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「品質と価格は比例する」と言い切ったお客様の話

ある外資系企業のお客様がおっしゃっていました。

「私は品質と価格は比例すると思っています。だから価格が上がるのは問題ありません」

という発言をされました。(それまでの文脈は割愛)

もちろんですが、その通りと感じましたが、こういったことをなかなか面と向かって言うことも少ないのではないでしょうか。

また、実際にはそれが分かっていても実行できないケースや状況が(残念ながら)存在するのも事実でしょう。「そんなことは綺麗ごとだ」という意見もあります。

それでもハッキリと断定したこのご担当者様には、ご自身のお仕事に対する非常に強いポリシーを感じましたし、弊社をパートナーとして見ていただいているのだという良い意味でのプレッシャーを受けました。とにかく安ければいいという風潮もある中で、実際には胸が熱くなるようなシーンもありました。このお客様の言葉をお借りして、品質が高ければ価格が高いのは当然であること、またその逆も然りであることを改めて考えてみたいと思います。

「品質」とは何か

価格が品質によって決まるとするならば、まず先に「品質の定義」が必要となります。

※すべての業界、すべての企業で品質の定義をしているでしょうから、その解釈には多くのパターンがあると考えられます。

弊社の場合、品質とは、お客様が「望んでいるとおりのものを得る」状態のことを指しており、以下のコンテンツでより詳細の説明(定義)をしておりますのでご確認ください。

翻訳、ローカライズの品質とは

さらに、これらの品質を確保するために弊社では「良い品質の翻訳とは」というページも作成、公開しておりますので合わせてご覧ください。

トライベクトルが考える「良い翻訳」とは|翻訳会社トライベクトル

※「品質」は訳文だけの話ではなく、対応品質なども含まれています。

※今回のご担当者様の発言は、この「ご担当者様がご希望のモノやサービス」通りに、または「希望以上のモノやサービス」をお届けしたあとのご感想です。

「価格」よりも「価値」を考える

品質が高ければ後から価格があがりますということを言いたい訳ではありません。またそういうケースはかなりレアでしょう(詳細は伏せますが、今回はそういうことが可能なお仕事だったというだけ)。

よく「価格」ではなく「価値」を考えなさいと言われます。価値とは何でしょうか。あまり難しく考えるよりも、自分がモノやサービスを購入することを想像してみます。

モノやサービスを購入する決断をするときには価格を見ます。しかし、価格を見る以上に見ているものがあります。

「価格に納得できるとき」というのは、「これを買ったら自分の課題や悩みが解決できるかも」と思うときです。価格の向こう側にある「自分が得られる価値」を想像するのです。

そして実際にそれが解決したら「ああ、良い買い物をした」と思うのです。逆に「期待外れ」だった場合には二度と購入されることはありません。

つまり、買い手にとっては「そのモノやサービスの価値を見出すことが大切」ということですし、売り手にとっては正しく価値を伝えることが大事になってきます。

「迷う理由が値段なら買え、買う理由が金額ならやめとけ」

という言葉もあります。つまり、値段(価格)を基準にして判断してはいけないという意味です。「安いから買う、高いから買わない」のではなく、「自社にとって価値があるかどうか=自社が課題解決できるかどうか」が基準であるべきということでしょう。

「品質=お客様にとっての価値が高い=課題解決できる」であるならそれは当然買うし、(仮に高かったとしても)買いますということです。これは誰しも経験があるでしょう。

価格を考えるのではなく価値を考えるというのはこういうことです。

「品質が高い」は「価値が高い」

このように考えると、「品質が高い」という言葉は「お客様にとっての価値が高い」という意味になります。例えば、これを無視して「自分が作ったものは最高だ」と言ったところで、それはビジネスではあまり意味がありません。

ビジネスにおけるプロフェッショナルは、お客さまの課題をしっかりとヒアリングし、それについての改善案を提案し、共に伴走する人のことです。

医者ならばきちんと患者さんの病状を把握し、できる限り相手に負担をかけず、時には激励したり、寄り添ったりしながら最適と思われる治療方針を出し、伴走していくのと同じでしょう。

腹痛を訴えている患者さんに何も確認せずに「この薬を飲みなさい」という医者はいません。しっかりと相手の話を聞き、かつプロとしての視点から改善方法を模索しつつ、提案を繰り返していくからこそ患者さんは安心して任せることができるのです。もちろん、病状からの回復が最大の価値であることは言うまでもありませんが、そこに価値があるのです。

今回の外資系企業の担当者様はこれらの基本的な、でもとても大切な構造をしっかりと理解した上で発言をされていらっしゃいました。だからこそ非常に納得感が強かったわけです。

「価値」はどういう人や企業と付き合うかの基準にもなる

一転して、数年前にこのような記事を書きました。

「翻訳なんて誰がやっても一緒」だが、誰もが「言葉に魂を込めている」ものを求めている

こちらのエピソードも大変驚いたのでよく覚えていますが、今回の担当者さんは、この記事に登場する部長さんとはまったく真逆の発想だと言えます。

ただ、よく考えると要求水準は今回のお客様のほうが高いのです。

なぜなら「私たちが要求する品質のものを出してください。それができれば価格が上がるのは問題ないが、逆にその品質が出せないのなら価格は下がりますよ」と言っているのと同じことだからです。またもっと言えば「価値がないなら取引自体がありませんよ」ということでしょう。

(もしかしたら、一見厳しそうに見えた以前のお客様の方が「翻訳なんて誰がやっても一緒」と思っている分、品質への評価基準がブレている可能性があるため、あまり細かいことを言わないのかもしれません)

