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クイックレスポンスが作り出す「顧客体験価値」の向上

顧客体験

仕事のやり取りにおいて、メールでもチャットでも「もう返事が来た!」と感じた経験は誰しもがあるはずです。その時、どんな感情を持つでしょうか?少なくとも嫌な気持ちはしないはずです。

今回はお客様とのコミュニケーションにおいて必須の、営業パーソンとして(本質的には営業だけではないですが)、心がけておきたい「クイックレスポンス」が生み出す顧客体験について解説します。

「速さ」とは「お客様への約束」

法人営業の現場では、良い提案や安い価格だけでは勝てない場面が増えています。ここに「外資系企業だから」「日系企業だから」といった違いはあまり関係ありません。仕事をしていると気づきますが、クイックレスポンス(迅速で、お客様の役に立つ返事)は、すべてのビジネスシーンにおいて非常に重要です。

お客様からの連絡に対する最初の反応(行動)、つまりクイックレスポンスが、お客様の次の決断を後押しし、安心感を生みだします。この「レスポンスの速さ」は、単なるビジネス上の礼儀ではなく、お客様が感じる体験(顧客体験)そのものを作り上げる「目に見えないサービス」にもなると言っても過言ではなく、結果として、売上やリピートオーダーにつながりやすくなるでしょう。

なぜすぐに対応すると、仕事がうまくいくのか

顧客満足

1時間以内の返事で、商談発生率がアップする

ハーバード・ビジネス・レビューによると、ネットからの問い合わせに「1時間以内」で対応した会社は、「1時間以降」に連絡した会社と比べて、その見込み客が有望な商談になる確率が約 7 倍、さらに「24 時間以降」と比べると 60 倍も高くなったという調査結果があります。

さらに、他の調査では、問い合わせがあってから「最初の 5 分以内」に返信できているのはたったの 20%程度であるという結果もあります。逆に5分以内にレスポンスができると、コンバージョン率を 21 倍に高められるという結果もあります。つまり、多くのお客様は「最初に連絡をくれた会社から買う」ことを選んでおり、この「速さ」が勝敗を分けています。

お客様は「いつでも、どこでもつながる」ことを求めている

前述のように、特に最近の B2B では、お客様は対面、オンライン会議、自分で調べるサイト、チャットなど、約 10 種類もの連絡手段を使い分けていると言われています。これらの購買体験は「10チャネル時代」とも言われています。

怖いのは、ここで応答が滞ってしまうと、容易に他社へ乗り換えられる可能性が高まることです。

これは相手の立場になれば容易に想像できるでしょう。

つまり、「まず速く返す」という行動自体が、他社との大きな差別化要因になります。

「素早くて要点を得た返事」は、お客様の新しいニーズに合っている

ある調査では、B2B のお客様のなんと 61% が「営業担当者を介さずに購買をしたい(rep-free)」と答えています。

しかし、(それにもかかわらず)本当に知りたいことや困ったことがあったときには、「要点のある返事を速く、知りたい」と希望しています。このような一見矛盾しているような状況こそが、信頼の土台になるというのも見逃せないポイントです。

またこれは(今さら感はあるのですが)「顧客体験」の良し悪しを決める基本は、何らかの派手さや目新しさではなく「スピードと便利さ、そして的確なサポート」であることもわかっています。この「当たり前のこと」をしっかり守る運用が、実は大きく成果を伸ばせるかどうかを分けています。

4つの視点から考える影響

4つの影響

ここでは、さらに4つの視点(商談の質/ビジネス効率/チームの実行力/経営の成果)から「クイックレスポンス」が与える影響を考察します。

【商談の質】お客様の理解を深め、受注率をアップする

レスポンスが速いと、「要点の確認→仮説の提示→前提条件の更新」というお客様とのやり取りの回数と密度が増えます。これにより、お客様の「わからないこと」や「認識のズレ」を早く解消でき、案件の滞留期間が縮まります(パイプラインのスピードが上がる)。結果的に、商談からの受注率アップにつながります。

【ビジネス効率】ムダな手間とコストを削減する

待ち時間が長いと、お客様も私たちも話の内容を「もう一度思い出す」というムダな手間がかかります。逆に、早いやり取りができると、この手間や仕様の認識違いによる「やり直しコスト」を抑え、競合他社への乗り換え(機会損失)も減らすことができます。

