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観光パンフレットを翻訳する際に気をつけたい 5 つのこと

観光パンフレットの翻訳をする前に

年々インバウンド需要が増加し、日本全体としてこのインバウンドの大きな潮流に乗って発展していくためには外国人観光客をますます誘致し、集客していく必要があります。これは、地域全体、日本全体で取り組んでいくべき事項であり、単独でどうにかなるという話ではありません。

しかし一方で、「小さなことの積み重ね」がなければ、大きな流れを作ることはできません。各事業体がそれぞれの得意分野で得意なことを積み重ねていくことがインバウンド産業や観光立国としての日本を作っていくことになります。

今回はそういうマクロ的な視点を持ちながら、観光パンフレットの翻訳について解説いたします。パンフレットは、様々な場所で様々なタイミングで配布されています。そのため、一概に「こうしなければダメだ」ということはありませんが逆に「最低限これだけは抑えておいた方がいい」という点をお知らせいたします。

1. 誰が読むのか、どこに配布するのかを目的を考えること

まず最初に考えなくてはならないのは、パンフレットを作る目的です。これは、翻訳以前の原稿を作る際の重要ポイントです。

ついつい、「何のために作るのか?なぜ作るのか?」を明確にしないまま作成してしまうことが多いのですが、それだと結果的に「勝手な作り手の事情」ばかりが盛り込まれることになります。大切なのは、以下の2つです。

【ターゲット】パンフレットを読むのは誰なのか

【目的】パンフレットを読んだ後、その人たちにどんな気持ちになってもらい、

どんな行動をしてもらいたいのか

これらをしっかりと意識してから原稿を作成し、翻訳を進めていく必要があります。これらが定まっていない場合には「誰に向かって作っているパンフレットなのか分からない」という結果を招いてしまいますので注意しましょう。

2. 訳し方に気をつけること

訳し方、と言われてもなかなかピンと来ないかもしれませんが、以下のようなケースで考えてみましょう。

ある観光地には、国立公園があり、その中には博物館があるとします。外国人観光客がその博物館目当てだった場合、その国立公園内には、「博物館への順路」などの看板やサイン表示があります。これらは普通に翻訳すれば特に難しいものでもありません。

一方、外国人観光客が博物館内に入館します。そこには券売機での入場券購入があり、企画展なのか常設展なのかを選択します。

そして受付に入場券を渡して、鑑賞します。企画展でも常設展でも、解説や作品名が必要です。

時代について記述がある場合、以下のように翻訳しなければなりません。

日本語英語(間違い)英語(正解)
江戸時代Edo PeriodEdo Period(1603~1868)

「江戸時代」と表現して理解できるのは日本の歴史に詳しい人だけです。外国人観光客は自分たちの歴史と比較していつの話なのかを理解しなければ、実感することはできません。以下はミュージアムの例です。

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また、次の例を見てみましょう。

日本語の文章で「SNS をする」という一文があるとします。この場合、英語に翻訳すると、 “use SNS” と訳してしまいがちですが、海外では “use social media” とする方が自然です。

いかがでしょうか。こちらも外国人観光客の目線が無いと、単純にそのまま翻訳してしまいかねません。

簡単言えば、翻訳に関しては「外国人観光客が読んだら内容まで理解できるかどうか」という目線で作らなくてはならないということです。

これはパンフレットでも同じです。せっかく綺麗なパンフレットを作っても、外国人観光客に伝わらないと意味がありません。だからこそ、1番目の「誰が読むのか」「何のために作るのか」をはっきりさせておく必要があるのです。

3. 言語別に作ること

言語別に作ることの意味は、最近は徐々に理解され始めているように思われます。

「英語も中国語も韓国語もスペイン語もフランス語もドイツ語も、全部1つのパンフレットに入れてしまえばいい」という、ある種乱暴なパンフレットが存在していますが、これも「外国人観光客」目線に立てば、言語別にパンフレットを作っておくほうがベターです。

これらはいくつかの理由があります。

情報量が多くなる

パンフレットを言語別に作ると、1言語あたりの情報量が増えます。仮に日本語版が原文だとすれば、原文と同等量の情報を掲載することができます。情報量が増えれば、外国人観光客の理解度も高まります。

外国人観光客からの質問や疑問が減る

適切な情報量が提供されるということは、不明点や不安な点が少なくなるということです。パンフレットを見てすぐに行動できるということです。

逆に、1つのパンフレットにまとめてしまった場合には、少ない情報提供しかできませんので、必然的にインフォメーションセンターなどへの質問や疑問が増えてしまう可能性があるでしょう。聞かないと分からないからです。

