです。とは言え、ビジネスであれば初めてであっても結果を出さなくてはいけません。開発担当者、マーケティング担当者にとって、それは「アプリの販売金額やダウンロード数」になります。

モバイルアプリ開発会社 必見!アプリのダウンロード数が増えれば収益が増える?

 

弊社では、多くのアプリ開発会社様のローカライズのお手伝いをしておりますが、その多くはこのようなお悩みをお持ちです。

「初めて自社アプリを翻訳するがどこに注意すればいいのか分からない」

「アプリローカライズをするのに最初に何を準備すればいいのか」

これらは重要な問題であるかのように見えますが、実際にはもっと本質的な部分を見落としている場合が多いのです。

「盲点」は元の言語

結論から言うと、「元の言語」が最重要だという事です。はじめから海外展開を見込んでいるアプリなら、開発段階ではなく設計段階から仕様や要件に入れておくべき項目と言っても差し支えありません。元の言語の品質が非常に重要です。

翻訳する場面をイメージする

こんなシーンを想像してみてください。

上司から誰かが書いた簡単な英文を明日までに日本語に訳しておくようにいわれた。ほかの業務の合間を縫って日本語にし始めたはいいが、妙に冗長になってしまったり、うまい日本語が出てこない。読めば意味は分からなくはないけれど、もう少し上手な表現があるのではないか・・・。

実はこれがまさに「翻訳の試行錯誤」なのです。友達に頼まれた英文だから何となく意味が分かればいい、ということではありません。上司に指示された「仕事」で、適当なことはできません。それを使う場面も自分でも分かっていて、そのドキュメントがどのくらいの影響があるかも想像できるからです。

ここで悩みの種となるのは「言いたいことは頭では分かるけれど、それを適切に表現する言葉を見つけられない」という状況です。

言語の本質が違う

最も重要なのは、「元の言語の品質は一定のものであり信頼できるものか」ということです。つまりそれは、言語の性質・本質の違いに初めて気がつくということです。具体例で考えてみましょう。

アプリローカライズでもっとも多い日本語⇔英語のケースで考えてみます。

言語の性質(文法や表現等)上、基本的に日本語から英語に翻訳すると、日本語原文より英文の方が長くなる傾向にあります。おおよそ、その長さは、日本語1に対して、英語が1.5~2倍になると言われています。

当然ながら、翻訳した文章を日本語のUIの枠の中に収めるには工夫が必要になります。しかし、ほとんどの開発担当者は、なぜか日本語原文とほとんど同じ長さをイメージしているために、アプリローカライズの段になって「英文が収まりきらない」という事態に直面するのです。

言語が違うという事は文法が違うという事です。それは大きく言えば、歴史や文化が違うのです。だからこそ異なる言語がそれぞれ発達しているのですが、そこまで考慮されていないアプリが多いのもまた事実です。

例えば日本語で「確認」という文章があるとした場合、英語では、誰が動作しているかによって、「Read」「Check」「Confirm」等、複数の動詞が当てはまります。つまり日本語版では、アプリ中では「確認」のみとなりますが、英語版の場合、使用箇所によって「Check」の時もあれば「Confirm」の時もあるのです。(もちろん、UIメニューなどで使用される場合には、あらかじめひとつの単語に合わせておかなければなりません)

開発担当者から見ると、英語版は文言が「統一されていない」ように見え、困惑してしまいます(英語圏人は揃っていないと感じる人は少ないようです)。

さらに、「主語」や「所有格」を表す「私」や「私の」等は、日本語では省けますが、英語も同じように省いてしまうと、英文の本質が変わってしまったりします。

日本語と英語では、言語の性質・本質がまるで違うというのがご理解いただけるでしょうか。

翻訳を「意識」して元の言語を作成する

学生時代に言語学を学んでいる場合は別にして、初めてのローカライズ作業前に、言語の性質・本質の違いを完全に理解し、開発・設計することはまず不可能です。しかし、「意識」することはできるはずです。

「英語の方が長くなる傾向にある」と知っていて日本語版を設計する場合とそうでない場合とでは、アプリローカライズ時にかかる負荷がかなり変わってしまいます。

当然ながら後者は、成り行きで対応しなくてはならないため翻訳を何度もやり直したり、最悪、日本語版を修正したりといった余計な作業が発生してしまいます。

どんな仕事も最初から上手く行くわけではありません。「失敗は成功のもと」といいますが、まずは開発担当者自身が身を持って元の言語の重要性を理解し体験するのは外す事のできないプロセスです。机上の空論ではなくやってみないと理解できないポイントも多くありますから、「意識」しながらも、アプリのローカライズに取り組む姿勢が重要です。