結果として、実質的なコストと時間のムダを削減することができます。

【チームの実行力】個人任せにせず、チームで速さを実現する

営業、技術担当(SE)、法務、セキュリティ担当など、多くの人が関わる商談では、個人の「頑張り」だけで速さは継続できません。連絡方法の統一、ひな形(テンプレート)の整備、現場への権限の委譲、そして回答時のルールを設定することで、クイックレスポンスをチーム全体の進め方として仕組み化し、持続可能な体制を作ることができます。

【経営の成果】決断を早め、売上達成を確実なものにする

最初に「大まかな方向性」を固め、細かい調整は後から共同で進めていく運用は、顧客の経営層による判断の先延ばしや再度の稟議を減らします。価格、納期、セキュリティの方針など、最低限必要な前提条件について早く合意できるほど、お客様の決裁プロセスがスムーズに動き、期中の売上達成の確実性を高めてくれます。

コンペで勝つための「費用対効果の計算」と「素早いやり取り」

また、別のケース(コンペ)の場合も考えてみましょう。他社と提案内容が拮抗し、あと一歩の決め手に欠ける場面では、「お客様が最後に確認したい点」を一緒に明確にし、その中心に「どれだけ効果があるか(費用対効果)」を提案します。

最初は大まかな試算でも構わず、スピーディに進めていきます。その後、利用人数、動く時間、問い合わせ件数、障害の頻度、翻訳の量など、お客様から提供された前提条件を、短いやり取りで何度も更新しながら、試算の精度を上げていくことで提案内容をブラッシュアップさせることができます。

この一連のやり取りの中での「クイックレスポンス」こそが、「最後の決め手」となります。

なお、最終的に契約を決める人(最終決裁者)は、「うちの会社に合わせて、きめ細かく作られた提案」を重視する傾向があります。この「きめ細かさ」を高めるための近道も、前提条件を素早く更新できる、速いやり取りの体制なのはお分かりになるでしょう。

コンペや競合状態になった場合でも「クイックレスポンス」は非常に有効であると言えます。

「すぐに対応する」ためのプロセス

ここでは「クイックレスポンス」の具体的な方法と目安をお伝えします。

クイックレスポンス

※なお、連絡手段が変わってもお客様との話の内容が途切れることがないように、同じ情報にたどり着ける仕組みを構築しておくことが必須です。これは、前述の「B2B で 10チャネルを前提に、24時間 365 日動いている」というお客様の要望に対応するためです。

サポートとCSの素早い対応で導入後も顧客体験を向上させる

ちなみに、システム導入後の運用(障害対応、変更、多言語展開など)では、「初動の 1〜15 分で状況を共有」し、「24 時間以内に根本的な解決方針を示す」という体制が、お客様の解約率を下げ、追加の契約(アップセル率)を増やすという効果もあります。

結局のところ、営業の時点でも購買後の運用でも、顧客体験の核心は「スピードと便利さ、的確な支援」であるというのは、超重要項目であることは間違いありません。

まとめ:「クイックレスポンス」は安心感そのもの

いかがでしたでしょうか。クイックレスポンスは、シンプルですが単なる「頑張ろう」という精神論ではなく、運用をどう設計するかという問題に帰結します。

この「最初の一歩」を(クイックに)踏み出し、その後のやり取りの中で提案の精度を高めていく。そして連絡手段が増えたとしても「どこから来ても話が途切れない」ように 1つにまとめ、ルールやひな形、権限委譲で持続可能な状態を構築していくことができます。

「速さ」は、お客様が感じる「安心感」そのものであり、信頼の土台です。これは営業だけでなく、法務、セキュリティ、翻訳・ローカライズ、サポートまで、チーム全体で取り組むことで、確実に成果が上がっていくと言えます。

その事例「お蔵入り」していませんか?「読まれる事例」から「営業が使いたい事例」へ成果を最大化する新常識『エビデンス・オプス』とは

evidenceops

「多大なコストと時間をかけて顧客インタビューを実施し、ようやく導入事例を公開した。しかし、営業現場でどれだけ活用されているのか、そして、本当に売上に貢献しているのか、自信を持って答えられない…」

IT企業のマーケティング担当者様なら、一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか?事例制作における「コスト」「納期」「取材アポの調整」といった課題は、実は「表面的な症状」に過ぎません。

本当の課題は営業の成果に直結する「勝てる証拠」としての導入事例を、継続的に供給・再利用できる仕組みがないことなのです。

本コンテンツでは、この根深い課題を解決し、事例制作の投資対効果を最大化する新アプローチ『Evidence Ops(エビデンス・オプス)』について、具体的なステップと共に解説します。

なぜ、今までのやり方では通用しないのか?

