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成長が続くアジア市場の魅力
アジア市場は広大で多様性に富み、世界の成長市場の一つとなっています。その中でも特に東南アジアは人口約6億7,000万人と日本の約5.4倍の規模を誇り、またタイ、インドネシア、ベトナムでは若年層が人口の約半数を占め、高いGDP成長率を維持しています。
デジタル面でもスマホの普及率やインターネット利用率もかなり高く、日本企業にとって大きなビジネスチャンスであることは間違いありません。そのチャンスを見逃さずに海外進出、アジア市場への進出をするための具体的なローカリゼーションのステップをご紹介します。
ローカリゼーションとは何か?翻訳との違いとは?
ローカリゼーションは単なる翻訳のことではなく、言語・文化・商習慣などを含めて「現地仕様」に最適化するプロセスのことを指します。またローカリゼーションの対象というのは文章だけでなく、例えば、色彩、デザイン、UX、決済方法、法規制まで幅広く含まれるのが一般的です。
アジア市場でローカリゼーションが不可欠な理由
アジアには48の国・地域があり、さらに数千の言語と多様な文化があるのは有名です。ターゲットとする国や地域に合わせた表現をしなければ現地の人には受け入れられることはありません。
例えば、言語面ではインドでは22の公用語、フィリピンでは170以上もあります。中国に至っては、方言は多数ですし、消費行動なども日本では口コミが重視される一方、東南アジアでは家族・コミュニティ・インフルエンサーといった人たちの意見が尊重される傾向にあります。
要素 | 欧米圏の例 | アジア圏の例 |
---|---|---|
色の意味 | 白=純粋 | 白=喪(中国) 赤=幸運(中国) |
ジェスチャー | サムズアップ=好意的な意味 | 一部地域ではサムズアップが侮辱的になることも |
食文化・宗教 | 食材制限なし | イスラム圏ではハラール必須、豚肉・牛肉制限あり |
ですから、ただ翻訳すればいいというわけにはいかないことがお分かりになるでしょう。
ローカリゼーション成功のための4つの視点
1. 徹底した市場理解と市場調査
実は最も大切なのは「ローカリゼーションの準備段階」という人もいるくらいです。ローカリゼーション前に、現地の価値観や嗜好、購買行動を詳細に把握できるかどうか(色、ユーモア、宗教的配慮など細部の違いなども含めて)は、貴社商品や製品が売れるかどうか、受け入れられるかどうかを理解する非常に重要な要素です。市場調査をないがしろにしないようにしましょう。
2. 翻訳ではなく「体験の最適化」を設計する
単に文章を翻訳するのではなく、トーン、ビジュアル、UXまで現地の仕様にする必要があります。
またモバイルファーストの市場では、スマホ画面での操作性を最優先に設計しなければ、ユーザがあっという間に離脱してしまいます。
3. 過度な一般化を避ける
前項と重複しますが、「アジアを一つの市場」と見なすのではなく、国・地域ごとの特性に合わせるべきしょう。
例えば、ペプシ社の「Come alive with the Pepsi generation」が中国では「先祖を墓から呼び戻す」と誤訳された事例は、過度な一般化のリスクを象徴していると言えるでしょう。
4. テクノロジーと人の融合
翻訳メモリやCATツールを使って効率化しつつ、文化的背景を理解するネイティブ翻訳者が品質を確保していくことで、より信頼のおけるコンテンツを提供することができます。
成功企業に学ぶ!ローカリゼーション事例
アジア市場でローカリゼーションの力によってビジネスが急速に拡大した例は以下になります。
企業名 | 施策 | 成果 |
---|---|---|
Alibaba | 統合決済、グループ購入、WeChatとの互換性など現地の商習慣に柔軟に対応 | 中国B2B市場で圧倒的シェアを誇る |
Grab | 現地ドライバーとの契約・面接などで安全性を強化 | 東南アジアで急成長、Uberとの差別化を図る |
WeChat Pay / Alipay | 偽札問題解消、QRコード決済を普及 | 中国国内外で急速に普及しておりシンガポールやタイにも拡大(シェア90%以上) |
Mobike / Ofo | 都市短距離移動ニーズに特化したシェアサイクルの提供 | 急速に利用者拡大、都市交通の新インフラに |
このように、広義の意味でのローカリゼーションの実施により、企業の成長が押し上げられています。
日本企業が実践すべきローカリゼーションの 6ステップ
以下の図に示すようにローカリゼーションを成功させるためには、押さえておくべきステップがありますので、確実に実施するようにしましょう。

ローカリゼーションの6ステップ
ローカリゼーションは投資だと捉える
「翻訳」というとどうしてもコストがかかるというイメージもありますが、本来それは違います。ローカリゼーションはコストではなく、海外市場での競争力を高める投資です。適切な現地語化ができなければ貴社ビジネスはうまくいきません。逆にローカリゼーションがうまく機能すると顧客体験向上、口コミ拡大、売上増につながっていきます。
まとめ
いかがでしょうか。何度も言うように、アジア市場は成長性と多様性を兼ね備えています。その可能性を最大化するためには、戦略的なローカリゼーションが不可欠です。今回ご説明したステップを活用し、未来のユーザが「自分たちのためのブランド、自分のための商品である」と感じる体験を提供しましょう。

トライベクトル株式会社 代表取締役。会社経営 21年目。翻訳・ローカライズ業界25年。翻訳・ローカライズ実績年間10,000件以上。
BtoB向けの「言語コミュニケーションサービス」という領域で、主に翻訳/通訳/ローカライズ、インバウンド、コンテンツ制作、言語学習/研修サービスを提供している。