いずれにせよ、弊社の提供する言語サービスについてある一定の価値を見出してくださっているお客様である以上、弊社も毎回真剣勝負でお仕事をしています。

重要なのは「価格優先なのか、価値優先なのか、それは担当者 個人としての考えなのか、企業としての考えなのか」といった様々な要素がある中で、「何を課題として持っていて、どういう解決策がお客様にとってベストなのだろうか」ということをもっと真剣に考え、提案しなければならないですし、こういった考え方を持つためには、そもそも自分たちが何を大切にしたいと思っているのか、どう有りたいと思っているのかといった根本の思想が問われているのだということです。

どういった企業と取引をするのか/付き合っていくのかは、まさにこの部分(価値基準)に根差すものであるべきです。そうでなければ「翻訳なんて、通訳なんて、英会話なんて、誰がやっても一緒でしょ」という言葉に流されてしまいます。

まとめ

お客様の要求水準を満たす/超えるために、様々な側面からサービス品質を上げてお客様の課題を解決しようとする(価値)という行動は、長期的に見てお客様との信頼関係をより強固なものにし、また仕事の拡大を促す大きなドライバーになります。

このように(顧客にとって)価値があると感じるものにはそれなりの理由があるということです。そしてそれを無視して「誰がやっても一緒」なんてことはあり得ないということでしょう。

これまで以上にもっともっと努力しなければならない、身の引き締まる思いでした。

 

 


機械翻訳の問題点を解決するポストエディットとは

機械翻訳+ポストエディット

最近、弊社のお客様からもご相談が増えているのが機械翻訳(Machine Translation)サービスですが、そのまますぐに機械翻訳を導入しビジネスで使えるかというと、まだその段階ではないことが多いようです。残念ながら機械翻訳の問題点は残っているため、実際のビジネスで使用する際には「ポストエディット(Post Edit)」も含めた形でのご依頼になっているのが実情です。

今回は、機械翻訳が内包する問題点を解決する「ポストエディット」までをご説明します。

機械翻訳(Machine Translation)とは

機械翻訳(Machine Translation)とは、コンピュータによって自動で翻訳する技術のことを指します。Google 翻訳や DeepL などが有名です。ニューラルネットワーク処理されるため、訳文が読みやすくなり、翻訳品質が一気に向上しました。実際にご利用になっている方も多いのではないでしょうか。

なお、翻訳業界では機械翻訳のことを英語表記し、また省略して Machine Translation = MT と読んだり記述したりします。

なお、「機械翻訳」と似た言葉に「自動翻訳」という言葉がありますが、「自動翻訳」は翻訳プロセス全体を自動化するというニュアンスが強く、「機械翻訳」などの各ツールを使用して実現していくことを指しますので少し意味合いが異なります。

ポストエディット(Post Edit)とは

ポストエディットとは文字通り「Post(後で)」「Edit(編集する)」という意味です。機械翻訳で生成された訳文に対して、翻訳者(人間)が順次、訳文の修正や編集を行う作業のことを指します。

ちなみに「翻訳者」という人間が翻訳する場合は機械翻訳との対比で、一般的に「人力翻訳(Human Translation=HT)」と呼ばれます。

また、「ポストエディット」という作業はあくまで人間が行う作業であり、近年では「ポストエディター」と呼ばれる職業も新たに生まれています。

(参考)機械翻訳と翻訳支援(CAT)ツールの違い

よく誤解されてしまうのが「機械翻訳」と「翻訳支援ツール」です。

これらの位置づけの理解が難しい理由としては「翻訳支援(CAT)ツール」が似たような概念を持っているためでしょう。

CAT ツールとは、「翻訳者の作業をサポートする」ツールであるため、翻訳作業を行うのはあくまで人間(翻訳者)です。CAT ツールで最も著名なのは SDL TRADOS(トラドス)でしょう。TRADOS とは、大量のボリュームのマニュアルの翻訳時に、訳文を再利用できるようにデータベース化しておくことができる翻訳支援ツールのことです。一度翻訳した訳文は、次のバージョンアップ時に有効に利用することで訳文の統一を図ることが可能です。これらは特にマニュアル翻訳など繰り返しの多い文章がある際に有効です。

機械翻訳と人力翻訳

一方、機械翻訳はその名の通り、AI などが自動で翻訳を行うものであるため、人間が介在するプロセスが存在しません。

TRADOS によるマニュアル翻訳

またここ最近では「翻訳管理システム:Translation Management System(TMS)」と呼ばれるクラウドベースのローカライズツールも登場しています。これらもあくまで翻訳者を支援するシステムであり、機械翻訳とは異なります。

TMS の場合には、DeepL などの機械翻訳システムと連携させて使用することもできます。

例えば、TMS のひとつである Memsource の場合には、DeepL のほか、いくつかの機械翻訳サービスと連携し使用することができるため、本テーマである「機械翻訳+ポストエディット」を管理することができます。

また、以下は Webサイトローカライズプロジェクトなどで特に顕著な TMS について説明しています。

Webサイト ローカライズ

機械翻訳の問題点

このように機械翻訳の技術は目覚ましいものがありますが、発展途上のためいくつか課題があるのもまた事実です。

1. 訳文の表現力が豊かになっている分、誤訳に気づかないケースがある

仮に原文とはまったく逆の意味で翻訳されていても(ある意味で流ちょうに訳されているため)、そのまま OK にしてしまうケースもあります。しっかりチェックしないと気づかずにスルーしてしまい、結果的に誤訳になってしまうことがあります。

これは機械翻訳が優秀だからこその課題と言えるでしょう。

2. 全体の訳文品質が及第点に達していない

日々精度が高まる機械翻訳ですが、分野やドキュメントの種類によってはまだ意味が通じない文章を作ってしまうケースもあります。

例えば、マーケットに向かって発信するプレスリリースや財務情報のようなドキュメントでは、誤訳が 1か所でもあるとマーケットの評価が180度変わってしまうので慎重にチェックしなければなりません。そしてその可能性があるのであれば全文をチェックしなければならないということになりかねません。