確かに、複数言語の数だけパンフレットを作るのは初期コストがかかります。しかし、パンフレットがきちんと機能すれば、その後のランニングコストは最小限に抑えることができるのではないでしょうか。逆にそのコストを削減すれば、いつまで経っても質問や疑問は減らず、対応のためのコストがランニングコストとして継続的にかかってくることになります。

4. 写真は豊富に使うこと

スペースの制限はありますが、それでも写真は多く使用すべきでしょう。文字情報よりもイメージは強いメッセージ性をもっているからです。

日本人はどうしても文章が多くなる傾向がありますが、「外国人観光客」というよりは世界的な潮流としてはやはりビジュアルがメインになります。

これは SNS での好例ですが、山梨県の新倉山公園は、タイの方がインスタグラム等で発信したことにより一気にタイからの観光客が増えたのは有名な話です。

https://www.arakurayama-sakura.com/

パンフレットもイメージやブランディングの観点から、そのパンフレットでもっとも伝えたいものを写真にして掲載することをお勧めします。外国人観光客にとって、何のパンフレットなのか分かりやすくなるため、手に取りやすくなります。

5. コンテンツは日本語版と違ってもいい

日本語版パンフレットには地図やアクセスをはじめ、イベント情報や施設案内など、様々な情報が掲載されています。

しかし、もしターゲットが明確なら、掲載するコンテンツは日本語版と同じである必要はありません。

むしろ、ターゲットに合わせたコンテンツに変えてしまってもよいでしょう。なぜなら、大切なのは、外国人観光客がパンフレットを読んだときに「どんな気持ちになって、どんな行動をとるか」だからです。

例えば、ある地域の観光スポットがあるとします。それは日本人から見ればすでに「ベタな」スポットで、今さら面白くないかもしれません。日本語版パンフレットでは、掲載はするけれどそこまで大々的に取り上げなくてもいいスポットだとしても、外国人観光客にとっては、それが目的で新鮮に映り、集客に貢献するのであれば、そのスポットの写真やコンテンツを全面に出してもいいでしょう。「ベタな」スポットでもまったく問題ありません。

参考:日本の自治体等のパンフレット

パンフレットについては、用途別やテーマ別に作るという方法もあります。以下はあくまでサンプルですが、多言語版も含めて参考になるかと思います。

金沢旅物語

http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/digitalpamphlet/03.html

富士の国 山梨 観光ネット

http://www.yamanashi-kankou.jp/pamphlet/index.html

また、全国の観光パンフレットはどんな風に作られているのかお取り寄せできるサイトもありますので取り寄せ、研究してみるのもお薦めです。

みんたび

http://min-tabi.jp/

まとめ

いかがでしょうか。外国人観光客にとって魅力的な観光パンフレットを作るための5つのポイントは以下になります。

1. 誰が読むのか、どこで配布するのか目的を考える

2. 訳し方に気をつける

3. 言語別に作る

4. 写真は豊富に使う

5. コンテンツは日本語版と違ってもいい

この5つに注意しながら、外国人観光客の行動に直結するような観光パンフレットを作成してください。


美術館向け外国人観光客(インバウンド)対策サービスのご案内

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インバウンド産業の中でも観光施設として重要な位置を占めるのが美術館、博物館です。弊社ではこのミュージアム向けのインバウンド対策サービスを積極的にご提案していますが、その理由や想いをお伝えします。

日本の美術館を取り巻く状況

広くアートやミュージアム等に関わる人は、「世界中から観光客が日本にやってきて、そして自分たちの美術館を訪れてくれる。そしてその人たちに日本の文化や伝統の素晴らしさを伝えたい」という想いを持っているのではないでしょうか。この想いのない人というのはいないと思います。

では、そのために具体的に何をすればいいのでしょうか?

具体的な行動が分からなければ、ただの希望で終わってしまいます。私たちはそれではいけないと考えています。具体的に何をするかを考えるために、まずはここ5年ほどのスパンで美術館を取り巻く状況を分析してみましょう。

縮小する日本の美術市場

日本の美術市場は、およそ3,270億円程度といわれています。リーマンショックや東日本大震災などの影響などもあると言われていますが、いずれにせよ縮小傾向にあるのは間違いありません。

東京オリンピック・パラリンピック開催

2020年 東京オリンピックが開催されます。それに伴い、外国人観光客数も毎年増加しています。2020年には4,000万人、2030年には 6,000万人の外国人観光客を目指すと公言しています。

このオリンピックも追い風となり、ミュージアムをはじめとした観光施設にも多くの外国人観光客がやってくることが予想されます。

COOL JAPAN から VISIT JAPAN へ

フランスをはじめとして、海外では日本のマンガやアニメなどのサブカルチャー文化は依然として根強い人気がありますが、海外ではアニメやマンガだけが人気なのでしょうか?