まず初めに、従来の「作って終わり」の事例制作では成果が出にくくなってしまっている原因のひとつに BtoB 購買プロセスの劇的な変化があります。

BtoBの購買プロセスは、もはや「一本道」ではない

現代のBtoBにおける購買は、マーケターが想定するような綺麗な一本道(ファネル)ではありません。Gartner 社の調査によれば、平均で6~10名程度の意思決定者が、それぞれ4~5個の情報ソースを持ち寄り、行ったり来たりしながら検討を進めている、というのが現実です。

https://www.gartner.com/en/sales/insights/buyer-enablement

つまり、買い手の 約 77 %が「製品やサービスの購入は非常に複雑で困難だ」と感じているのです。

https://www.gartner.com/en/sales/insights/b2b-buying-journey

買い手は「自分で調べたい」と考え、営業担当の出番はごく僅かになっている

さらに、買い手は自ら情報を集めて主導権を握りたいと考えています。これは驚くべき数字ですが、実に買い手の 75%が「営業担当者を介さない購買体験を好む」と回答しており、実際に、買い手が購買活動に費やす時間のうち、ベンダーとの対話に使われるのは、わずか17% というデータもあります。

https://hbr.org/2022/01/sensemaking-for-sales

つまり、営業が接触する前の「自己学習フェーズ」で、いかに信頼できる「証拠(実績)」を提示し、検討の土台に乗せてもらえるかが勝負の分かれ目となるのです。

マーケットの95%は「今すぐ客」ではない

また忘れてはならないのが、「95-5ルール」です。マーケットにいるターゲットのうち、今すぐ購入を検討している層はわずか 5%と言われており、残りの95%は、まだ具体的な検討段階にはいない状態です。

https://business.linkedin.com/marketing-solutions/b2b-institute/b2b-research/trends/95-5-rule

この大多数を占める「検討段階にない層」に対しては、彼らの課題に気づきを与えるよう示唆に富んだコンテンツを提供し、具体的な検討のタイミングが来た時に、事例やROIデータといった「稟議を通すための素材」を迅速に手渡す、といった流れを作っておく必要があります。この2段構えの戦略こそ、重要なプロセスとなります。

貴社の事例制作における「3つのギャップ」

この厳しい現実に対し、多くの企業の事例制作プロセスには 3つの大きなギャップが存在します。

ギャップの種類具体的なギャップ
コンセプト ギャップ導入事例を「美しい読み物」として捉えており、「顧客の購買プロセスを前に進めるための証拠となる集合体」という視点が欠けている
一度作ったら様々な部署(経営層、事業部、営業、IT部門など)で再利用されるという前提がない
プロセスギャップ法務、広報、営業、カスタマーサクセスといった関係部署の承認が伝言ゲームのようになってしまい、必要以上に時間がかかる
「このROI、本当に達成したの?」といった数値へのフィードバックに対する根拠がきちんとまとめられておらず、手戻りが多くなっている
グローバル本社と日本支社で、顧客の「実名公開」に対する許諾のハードルが異なるにも関わらず、共通のテンプレートや合意形成のプロセスがない
事例の完成後、営業がすぐに使える「提案書用の抜粋スライド」や「メール添付できる1枚資料」への展開や提供が後手になっている
ツール ギャップCRMやCSツール内に眠っている「顧客の利用率」「満足度」といったいわば宝の山とも言えるデータが、事例制作のインプットとして活用されていない
事例の権利情報、許諾期限、改訂履歴などがバラバラに管理され、いざ再利用しようとすると「このロゴ、まだ使っていいんだっけ?」といった確認に多大なコストがかかっている