3. マーケティング向けのドキュメントでは人力(翻訳者)のほうが品質は高い

機械翻訳ではその文章の持つメッセージ性や背景情報などを理解して訳出されるわけではないため、抽象度の高い文章、アートやエンターテインメント、コマーシャル系などの文章では人力(翻訳者)による翻訳が勝っていると言えます。人力翻訳の場合には原文の背景、経緯などの意味をくみ取りつつ翻訳することができるためです。

特にマーケティング向けの翻訳は「マーケティング翻訳」と呼ばれています。

マーケティング担当者に必須の「マーケティング翻訳」とは

これらの課題は将来的には解決される可能性もありますが、現時点では大きな課題として残っているのも事実です。

解決策としての「ポストエディットサービス」

機械翻訳自体の精度が上がったため、上記のように「どこに問題が隠れているか分からない」、または「どこも間違ってないかもしれないが、もしかしたら、どこかの一文が間違っているかもしれないので念のためチェックしなければならない」というケースもあります。

結局のところ、ドキュメント内に不安要素がひとつでもあれば、やはり全体をチェックしなければなりません。

だからこそポストエディットサービスが必要になりますし、ポストエディットというプロセスを後ろに置くことで、(現在では)品質の安定を図ることが可能になります。

機械翻訳+ポストエディット

「機械翻訳なのか人力翻訳なのか」の判断基準を持つことの重要性

「機械翻訳+ポストエディット」と翻訳者による「人力翻訳」のどちらが良いのかを判断するには、上記の内容をしっかり理解して抑えておく必要があります。

コストを下げるためだけに、あらゆるドキュメントを闇雲に機械翻訳で作業すると品質が担保されずに、結局人力でやり直しといったエピソードはいまだによく聞く話です。

貴社にとって今回のプロジェクトが機械翻訳が良いのか、それとも人力翻訳が良いのかといった判断基準を決めておく必要があります。

機械翻訳+ポストエディットと人力翻訳の比較

以下の表は、機械翻訳と人力翻訳の比較です。ドキュメントの特性を理解した上で利用しないと期待するほどの効果を得られないケースもありますのでご注意ください。

翻訳品質価格スピード補足説明お薦めドキュメント
機械翻訳・間違えていても気づかないほど流ちょうな文章もある
・マーケティング翻訳のようなものは向いていない
・契約書
・マニュアル取(扱説明書)

※直訳的で大量のドキュメント
ポストエディット・どの機械翻訳を使って生成された訳文かによって品質にばらつきがあるため、ポストエディットだけの場合は負荷が変わる・契約書
・マニュアル取(扱説明書)

※直訳的で大量のドキュメント
機械翻訳+ポストエディット・MTPE と呼ばれるプロセスで品質を確保しつつ価格も押さえることができる
・マーケティング翻訳のようなものは向いていない
・契約書
・マニュアル取(扱説明書)

※直訳的で大量のドキュメント
人力翻訳・プロの翻訳者による翻訳作業
・原文の意味をしっかり理解して翻訳するのでニュアンスなども含めて翻訳可能
・マーケティング文書
・広告文
・契約書
・マニュアル取(扱説明書)

※抽象度の高いものや専門性の高いドキュメント

「選ぶ基準」を持っていないと逆に損をすることもある

このように、機械翻訳なのか、人力翻訳なのかという選択肢をもっているのは貴社にとって良い状態だと言えます。ドキュメントやニーズに合わせて「機械翻訳+ポストエディット」で対応したほうが良い時もあるでしょうし、逆に「このドキュメントは超重要な内容を含んでいるのでニュアンスをしっかりとらえて翻訳してほしいからこそ、プロの翻訳者に頼む」ということもあるでしょう。

これらはすべて「ドキュメントの使用目的」「対象読者」「品質」「予算」「納期」などの項目を検討して導き出されるべきものです。

選択するための判断基準があれば、ポストエディットでの対応もできるでしょうし、よりニーズにマッチした翻訳サービスを享受することができます。最低限の判断のためのチェック項目をご紹介します。

チェックリスト

(参考)機械翻訳の精度を高める「プリエディット」

機械翻訳+ポストエディットを行っても納得できない訳文品質の場合では、原文の品質を向上させるという方法もあります。ポストエディットに対して「プリエディット(Pre Edit)」と呼ばれるものです。原文の表現を整理することによって機械翻訳が理解しやすい形に変えることで、機械翻訳の精度を向上させることができます。

「翻訳作業前に原稿を読まないのか?」という質問

まとめ

「機械翻訳+ポストエディット」は確かにビジネスでのトレンドであり、大変便利なツールです。しかし闇雲に利用するのではなく、自社に合ったサービスかどうかを含め、賢い使い方を身に着けたいものです。

  • 機械翻訳の精度は年々高まっているが間違え方も巧妙になっているため、まだ人間のチェックが欠かせない
  • そのためにポストエディットは必須
  • 現代は機械翻訳か人力翻訳かを選択できる時代に
  • ますます重要になるのは選ぶときの判断基準の構築

弊社では人力翻訳のほか、機械翻訳+ポストエディットサービスも対応可能です。お気軽にご相談ください。

機械翻訳+ポストエディット


【徹底解説】Web サイト翻訳の見積もり依頼の方法

スタッフ N です。

昨年来、コロナ禍で Web からのリード獲得やコンバージョンに注力される企業様が増えており、弊社にもコロナ前と比べ 3 倍近くの Web サイト翻訳のご相談依頼が続いております。

