翻訳の功と罪

世の中に存在する多くの翻訳サービスから、どれを選択するか

いまや翻訳サービスは、翻訳会社だけが行なうものではありません。IT 企業が自動翻訳(機械翻訳)を開発したり、子会社を作って翻訳サービスに参入したり、外に目を向ければ、中国やインドなどの低価格ローカライザーが群れを成しています。

さらに機械翻訳の世界は日々進化しており、ちょっとした翻訳はそれで済んでしまうこともあります。

また学校教育や子供の頃からの教育によって英語をはじめとした母国語以外の言語スキルがアップすることで、翻訳そのもののニーズがなくなってしまうということも起きています。

そして、その波は今後もとどまることを知らないでしょう。

ナレッジベースの「機械翻訳(自動翻訳)と翻訳支援ツール」にも記載していますが、Google 翻訳をはじめとした機械翻訳は精度があがり、SDL TRADOS(トラドス)をはじめとした翻訳支援ツールはバージョンアップを繰り返します。

このように「人の手による翻訳」以外にも多くのサービスが乱立している世界から、「自社にあったものはどれか?」を選択するのは、容易ではありません。

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翻訳業界の変化

このように、あちこちから変化が起きている翻訳業界ではありますが、それはお客様側から見たとき、「選択肢が多すぎる」という状況とも呼ぶことができます。

そして、結果として「どれにすればいいのか分からない」という事態に陥ってしまうこともあります。それだけドラスティックに変化しているのが翻訳業界です。

翻訳には、資格が不要です。明日から「翻訳者をやります」といえば出来てしまう世界です。だからこそさまざまなサービスが生まれては消えていきます。

クライアントとしてどこに発注するのかは、今後も重要な判断を迫られる

弊社にお問い合わせいただくお客様にもいくつか種類があります。

  1.  純粋に専門性の高い翻訳サービスを探しているお客様(良いものを作りたいお客様)
  2.  翻訳以外の色々と手間のかかることも全部任せたいと考えているお客様
  3.  とにかく急いでいるお客様
  4.  金額の安さのみで探しているお客様
  5.  下請けとして探しているお客様(翻訳会社)

 

弊社の定義する「お客様」は、1と2(まれに3)のみです。

これは前回のアンケートにもあったように、弊社のお客様に限っては「金額、品質、納期、対応」の4つのバランスを考慮し、ご検討いただいた上でご発注いただいているからです。

それ以外のお客様は、弊社の定義するお客様ではないため、仮に受注してお渡しできたとしても、クレームになったりトラブルになったりすることがあります。

十分な設計や準備なしに「お客様のご希望されるレベル」でいいものを作ることはできません。

こういったことを考えると、結果としてお互いに不幸になってしまったり、結果として余計に時間を喰ってしまったといういことになりかねません。

しかしこれはお客様が悪いのでしょうか?その答えは、NO です。その理由を説明いたします。

翻訳業界を衰退させる参入方法

どの業界も同様ですが、商品やサービスが「コモディティ化」し始めると、それらは衰退していきます。

例えば、これまで述べてきたようにいくつかの要素が重なり合っています。

  •  翻訳サービス経験のない企業の参入による「翻訳の理解不足によるサービスの低下」
  •  過度なグローバル化(海外ローカライズベンダーの価格の安さ、品質は不明)
  •  機械翻訳による価格破壊
  •  上記に影響されるため、翻訳会社の単価の下落および翻訳者への価格の圧力、そして品質の低下