決してそんなことはありません。海外で活躍する日本の現代アーティストも多く存在しています。それは外国人からすれば自国にいても触れることができる「日本文化」なのです。

そしてより詳しく日本を知りたいと考えたとき、外国人観光客はCOOL JAPAN から VISIT JAPAN へとシフトします。

東京オリンピック以降は?

オリンピックは長い準備期間を経て、大会自体は数ヶ月で終了します。

では、その後は外国人観光客は激減するのでしょうか?もし色々な企業や施設、自治体が「オリンピックがあるからお金をかけて準備しよう」と考えているなら、観光客数が減ってしまえばその後は想像もしたくないはずです。いわゆる「オリンピック特需」で終わってしまうのでしょうか。

ミュージアムとして、そう考えるのは妥当ではありません。

極端な表現ですが、「東京オリンピックがあってもなくても、外国人観光客対策を粛々と進めておく」ことが大切なのです。

2020年 東京オリンピックを第一の目的としてしまうと、それが終了した途端に目標を失ってしまいます。

このように、日本全国のミュージアムを取り巻く状況というのは決して楽観視だけではいけませんが、これらは適切な目標設定と適切な打ち手を続けていけば、むしろ美術館や博物館にとっては追い風となるでしょう。

「世界から愛される美術館」になるためには

では、どうすれば東京オリンピック以降も外国人観光客がやってきて、彼らがリピーターとなってくれるのでしょうか?

まず最初に大切なのは、「どんな美術館を目指すか」ということです。

日本には歴史や伝統のある美術館、新設の美術館、一風変わった美術館など様々なスタイルの美術館があります。しかし、どの美術館もこの想いは同じでしょう。

「世界中から観光客が日本にやってきて、そして自分たちの美術館を訪れてくれる。それによって日本の素晴らしさを伝えたい」

これはつまりフランスのルーブル美術館のように「世界中から愛される美術館」になることです。なぜなら世界中から愛される美術館は、同時に「日本人にも愛される美術館」であるはずだからです。

私たちはそのための方法やプロセスを共に考え、共に実行していきたいと考えています。

私たちの想いと私たちができること

私たちは「大切な想いをつなぐ」という経営理念のもと、美術に関わる方々の「想い」を理解し、相手に伝え、そして未来へとつないでいくお手伝いをしております。

経営理念

美術館様の作品解説やガイドブック、表示案内、また動画の字幕翻訳、ギャラリートークなどをお手伝いするのは、私たちも「日本の伝統、美術の素晴らしさを正しく伝え、未来へと想いをつなぎたい」と考えているからです。

そしてそのためにも適切なインバウンド対策をご提供しています。具体的なインバウンド対策サービスについては以下のページをご覧ください。

こんなお客様に向いています

本サービスプランは、ミュージアムの大小問わず様々なお悩みに対応いたします。

「そもそも外国人観光客への対策が必要なの?」

「自分たちで進めているが今のやり方があっているのかどうか不安だ」

「具体的に検討していることがある」

「インバウンド対策はしないといけないと感じているが、何からはじめればいいのかわからない」

なお、現在はコンサルティングプランもご用意しておりますのでお気軽にお問い合わせください。

ミュージアム専門 インバウンド コンサルティングプラン

インバウンド対策 導入事例:紙の博物館様

まとめ

日本の美術館は海外の美術館と比較して多くの予算があるわけでもありません。また、「観光立国」という考え方もまだまだ新しいため、本腰を入れて(資本等)色々な事を一気に準備する事は難しい状況にあります。

しかし、オリンピックをひとつのピークとして、外国人観光客は続々と来日しています。国が、政府がという前にまず自分たちでできることから始めていく事が重要なのです。

私たちはそのためのサポートをし、外国人観光客が増加しても日本の美術を楽しんでいただき、そして後ろ髪をひかれながら帰国し、「また来たい」と思ってもらえるような美術館を目指すお手伝いができたらと考えています。

そして私たちは、今回翻訳や通訳のみならず、「集客」からのサービス提供をすることで、美術館様にとってワンストップで相談、依頼できる体制を整えました。

ぜひこの機会に「世界から愛される美術館」への道のりを目指してみてはいかがでしょうか。

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