様々なご相談をいただいておりますが、その中でも特に最近になって Web に力を入れ始めたお客様の場合、翻訳やローカライズのお見積りを作るにあたり、必要な情報が不足してしまい、やりとりにお手間をかけてしまう上、正確なお見積りをお伝えできなかったというケースもあります。

一方で、Web サイトの翻訳についての相談ポイントを正しく知っておかないと、発注後に齟齬が起きてトラブルになってしまう可能性があります。

そこで今回は、発注後のトラブルを防ぎ、お見積段階から納品まで、正しくスムーズにプロジェクトを実行していただくための方法をご紹介します。

翻訳の見積もりに必要な6つのポイント

外資系企業のための CMS を活用した Web サイトローカライズ

Webサイトの翻訳で最も多い見積依頼の4パターンとは

翻訳のお見積り依頼をいただく際に、ほとんどのお客様が以下の 4パターンのいずれかでご相談いただくことが多くなっています。

  • 翻訳対象の Web サイトの URL を送る(トップページの URL のみ)
  • 翻訳対象ページの URL だけを送る
  • 翻訳対象の Web サイトの URL と文字数を伝える
  • 翻訳対象となるテキストを Word か Excel で送る

上記のパターンにはメリットデメリットがあります。以下に解説します。

1. 翻訳対象の Web サイトの URL を送る(トップページ URL)

お見積り依頼時に翻訳対象の Webサイトのトップページの URLだけを送るパターンです。

問い合わせ例:

https://www.trivector.co.jp/

「上記サイトのお見積りをお願いします」

一番多いのがこのパターンでのお見積り依頼です。確かに、URL をコピペして、メールに張り付けて送信するだけなので非常にスピーディで楽です。しかしお見積もりの精度としては、これがもっとも精度が低くなってしまいます。

  • 翻訳対象となるページが正確ではないため、対象ページに見落としや抜けが出る可能性がある
  • 画像や動画などが含まれる場合の確認をしたり、その分、抜けや漏れが出る可能性がある
  • 基本的に Web サイト内のテキストをコピペして分量を算出するが、コピペ防止の Web サイトの場合は取得できない
  • 逆に翻訳対象外にもかかわらず、不要な個所を含めてしまい見積もり金額が上がってしまう
  • 見積もり前の確認作業が増えるため、見積もりを出すまでに時間がかかる(翻訳会社によっては対応不可、もしくは別途作業費がかかるケースも)
  • 翻訳対象に抜けがあった場合、追加費用が発生し、ローンチスケジュールに間に合わない
  • Web サイトを元に見積もりした時から内容が更新されることもあり、見積もりの精度が落ちる

2. 翻訳対象ページの URL だけを送る

問い合わせ例

https://www.trivector.co.jp/

https://www.trivector.co.jp/service/

https://www.trivector.co.jp/service/beforeorder/

https://www.trivector.co.jp/feature/

https://www.trivector.co.jp/brandoftranslation/

「上記のURLのお見積りをお願いします」

これは 1 番とほぼ同じですが、最初の「翻訳対象となるページが正確ではないため、対象ページに見落としや抜けが出る可能性がある」という点は防ぐことができます。しかし、それ以外については同様の理由により不明確な点が多くなります。

3. 翻訳対象のWebサイトのURLと文字数を伝える

問い合わせ例

https://www.trivector.co.jp/  (200文字)

https://www.trivector.co.jp/service/(300文字)

https://www.trivector.co.jp/service/beforeorder/(180文字)

https://www.trivector.co.jp/feature/ (2,000文字)

https://www.trivector.co.jp/brandoftranslation/  (780文字)

合計:3460 文字です。上記の URL のお見積りをお願いします。

あらかじめ分量と内容がわかるため、お見積りは比較的早く提出できますが、いくつか注意点があります。

  • お客様による分量の算出方法に誤りがないか、実際の原稿を Word か Excel でお借り次第、再度見積もり
  • 実際の作業時は Word か Excel で支給してもらう必要がある(これができなければ、1 および 2 と同じリスクが発生する)

1 番や 2番よりはリスクは減りますが、最も安全とまでは言えません。最後にお勧めする方法がもっとも安全で正確な見積もりを作ることができます。

4. 翻訳対象となるテキストを Word か Excel で送る

問い合わせ例

添付のエクセルに、翻訳対象のテキストを URL ごとに記載してあります。こちらのファイルを元に、お見積りをお願いいたします。

この方法が一番安全かつ、正確にお見積り作ることができますし、以下のメリットを享受することができます。

  • 見積もりをすぐに作ることができる
  • 対象箇所に誤りが出にくい
  • ファイルに上書き、または併記にして納品できるためお客様側で最終確認をしやすい
  • 多くの翻訳会社の見積もりの基本算出方法である「分量×単価」の「分量」を正確に出しやすい
  • 明らかな不要箇所(重複しているヘッダー、フッターのメニュー、URL・電話番号など)を特定できるため、コストを抑えられる

それぞれの特徴(まとめ)

上記の内容を表にまとめるとこのようになります。

それでもスピーディで楽な方法が良い?