このように、これらのギャップが積み重なり「作ったはいいが、使われない」事例が量産されてしまうのです。

マーケ担当者が本当に欲しいのは「仕組み」

では、マーケティング担当者は本当のところはいったい何を求めているのでしょうか。それは、「単なる美しい事例記事」ではないということです。

仕組みポイント
営業が実際に使用できる「証拠/実績」の継続的な供給マーケティング施策(MQL)から商談(SQL)、そして受注へと、導入事例がどう貢献したのかをきちんと追跡できる
承認プロセスと法務リスクの最小化数値による主張の根拠を明確に管理し、社内承認をスムーズにすること。
また、「実名/匿名」の両パターンを戦略的に使い分け、許諾のハードルを下げること
買い手の心に響く「形式」にする「短さ」こそが正義:67%の買い手が「短いコンテンツは価値がある」と回答。
「共有しやすさ」が拡散を生む:共有リンクや、SNSで引用しやすい統計データが効果的。
最適な届け方:LinkedIn(84%)、Eメール(78%)、社内コラボツール(60%)が主要な配布経路。
顧客の検討ステージに合わせた資料の提供検討の中盤では、具体的なケーススタディ(78%)が最も有効。
検討段階の終盤では、製品デモ(77%)、ユーザーレビュー(63%)、ROI計算ツール(60%)といった、より具体的な意思決定材料が求められる。

これらのニーズを満たすためには、導入事例を単発の「制作物」として捉えるのではなく、「顧客の実績を事業資産として運用する」という発想の転換が必要となります。

解決策:『エビデンス・オプス』(Evidence Ops)

ここからが本題となりますが、これらの課題を根本から解決するアプローチとして『エビデンス・オプス』(Evidence Ops)をご紹介します。

この概念は、単に導入事例を作るだけでなく、「顧客の成功実績(エビデンス)の発見 → 制作 → 承認 → 配信 → 計測 → 改善」までを一気通貫で管理し最適化する「仕組み」です。

なお、ここでの「エビデンス」とは、単なる導入事例の記事だけを指すのではありません。

定量的な導入効果(ROI、コスト削減率、生産性向上率など)、お客様からの評価コメント(お客様の声、推薦文)、権威ある第三者からの評価(アナリストレポート、受賞歴)、顧客企業のロゴ、満足度調査のデータなどいわゆる、「お客様が貴社を選んで成功した」という客観的な事実のすべてが含まれます。

エビデンス

そして『エビデンス・オプス』は、これらの価値ある「エビデンス」を一連のサイクルを組織的に回していくための、新しいマーケティングのアプローチとなります。

プロセス

具体的な8つのステップをご紹介します。

Evidence Ops 8 steps

「エビデンス・オプス」の KPI

エビデンス・オプスを導入することで、マーケティング活動の成果は具体的な数値として現れるようになります。以下は各評価のためのチェックリストとなります。

成果項目詳細
SQL化率の向上導入事例をリクエスト、ダウンロード等をした見込み客は、そうでない層に比べてどのくらい商談化率が高いか?
検討期間の短縮導入事例を提示した案件は、そうでない案件に比べて検討期間がどのくらい短くなるか?
受注率の向上同業・同規模の「自分ごと化」できる事例を提示することで、受注率がどれだけ上がるか?
営業ツールとして営業担当による導入事例素材の再利用(提案書への引用、メールへの添付)回数は?
許諾資産の増加匿名での許諾から実名公開へとステップアップした顧客の割合や、期限切れで使えなくなる資産の削減率

これらのKPIを追いかけることで、導入事例制作がただのコストセンターではなく、明確な成果を生み出すプロフィットセンターへと生まれ変わります。

まとめ:「読まれる事例」から「営業が使いたい事例」へ

BtoBの購買はますます複雑化し、買い手はより多くの実績をはじめとしたエビデンスを求めています。もはや、導入事例は単なる「読み物」ではありません。営業担当が顧客の心を動かし、「稟議を通す」ための強力なツールです。

導入事例を、最も効果的なタイミングで、最も効果的な相手に届けるための運用ステップがエビデンス・オプス(Evidence Ops)です。

ただ作って終わりの導入事例ではなく、その先の成果に直結する「勝つための貴社の資産」という位置づけにすべきです。

弊社では、単に美しい事例を制作するだけではありません。貴社のビジネス成果に貢献するため、エビデンス・オプスというコンセプトから導入事例の企画、改善、運用までをワンストップで支援しております。

IT分野専門の導入事例制作サービス

日本市場でリードの質を最大化する:外資系IT企業向けABM×ローカリゼーション実装ガイド

ABM×ローカリゼーション

外資系IT企業のマーケティング業務では、グローバルで設定されるKPIと、日本市場特有の現実との間で、常に難しい舵取りを要求されます。本社からはMQL(Marketing Qualified Lead)の「量」を問われ、一方で国内の営業チームからはリードの「質」に対する厳しいフィードバックを受けます。これは、多くのマーケティング担当者にとっても「あるある」であり、且つ今も直面する共通の課題です。