何処にでも起きていることではあります。翻訳業界だけの話ではありません。上記の流れは、ある意味ごく自然なことと言えます。

本質的な問題は上記ではなく、お客様がその状況下において最適な選択肢を選ぶための「正しい判断基準がない」ということです。

「正しい判断基準」がないというのはどういうことか

「正しい判断基準」がないというのは、以下のような例が挙げられます。

  • マニュアルでもカタログでも契約書でもなんでも「とにかくコストを下げる」という理由で翻訳支援ツールを使う(コンテキストなどが無視され、読みやすさが失われることがある)
  • 誰が読むのか、対象読者など想定せずにドキュメントの性質を無視して翻訳を行なう
  • 自社にとっての「良い品質」がどういうものかが明確でないため、分かりやすい「価格」だけ面で翻訳会社や翻訳サービスを選んでしまう

このような基準で選んでしまった場合、想定していたものとは違った翻訳品質になってしまう可能性が高いです。

そして、毎回同じように発注することで、不満が増えていくことになります。

誤解されるかもしれませんが、これは「お客様が悪い」のではなく「翻訳業界が悪い」のだと考えます。

賛否両論ありますが、一方では「自分たちの仕事は専門性が高く、高度な仕事なのだ」という昔ながらの「翻訳家の先生」といった方々は今は見かけることはありませんが、そういった風潮が残っていることは否定できません。

それは作り手のプライドであり、失ってはならないものですが、しかし一方でそれだけではいけないというのも事実です。

専門性の高い仕事であれば、そこに対してのフィーはもちろん正当でなければなりません。しかし、それをお客様に理解してもらうには、その理由をしっかりと説明する責任もまたあるのではないでしょうか。

翻訳はたしかに「職人的な世界」ではありますが、ある種、そこにとどまってしまった時代があったからこそ、IT企業の翻訳サービスやクラウドサービス、機械翻訳などが入る余地があったのではないでしょうか。

いや、とどまらなかったとしてもこれらのサービスは参入したでしょう。しかし、その参入の仕方は少し違っていたのではないかと思います。

安さだけで参入できる業界は、それを意識しすぎてしまうと、自分たちの存在価値を見失ってしまいます。当たり前の話です。

自分たちが、「翻訳という仕事を通じて何を伝えていきたいのか」を考えたとき、その「想い」を捨ててしまうと価格競争に巻き込まれたり、自らが「専門性の高い」はずの「翻訳の価値」を下げてしまっているのだと思います。

そしてそれは結果として、市場のコモディティ化を生み出し、お客様側も正しい判断基準を持つことができずに金額のみで判断したり・・・というスパイラルを作っているのではないでしょうか。

大切なのは「翻訳の基準」を作ることであり、翻訳業界全体の「ものさし」を持つことこそ、これからさらに迫りくる機械翻訳や翻訳支援ツールの進歩、海外ベンダーとの競争、そしてお客様の多様な判断基準や求める品質に光を当てることではないでしょうか。

翻訳や通訳は、世界に橋を架けるための大変素晴らしいコミュニケーションツールです。

海外にしかないドキュメントを英語の読めない日本人に紹介し、その書物を読んだ読者に感動や知己を得たり、日本の素晴らしい「Made in Japan」製品が海外に渡り、海外ユーザーが満足し、生活が豊かになるのは、翻訳をはじめとしたコミュニケーションサービスがなければ起きないものです。

だからこそ、その思いをしっかりとお客様に説明し、ご理解いただき、ドキュメントの用途やお客様の諸条件とつき合わせ、ビジネスとしてきちんと推進することが本当に大切なことではないかと考えています。

コミュニケーションを提供する企業が、お客様とのコミュニケーションを端折ったり、怠ったりしてはならないのです。

きちんとコミュニケーションをとることによって、翻訳サービスの価値を認めていただき、そのサービスをご利用いただければ、お客様だけでなく、その先のお客様にも、そして私たち翻訳会社も、そしてもちろん翻訳者も満足度が高くなるのではないでしょうか。

翻って、弊社は何が出来るのか。弊社の経営理念に基づいたコミュニケーションサービスのひとつである翻訳サービスやローカライズサービスに付加価値を与え、お客様のご満足を引き出し、より一層高いレベルへ向かうことができるのではないかと考えています。

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