前述のように実際に多いお見積り依頼はスピーディで楽な 1 番のパターンです。パッと URL をコピーしてメール送るだけですから、急いでいるときは特にそうしたくなると思います。

ただこれまでお伝えしてきた通り、結局、その後、翻訳会社から翻訳対象箇所の確認の連絡があったり、どこまで作業するかといった条件の確認があるので、それらのやり取りの時間を考慮しトータルで考えると、むしろこちらのほうが時間がかかってしまったというケースもあります。

つまり、1 番~3番目までの方法は実際には「楽」ではなく、「楽」に見えるだけで、最終的にはお客様側のご負担が大きくなってしまいます。

ましてや、もし貴社が、その先のお客様から Web の翻訳相談を受けていれば、貴社だけではなく貴社のお客様にもやり取りのご負担がかかってしまう可能性があります。

そういったことを防ぐために、ぜひ 4 番目の方法をご検討いただきたいのですが、そうは言っても「実際にやるかどうかわからないのにそこまでは準備できない」というご意見もあるでしょう。その場合には以下の条件で、概算お見積りをお渡しすることが可能です。

概算見積もりについて

お問い合わせいただく際に、よくあるのは以下のようなご意見です。

「まだやるかどうかもわからないから、Word や Excel の準備はできない」

とりあえずどのくらいの金額と作業期間がかかるのか目安が知りたいだけ

確かにこのような場合には、Word や Excel をわざわざ見積もり時点で準備するのは難しいと思いますし、弊社でもそのような場合は、「何が何でも Word や Excel で支給してください」とは申し上げません。

ここまでにお伝えした URL 等でのお見積りの精度のご説明を差し上げ、あくまで概算見積であり、正式なお見積りは諸条件がはっきりした時点で作り直すという前提で概算見積もりを準備しますのでご安心ください。

翻訳会社にはこの順番で問い合わせよう

上記の優先度に応じて翻訳会社に問い合わせると概算見積もりとはいえ、それなりの精度の高いお見積りを取ることができます。

TRADOS などの翻訳支援ツールではだめなのか

また Web サイトの翻訳を行う上で、翻訳支援ツールを使用してお見積りを作るというケースもあります。

※Web サイトコンテンツのようなマーケティングマテリアルについて、TRADOS を代表とする翻訳支援ツールを使用すること自体の信頼性がどうなのか、という点は今回は割愛します。

あくまでお見積りを作成するという点において考えると、結局のところこれも同じことです。

お見積金額や納期に関わってくるのは、ツール使用の有無でなく、「翻訳対象箇所を具体的に指定できるかどうか」だからです。

「なんとなくこのあたりを見積もって」ということであれば、TRADOS を使っても正確にはカウントできません。そのため、こちらも概算お見積りとして使用することはできても、対象範囲をはっきりさせることがより重要だと言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。翻訳の見積もりをとるに限らないのですが、結局のところ、「最初に手間をかけるか、後で手間をかけるか」という点が重要だということです。

確認作業を減らし、正確で安全なお見積りを翻訳会社からとることを目的にしますと、「仕事は準備が7割」と言うくらいですから、やはり事前にファイルを整理していたただくのが最も効率が良いと言えます。

今後もコロナウイルスの影響はまだまだ続きそうですので、Webサイトに注力される企業様は増えていくでしょう。そういったお客様のために、弊社で少しでもお役に立つことができれば何よりです。今回の記事には書いていないようなケースもあるかと思いますので、こういう場合は?これはどうなるの?これもできる?などなど、ご質問等ありましたら、遠慮なくお気軽にお問い合わせください。


多言語翻訳を行う際に抑えておきたい言語の選び方

日本企業が海外進出する際やインバウンド対応の一貫として多言語対応することは、今の時代、当たり前のことです。

ただお客様によっては、よくよく聞くと「多言語翻訳しなければならない」というだけで、弊社でも、具体的に「どうやったらいいか分からない」「そもそも何語から翻訳すべきなのか?」というご相談を受けるのも事実です。

そこで今回は、多言語翻訳、多言語での展開をしなければならないとき、何語を選択すべきなのか考え方のひとつをご紹介します。

貴社の多言語翻訳の目的とは何か

そもそも論になりますが、貴社が多言語翻訳を行う目的は何でしょうか?何のために多言語に翻訳するのでしょうか?

それはお客様ごとに異なっているはずですし、違っていないとおかしいですよね。選択した言語が結果として同じだったとしても、そこに至る思考プロセスは違っているのは当然です。

分かりやすい例で言うと、中国に進出すると分かっているのに「最初はタイ語に翻訳する」という選択はあり得ません。

もっと言えば、「そもそも翻訳する必要って本当にあるの?」という点も見落としがちです。(翻訳会社がこんなことを言ってはいけないのかもしれませんが)「それって、翻訳いらないよね?」というドキュメントや「テキストは辞めて、サインやピクトグラムなどのビジュアルにした方がいいんじゃない?」ということもあるはずです。

つまり、

  • そもそも本当に翻訳する必要があるのか(目的を明確にする)
  • するとしたら、なぜその言語に翻訳するのか(目的を達成するための手段)

という点は、一番に抑えておきたいポイントです。

貴社のプロダクトやサービスは、「誰の」「どんな課題」を解決するのか

翻訳とは少しずれてしまいますが、この視点も外せません。

貴社の製品やサービスが、その国の「誰」に向けて作られたものなのか、そして「彼らの持つ課題や悩みを解決してくれるのか」という点を考え抜く必要があります。

これが明確でなければ、どんなに翻訳が素晴らしくても売れるということはないでしょう。

例えば、骨折しているのに、風邪薬を処方されても意味がないのと同じですね。

そして、これらがハッキリしていないと翻訳にも支障が出てしまいます。なぜなら「対象読者も分からない」「サービスの特長も無い」ような文章は、それなりの文章にしかならなず、結果として誰に向けての翻訳なのか分からなくなり、何の効果も得られなくなります。この部分は翻訳そのものとは直接的には関係しませんが、間接的には大変重要ですので押さえておきたいところです。

世界の言語数とマーケットの把握

さて次は、マクロ的な視点からマーケットを理解します。この世界にどのくらいの言語数があるのかをご存知でしょうか。

Ethnologue によると、その数なんと「7,111言語」だそうです。

https://www.ethnologue.com/

これだけの言語があるとはいえ、少数の話者しかいない言語も多く、実際には統廃合が繰りかえされるそうですから、言語を維持していくというのは並大抵のことではありません。