ローカライズ作業者選定の重要性

また、実際に作業をするローカライズ作業者の選定は慎重に行う必要があります。

なぜなら、アプリローカライズ作業というのは、開発担当者と翻訳者が、アプリの動作や文言の意味などを慎重に協議して訳語・訳文の調整を行うべきものであり、こういった点をしっかりと理解し協力してくれる翻訳者(翻訳会社)を選定しなくてはならないからです。「翻訳して終わり」という対応では、まずローカライズ作業は成功しないと言えます。パートナーシップに則って共に作り上げていく姿勢が何よりも求められます。

アプリローカライズ成功事例

弊社にてアプリのローカライズをさせていただきました事例のひとつをご覧ください。

アマネファクトリー株式会社様

まとめ

なぜ何度も「原文が大切」だというお話をするかといえば、翻訳は基本的に元の言語以上の品質を作ることができないからです。まったくのゼロベースで文章を書けるのはあくまでライティングであり、翻訳は異なります。原文があるからこその制約や考え方があり、その条件の中でどうやって伝わる文章を作っていくのかが求められています。

ぜひこの点を意識しながら、素晴らしいアプリの開発を進めていただければローカライズ作業もスムースになり、貴社のビジネスへ好影響を与える事ができるでしょう。

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アプリをローカライズするときに気をつけたい7つのこと

topapp

今回はアプリのローカライズについてお伝えしたいと思います。

最初からローカライズを意識した日本語版を開発する

当たり前のようで意外とできていないことが多いのですが、多言語翻訳での展開を考えたときに、日本語原文に影響を受けてしまう事が少なからずあるため、事前に日本語版を作る際には、しっかりと設計する必要があるということです。

例えば、日本語を翻訳すると英語の文章が長くなる傾向にあります。理由としてはいくつかありますが、文法構造が違っていたり、書いている人が違っているなど、まったく同じ分量にはなりにくいわけです。

それにも関わらず、UI としての長さ(幅)は変わりません。つまりこのまま翻訳して英語にしてしまうと、英語が長くなってはみ出してしまうような事態になります。

アプリの内容を熟知し、使いこなしているのであれば、日本語の内容を踏まえて英語を短くしてしまったり、端折ったりということができますが、基本的に産業翻訳では「原文に忠実に」というルールが存在すること、また翻訳者が(勝手に)判断をして情報を取捨選択することはできないという側面があるため、日本語の内容を過不足なく伝えようとすると、どうしても自然と英語が長くなってしまうわけです。

日本語版の開発時に、英語やその他の言語に翻訳することを意識することは非常に重要です。

特に日本語は主語がなくても文章が成立しますが、英語などはそうはいきません。日本語を短くしても、他の言語では長くなってしまう可能性がありますので、その場合は以下のいずれかを検討する必要があります。

  • 多言語を意識して日本語の構造をハッキリさせる
  • それができない場合には、多言語が長くなっても余裕のある UI デザインを考える

ターゲット言語を決める

これは当たり前の話ですが、大変重要です。

「何語に翻訳するのか?」を検討するときには、前回ご紹介した「ダウンロード数」や「収益」を検討しなければならないからです。

モバイルアプリ開発会社 必見!アプリのダウンロード数が増えれば収益が増える?

ただ何となく中国語に翻訳しようとか、スペイン語にしておけばいいという判断では、当然ながらうまくいかないでしょう。

仮に、「スペイン語」を選ぶなら、「なぜスペイン語に翻訳するのか?」「なぜスペイン語版を作るのか?」といった裏づけが必要です。

どうしてスペイン語なのか?それは言語の特性が関係したり、その国の法律や制度なども関係するかもしれません。アプリのコンテンツによってもターゲットの言語は変わるはずです。

日本語は、基本的に日本でしか通じません。しかし英語は多くの国で読まれています。単一言語が複数の国で通用するなら、それは汎用性が高いということですので、そういった基準からターゲット言語を決めるというのもありです。

ローカライズのスケジュールを検討する

アプリをローカライズし、多言語に展開するためにはある程度の時間を要します。

例えば、日本語から英語への翻訳なら、1日に処理できる(翻訳できる)分量というのはおおよそ 3,000文字程度といわれています。それ以上のスピードアップは、品質に影響する(低下する)ため、お勧めできません。