この状況を打開する鍵は、マーケティング戦略の抜本的な転換にあります。闇雲にMQLの量を追うのではなく、本当にアプローチすべき企業(アカウント)と担当者(キーパーソン)に狙いを定め、商談化への歩留まりを極限まで高めるアプローチです。すなわちそれこそが「アカウントベースド・マーケティング(ABM)」となります。

今回は、客観的なデータと実践的なフレームワークに基づき、日本市場で成果を出すための「アカウントベースド・マーケティング(ABM)」とそれを支える様々な「ローカリゼーション」の具体的な実装方法を解説します。これは、限られた予算内で費用対効果を最大化し、質の高いパイプラインを創出するための戦略でありロードマップとなります。

日本市場の「動かせない前提条件」を理解する

効果的な戦略を立案するためには、まずマーケティング活動自体が置かれている客観的な状況や環境を正確に把握する必要があります。以下のデータは、なぜ今、日本市場で「量より質」への転換が不可欠であるかの理由となりますが、これはまさに「動かすことのできない厳然たる事実、前提条件」となっている「定数」であるため、無条件で受け入れなければなりません。

世界的に引き締められるマーケティング予算

Gartner 社の調査によれば、グローバルでのマーケティング予算は 2024年時点で売上比の 7.7% と、コロナ以前の水準を下回る低位で推移しています。これは、マーケティング部門が「より少ない予算で、より大きな成果」を求められる「精度重視の戦い」を強いられていることを意味しています。

(出典: Gartner, “The Annual Gartner CMO Spend Survey, 2024”)

https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-05-13-gartner-cmo-survey-reveals-marketing-budgets-have-dropped-to-seven-point-seven-percent-of-overall-company-revenue-in-2024

日本市場特有のハードル

日本貿易振興機構(JETRO)の調査では、日本に拠点を置く外資系企業が直面する課題として、依然として人材の確保、言語の壁、煩雑な行政手続きが上位に挙げられています。これらは、日本の商習慣、特に「稟議」に代表される多段階の意思決定プロセスへの適合が、ビジネス成功の鍵であることを示唆しています。

(出典: JETRO, “2023年度 日本に進出する外資系企業の景況感に関するアンケート調査”)

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2024/fee004b83b66c3b4/202403.pdf

また、この点についてはより詳細の記事でご説明をしておりますのでそちらをご覧ください。

なぜ海外で成功したマーケティング施策が日本では失敗するのか?データで見る5つの要因

ABM に最適なチャネル LinkedIn

日本でのビジネスSNSの代表格といえば LinkedIn ですが、2025年初頭の時点で LinkedIn の日本国内の「会員」数は490万人と言われています。

この LinkedIn の広告リーチは成人人口の約4.6%(2025年1月時点)であり、他のSNSに比べて少ないいのですが、その最大の強みは企業名や役職でのターゲティング精度の高さと言われています。これは、まさにABMが求める「少数精鋭」へのアプローチに最適なチャネルと言えます。

(出典: DataReportal, “Digital 2025 Japan”)

https://datareportal.com/reports/digital-2025-japan

Cookieレス時代への移行と対策

Google Chrome におけるサードパーティCookieの段階的な廃止はもはや避けることができません。代替API(Privacy Sandbox)の導入は進んでいますが、不安定な外部データに依存するのではなく、今後は自社サイトで同意に基づいて取得するファーストパーティデータを軸とした計測こそが、最も確実で安全な戦略となるでしょう。

(出典: Google, “The Privacy Sandbox timeline for the web”)

https://privacysandbox.com/intl/eng/open-web/#the-privacy-sandbox-timeline

アカウントベースド・マーケティングで最短距離を

以上のように、上記の4つの「動かせない事実」から導き出される、日本市場における外資系ITマーケティングの最適解となるのは「ABM(誰に)」×「日本語への深い最適化(何をどう言うか)」×「ファーストパーティデータ計測(どう測る)」の三位一体のマーケティング戦略です。

この方程式こそが、限られた予算で費用対効果を最大化する“最短距離”となります。

成果の定義を“量”から“質”へ移行する

前述のように、グローバルで標準化された「量」中心の KPI から脱却し、日本でビジネスを成功させるために、「質」の指標を再構築することが急務であることは明白です。