しかもそれらを使う人がいなければ始まらないわけです。

その上で「自社製品やサービスをどこに打ち出していくのか」と合わせて知っておかなければなりません。

どのマーケットが向いているのかを決める際に、他社の事例や海外進出コンサルタントなど、プロフェッショナルにアドバイスを受けながら進めることもあるでしょうし、自社のスタッフが現地調査を行うこともあるでしょう。

いずれにせよ、ある程度のコストをかける以上は、マーケット調査は必要です。

「マーケットイン」か、「プロダクトアウト」か

製品やサービス開発でも同様ですが、「他の国で売れる=社会的に役に立つ」という点から考えた時、2つの視点があります。それがマーケットインとプロダクトアウトという考え方です。

Wikipedia プロダクトアウト/マーケットイン

https://ja.wikipedia.org/wiki/プロダクトアウト/マーケットイン

それぞれ正しい考え方ですので、どちらが自社に合っているのかを詳細に検討していきましょう。

人口だけで決めていいのか?それともプロダクトのコンセプトから考えるべきか?

一般的には「マーケットイン」と「プロダクトアウト」マーケティングのセオリーで行くなら、マーケットインの方が成功しやすい(=失敗しにくい)と言えます。

ニーズを捉え、そのニーズを満たすためのプロダクトやサービスを提供することができるためです。

ただ、iPhone が初めて登場した時のような、「ユーザも自覚していないニーズ」=「潜在ニーズ」を満たすようなイノベーティブな製品やサービスは生まれにくいと言えます。

また、世界的に見ると人口は増加していますが、その国の経済成長性や IT リテラシーなどの教育普及率などは国ごとに違うので、より重要な指標となるでしょう。人口が多いだけで、IT が生活に入り込んでいなければ、そもそも製品やサービスを使ってもらえない(使える環境がない)ということもあるからです。

例えば、何らかのアプリを多言語翻訳して世界展開をすると想定したとき、

  • メジャーな言語、かつその言語の話者が多いこと
  • IT リテラシーが高いこと
  • スマートフォンの普及率が高いこと
  • マーケットが成長していること

などがあるとすれば、どのように優先順位をつければいいのでしょうか。

これは、母数が多ければダウンロードは増えるだろうということなのか、このアプリは○○というコンセプトなのだから IT リテラシーが高くないといけないということなのか、というように抑えておくべきポイントが変わってくるはずです。

これらを考えずに、むやみにテストを繰り返してもあまり効果は出ないでしょう。

ペルソナの設定

マーケットがハッキリしたらそこに生活するユーザのペルソナを設定しましょう。ペルソナ設定は多言語翻訳をする上で大いに関係があります。

対象読者を設定していない翻訳は、誰に読んでほしいのか、使ってほしいのかが分からないままになってしまうので、せっかく訳文を作っても効果が半減してしまうといっても過言ではないでしょう。

極端な例を出すと、エンドユーザ(男性、50代、患者)に読んでほしい医療についてのサービスなのに、お医者さんにしか分からないような専門用語のオンパレードだと理解されません。読者は医者ではなく患者だからです。

サービスでも製品でも「誰に売るのか」を考えるのは基本です。これは冒頭の「誰の」悩みを解決するサービスや製品なのかと表裏一体のはずです。

そのため、この時点でペルソナが設定できないということはないでしょう。分かり切っていても、共通認識として言語化しておきましょう。アウトソーシングや社内の共通認識などで必要になるためです。

言語の選定と優先度(タイミング)

マーケットもペルソナも設定できたらどの言語に翻訳すべきかというのは決まったも同然です。ここはそれほど悩むべきポイントではありません。

どちらかと言えば、複数言語(多言語)の場合には「どの順番で翻訳して、対象マーケットのペルソナに対して製品やサービスを投入していくか」の方が重要ということです。

これは弊社のお客様でも色々とお悩みいただくところで、「これが正解!」というものはありません。プロダクトの性質やサービスのビジネスモデルによって異なるでしょうし、マネタイズの方法によっても異なるでしょう。

ただし、これらの要素を検討しすぎると複雑化してしまい、逆に動けなくなってしまうため、その時点で最良と思われる言語に展開するしかありません。誰も未来のことは分からないからです。高速で PDCA を回す方が結果としてうまく行くというのは事実でしょう。

「その時と思った時がそのタイミング」なのです。

元の言語は何語がいいのか?英語から?日本語から?

では、誰に何を売るのか明確になったとします。次に考えるのは、ターゲット言語ではなくソース言語(元の言語)です。

弊社にご依頼いただくお仕事の多くが、通常は日本語で開発されることが多いですから、日本語から外国語に翻訳するというのが一般的です。ゲームにしてもアプリにしても、日本語から行っているハズです。

もちろんそれでも問題はないですが、稀に、英語からヨーロッパ言語への翻訳など、別の言語(多いのは英語)を起点にするというプロセスもあります。

これには様々な理由がありますが、ひとつには文法構造の問題があります。英語の文法構造と、ヨーロッパ言語の文法構造が似ているから翻訳しやすかったりするためです。

また、文法だけでなく単語のルーツや発音も似ていることもあるので、意味を想像しやすいこともあるでしょう。

さらには、日本語からヨーロッパ言語へ翻訳できるネイティブ翻訳者は少ないが英語からだったら対応可能な翻訳者の数が多くなるというキャパシティ上のメリットもあるかもしれません。(ここは各翻訳会社によって異なります)

いずれにしても、どの言語から多言語翻訳するのかは、スケジュールや金額にも密接にかかわってくるため、慎重に検討すべきです。

 

多言語翻訳

 