翻訳業界と翻訳会社

このように言語ごとにスピードや処理量が違います。例えば、日本語からドイツ語に翻訳するとした場合、直接ドイツ語に翻訳できない可能性もあります。それはアプリの内容やボリュームによってリソース不足に陥る事があるためです。

その場合にはいったん英語を経由してからドイツ語に翻訳することもあります。コストはかかってしまいますが、英語→ドイツ語の方がリソースも多くキャパシティも大きいためです。

また同じヨーロッパ言語としての親和性も高いので、スピーディに展開できる事もあります。(※ドイツ語に翻訳するようなアプリは、通常は英語版があることがほとんですし、そうでない場合には英語版もリリースすべきでしょう)

無論、開発プロセスは翻訳だけではありませんが、ある程度目安を持ってスケジューリングしないと、無理な納期で翻訳することになります。当然品質は上がらず、アプリを使う現地ユーザーからも「意味が分からない」とか「文章として成立していない」といったものになってしまうことがあります。

特に多言語の場合にはその影響が全世界に広がってしまうので、慎重にローカライズを行っていかなくてはなりません。

アプリそのものの評価に直結します。

外注先を検討する

ターゲット言語とスケジュールが決まったら、今度は外注先を検討します。(社内で対応できる、という方は本エントリー自体があまり意味がありませんので、あくまで必ず外注するという前提でお読みください)

以下の図のように、外注にはいくつもの種類があります。

コスト、品質、スケジュールのバランスをしっかりと検討して発注する事をお勧めします。どの項目を重視するのか、どれが優先なのか、それを決めておかなければ期待する効果は得られません。

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翻訳の功と罪

専門用語やスタイルガイドを準備する

これは特にアプリのローカライズに限ったことではありませんが、信頼できる参考資料のうち、もっとも重要度が高いのが専門用語です。アプリ内でしか使われていない言葉だったり、製品名のような固有名詞であれば、事前に準備して指示する必要があります。

それがなければ、翻訳者は調査できる範囲で調査して訳文を作りますが、それが果たして希望通りの訳語になっているかどうはふたを開けて見ないとわかりません。

これは単純に時間の無駄ですから、事前に準備できるものは準備しておくことで、スムースになるのは間違いありません。

用語集構築・運用

翻訳対象となるテキスト原稿を準備する

周辺資料の準備が整ったら、実際の作業対象ファイルを準備します。アプリのローカライズの場合、当然ながらソースコード内に翻訳対象テキストが記述されていますが、そのファイルをそのまま翻訳者または翻訳会社に渡しても、翻訳ができないこともあります。

余計な記述は、翻訳者にとっても混乱の元ですし、また作業中に謝ってプログラムコードを1文字消してしまった、というようなことも無いとは言えません。

そういった事故を予め防ぐために、「翻訳対象テキストだけを抽出して渡す」ことが必要になります。

例えば、エクセルにテキストを抽出します。以下はイメージです。

sample

 

このように、翻訳者にも「どこを翻訳すればいいか」を視覚的に明示してあげることで、作業スピードもあがりますし、また品質も安定します。

アプリの深い理解を促すため、翻訳者に参考となる情報を渡す

さらに翻訳の精度をあげて、アプリのローカライズを成功させるには、アプリそのものをダウンロードして触ってもらったり、事前にトレーニングや簡単なミニセミナーなどを開き、翻訳者に説明するといったことも有効です。

プロの翻訳者なら事前にアプリの動作を分かっていれば、より適切な訳語を選択する事ができます。

ひと手間かかってしまいますが、事前のレクチャーや準備こそが、アプリのローカライズプロジェクトの成功の確率を上げるのだということを理解しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。これまでにご説明した項目は、私たちが日常的にアプリのローカライズをご依頼いただく中で、最低限やっておいたほうがいいものばかりです。

アプリのローカライズの良し悪しによっては、原作(日本版)の良さやアプリの魅力が伝わらない可能性も多いにあるため、自社のアプリが現地の人々に受け入れられるかどうかを左右する重要なポイントでもあるのです。

つまり、アプリのローカライズは決して翻訳者だけの仕事ではなく、お客様、信頼できる翻訳会社、翻訳者とプロジェクトチーム全員が一丸となって取り組む仕事であるといえます。

当然その場合には、コミュニケーションやチームをまとめるマネジメント力も求められます。この総合力の違いがローカライズの品質に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。

そして、事前にしっかりと準備をし計画を立て、投資すべき点にはしっかりと投資(お金をかける)できるアプリ開発会社のみが世界に進出するアプリのローカライズを成功させることが出来るのです。

アマネファクトリー株式会社様

ローカライズとは

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