またゲームアプリなどの場合、それらの持つ「世界観」やシナリオの重要度というのは、コンテンツの中核を成していますので、決して品質をおろそかにしないように注意が必要です。世界観を理解していない翻訳者や、社内スタッフで作業してしまったりすると、ユーザーからクレームが入ったり、不自然な表現が多くなり、ゲームそのものを楽しめなかったりします。

 

翻訳における「ゲームの世界観」をどう表現するのか問題

 

結果として販売も伸びず・・・というのもよく聞く話です。

スケジュールと品質の兼ね合いにはなりますが、「ペルソナがそれで納得して楽しめるのか?」「ペルソナの役に立てるのか?」という視点は忘れたくないものです。

何でもかんでもお金をかければいいというわけではありませんが、最も重要なユーザとのコンタクトポイントはどこか?と想像したとき、少なくとも翻訳はそのひとつに入ってくるのではないでしょうか。

まとめ

このように、実は多言語翻訳を行う際には、それ以前に検討しなくてはならない点が数多く存在し、しかもそちらの方がより重要であることも多いのです。

逆に、すでにターゲット言語が決まっている場合には、その言語の品質をどう担保するのか(品質プロセス)や金額、スケジュールといったより具体的なポイントを精査していくことができます。

ぜひ今回のポイントを抑えていただき、成果の出せる多言語翻訳を行っていただければと思います。


翻訳における「ゲームの世界観」をどう表現するのか問題

弊社では、ゲームアプリ等の翻訳サービスも行っておりますが、その翻訳プロセスの中でも非常に重要になるのが「世界観」です。

この「世界観」を多面的に、且つ深く理解しないと「お客様が本当に望む品質」を作ることが難しいと考えています。

そこで今回はこの「ゲームの世界観」というテーマを、翻訳という側面から考察したいと思います。

ご依頼時に多い「世界観」の翻訳やリライト作業

冒頭でお伝えした通り、まずゲーム開発会社のお客様とお話しすると、必ずと言っていいほど出てくるフレーズがこの「世界観」というキーワードです。お客様からはこのようなご相談があります。

「今回のゲームアプリの世界観を踏まえて翻訳してほしい」

「自社スタッフが翻訳したが、ゲームの世界観を理解した上で文章をブラッシュアップしてほしい、リライトしてほしい」

お客様のおっしゃっている「世界観」とはいったい何のことを指しているのでしょうか?

これはゲーム業界共通の用語で、誰もが同じ意味で使っているのでしょうか?それとも会社ごとに違うのでしょうか?そして翻訳会社としてどう受け止めるべきキーワードなのでしょうか?

これを理解しないと、本当の意味で、上記のお客様のご要望に対応することができません。

「ゲームの世界観」とは何か

「世界観」という言葉を検索するとこのような説明があります。

Wikipedia:世界観

世界観(せかいかん、Weltanschauung)とは、世界を全体として意味づける見方[1]・考え方のことである。人生観より広い範囲を包含する[1]。単なる知的な理解にとどまらず、より情意的な評価を含むものである[1]。情意的な面、主体的な契機が重要視される[2]

この説明ですと仰々しい側面は否定できません。いささか哲学的です。しかしどうやら「ゲームの世界観」という言葉を理解するには、これだけだと完全にマッチしないようです。

次に「ゲームの世界観」で検索した場合、以下のようなサイトが表示されます。

ここでは、「コンセプトアート」というキーワードも登場します。

Togetter:「ゲーム性」と「世界観」、重要なのはどっち?

https://togetter.com/li/133180

こちらは、世界観そのものの説明ではありませんが、「ゲーム性」という点もポイントだと述べています。確かにそうですね。

ここで改めて考えてみましょう。

一体、お客様はどういった意味で「世界観」という言葉を使っているのでしょうか?

色々なサイトを見てみても、どうやら「世界観というのはこういうことだ」という明確な答えは無いようです。

そうではなく、どちらかというと、「世界観」とはこういうものだと断定するのではなく、多くの要素が集まった集合体が「世界」を作っていると考える方がしっくりきます。

それらひとつひとつの要素がそれぞれ相互にどのように作用し合うかという部分で、求めるべき「世界観」が決まるのではないでしょうか。

例えば、以下のような要素です。

これらを無限に組み合わせていくことで独特の世界は生まれます。そしてその世界を見て、どう感じるか/どう感じてもらいたいかが「世界観」なのではないでしょうか。

ということは、Wikipedia にも記載されているやや哲学的な「情意的な面、主体的な契機が重要視される」という部分も間違っていないということになります。

つまり言い換えると、世界観というのは、実際には明確な定義がなく、「主観的な感覚が優先されるもの」だということです。人々がまたはそのゲームタイトルを見た時、デザインを見た時、そのゲームのストーリーやキャラクターをプレイしてみた時に認知する「感覚」だということです。

なお、「世界観」の「観」とは「観念」のことですが、この「観念」というのは哲学用語です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/観念

観念(かんねん、英: idea、希: ιδέα)は、プラトンに由来する語「イデア」の近世哲学以降の用法に対する訳語で、何かあるものに関するひとまとまりの意識内容のこと。元来は仏教用語。

 

Weblio 観念(かんねん)とは何?

https://www.weblio.jp/content/観念

人間が意識の対象についてもつ、主観的な像。表象。心理学的には、具体的なものがなくても、それについて心に残る印象。

このように「主観的なもの」が観念だとすれば、その「世界観」というのは、ゲームのキャラクターや彼らが存在する世界、人々の性格や特徴、法、生活などあらゆるものごとが、あるひとつの方向性でまとまった「状態」であるとも表現できます。

ただし個々人の主観だけに左右されないためのある一定の枠組みは必要であり、それこそが圧倒的に作り手のクリエイティブなアイデアが具現化していなければならない「世界」なのでしょう。

「ゲームにおける世界観」とは、つまり非常に主観的な要素を含んでいるのだと言えます。

「世界観」を踏まえた文章の翻訳やリライト

では、これらを踏まえて「翻訳やリライト」について考えてみます。

文章には「好み」があります。例えば、翻訳としては正しくても、「読み手の好みに合ってない」と言われることは少なくありません。

また、ある文章を書きかえた場合(リライト)でも、その後の文章が洗練されているかどうかには、様々な基準があります。

例えば、「翻訳くささが抜けている」とか、「忠実ではないけれど意味を捉えて流暢になっている」とか、「冗長な表現が改善されている」などです。

しかし、大前提として、そもそも文章に100点満点はないのです。その文体が好きな人、嫌いな人は必ずいるからです。村上春樹が好きな人もいれば、肌に合わない人もいるわけです。それはどちらも間違っていないはずです。

では、一体どうやって世界観に基づいた文章(セリフなど)がきちんと翻訳されている、リライトされていると判断するのでしょうか?

それを最初に判断するのは誰なのでしょうか?

そうです、それはもちろん原稿を書いたシナリオライターです(社内、社外問わず)。

※ユーザが読み、判断、評価できるのは、製品がリリースされてからの話です。

では、そのシナリオライターによって書かれた文章(仮に日本語とする)を、英語に翻訳する際、オリジナルの日本語文章を正確に翻訳することはできるのでしょうか?または、リライトすることはできるのでしょうか?

答えとしては「できる」と言えます。そういう人材は確かにいるからです。しかし、仮にできたとしても非常に難易度の高い作業のため、限られた人材だと言えます。

これまで説明してきたように「世界観」は主観性の高いものだからです。その登場するキャラクターの性格、価値観、それに基づく成長過程、経験から出る口癖(特にセリフなど)を完全に理解するのは困難だと言えます。もしかしたら、開発会社内でも統一の世界観を持つというのは大変なこともあるのかもしれません。

世界観を理解していれば、翻訳やリライトはできるはずです。しかし、その「理解」が「主観的」な要素が強くなってしまう場合や、世界を構成する要素が非常に多く、すべてを理解することが難しい場合、読み手からは「理解していない」と判断される可能性もあります。

これはまさに文章における「好み」と近いものがあると言えます。

文章はそのゲームの品質を大きく左右する重要なパーツ

このように、ゲームの世界観を理解して行う翻訳やリライトは、非常に難易度の高い作業だということが分かると思いますが、だからこそ「文章」が非常に重要なパーツだと言えるわけです。

これらの文章はそのキャラクターや世界観の「意志」そのものだからです。例えば、「このキャラクターはこういう話し方を好む」「この主人公は、こういう口癖や語尾になる」というのは、事前に設定があるはずです。

この部分をアウトソースしていくのは、実は簡単なことではありません。

ゲームプレイヤーは、翻訳されたそのキャラクターの言い回しや口癖などを「世界観」として捉えて楽しむわけですから、そこに向かっていくためには、背景(=世界観)の理解なしには難しいでしょう。

ネイティブチェックとの違い

一方、「自社で翻訳したけれど、英語として正しいかどうかチェックしてほしい」というリクエストも少なからずあります。しかし、ゲームに限っては、単純なネイティブチェックにならないこともあります。

弊社の場合、一般的なネイティブチェックは以下のように規定しています。

ネイティブチェック

また、「ネイティブチェックの真実」という記事も掲載していますのでよろしければご覧ください。

ネイティブチェックの真実

つまり、お客様の本当のニーズは「世界観を踏まえて英文をチェックしてほしい」ということだったりするわけです。

こうなると弊社の定義するネイティブチェックの範疇には入らず、どちらかというとリライトのような作業になってしまう可能性があります。もちろんこれらは個別に精査した上で切り分けが必要ですが、切り分けたところで実現できるかどうかというのは分かりません。

例えば、「この要素とこの要素を満たしていれば、このゲームの世界観になる」という基準が言語化されていなければ、単純に感覚的な話になってしまうということです。

ゲームの世界観を守っていくために

とはいえ、お客様の理解度を100とするなら、90や95くらいまで背景を理解して翻訳したり、リライトすることができる人も(多くは無いですが)存在します。

ですから、弊社としては無料トライアルを実施し、お客様の望む「世界観」にできるだけ近しい品質を作り出せる人をアサインしたり、ゲームの背景やキャラクター設定など詳細にお伺いしたり、また場合によってはトレーニングに参加したりと、「そのゲームの世界に入っていく」ことを愚直に繰り返すしかありません。

確かに時間がかかるかもしれませんが、しかし、せっかくアウトソーシングし、コストも時間もかけていくのであれば、この点は手を抜かずに取り組む必要があると考えています。また一方で、単純な「テキスト文章」ではなく、キャラクターの行動に直結するものなのですから、そういった点からもこだわらなくてはならないのではないでしょうか。

「世界中のプレイヤーのために」

その上で、開発プロセスにおける LQA をしっかり行い、ギリギリになりがちなスケジュールをやり繰りしていくことで、日本語版だけでなく英語や中国語などの多言語版ゲームも高い評価を受けるわけです。

私たちは、お客様の持つ「自分たちが開発したこのゲームを、世界中のプレイヤーに体験してほしい」という想いを痛切に感じています。

だからこそ、その「世界観」を理解した上で、弊社の翻訳サービスをご提供できればと考えています。

  • どのようにアウトソーシングするのか?
  • そもそも、本当にアウトソーシングしていいのかどうか?

このような視点を持って弊社のような翻訳サービスをご利用いただくことで「ゲームの世界観」を保持しながら、世界に向かって発信することができるのではないでしょうか。