次の表では、マーケティングを量から質へ転換する際の再定義と指標になります。

実践項目説明
KGIの再定義最終的なゴール(KGI)を「MQL件数」から「新規パイプライン創出金額」と「商談化率」に設定

※これらの数値は、マーケティング活動がビジネスの売上にどれだけ直接貢献したかを測る、最も重要な指標
KPIの再設計KGIを達成するための中間指標(KPI)は、以下のように、「質」を問うものへシフトさせる
ターゲットアカウント内MQL比率全MQLのうち、事前に定義したターゲット企業からのMQLが占める割合。

※マーケティング投資の効率性を示します。
MQA率(Marketing Qualified Account)ターゲットアカウント内で、複数のキーパーソンが意味のあるエンゲージメント(Webサイト訪問、資料DL等)を示した割合。

※アカウント単位での興味関心の高まりを計測
MQL→SQL転換率マーケティングが創出したリードが営業部門によって商談(SQL: Sales Qualified Lead)として認定された割合。

※営業との連携精度を示すことが可能
平均商談単価マーケティング経由で生まれた商談の平均金額。

※高価値案件の創出能力を示します。
日本独自の用語定義本社で使われるMQLの定義をそのまま適用するのではなく、「ターゲットアカウント内の部長職以上からの問い合わせのみを“質のMQL”として定義する」など、日本市場の現実に即した用語と閾値を再定義し、営業チームと公式に合意します。

この内容は、本社へのレポーティングにおいても有効な手段となります。グローバル共通の「量」のKPIと並記する形で、日本独自の「質」の KPI とその成果を示すことで、日本市場における戦略の妥当性をデータで証明できます。

「本社と日本のズレ」を仕組みで解消する

外資系企業のマーケティング活動において、本社が策定した「グローバルプレイブック」と日本市場の実態とのギャップを埋める作業は避けて通れません。この“ズレ”を放置したままでは、いかなる施策も効果を最大化することはできないからです。

理想と実態のギャップと修正案

以下のような一覧を作成し、修正に着手します。また現場で散見される典型的な“ズレ”とその対策案はチームとして対応するようにしましょう。

プレイブック計画日本市場の実態課題改善策
コンセプト迅速な意思決定 / 短期でのクロージング稟議・多段階承認・関係部署との合意形成文化育成(ナーチャリング)期間が想定より長引き、失注と判断される段階的な合意形成をゴールに設定する

各部門のキーパーソンを説得するための材料を個別に用意する
プロセスMQLの大量獲得 → インサイドセールスへ自動配賦ターゲットアカウントを限定し、深く耕作することが有効量を追うあまり、ターゲット外のリードばかりが増え、営業の疲弊と歩留まりの悪化を招くABMを最優先とし、ターゲットアカウント内でのエンゲージメントを評価するKPI(MQAなど)を導入する
ツール英語版 LP+グローバル標準のMA(マーケティングオートメーション)日本語特有の同意文言 / 姓名の入力順 / 全角半角問題 / 厳格な個人情報保護への意識・フォームからの離脱率が高い
・データが文字化け・欠損する
・法的リスク
日本語に最適化された入力フォームを導入。

CMP(同意管理プラットフォーム)を実装し、ファーストパーティデータ計測を徹底

ちなみに、このギャップの根深さは、前述の JETROの調査でも「言語・コミュニケーションの壁」「日本独自のビジネス慣行への対応」が継続的な課題として指摘されていることからも明らかです。これは精神論ではなく、仕組みで解決しなければならない問題です。

理想的な顧客像(ICP)と「購買影響者マップ」を具体化する

ABMの成否は、アプローチ対象となる「誰に」の解像度で決定します。理想的な顧客像(ICP: Ideal Customer Profile)をデータに基づいて定義し、その組織内に存在するキーパーソンたちの役割と関心事を具体的にマッピングすることが大変重要です。

説明
ICPのスコアリング「従業員1,000名以上の製造業」といった曖昧な定義ではなく、より具体的な要素でスコア化を行います。業種 × 従業員規模 × 既存システムのレガシー度 × 規制対応の負荷 × 既存のクラウド利用状況(競合/協業)
日本のB2Bビジネスにおける「4つの関門」エンタープライズITの導入検討プロセスにおいて、特に次の4部門が重要な購買に関する影響者(あるいはブロッカー)となる傾向があります。
IT部門:・既存システムとの連携性
・運用負荷
情報セキュリティ部門・セキュリティポリシーへの準拠
・インシデント対応
事業部門(ユーザー)・業務課題の解決
・投資対効果(ROI)
調達部門・価格の妥当性
・契約条件
役割別のコンテンツの言い換え同一の製品・サービスであっても、訴求相手の役職やミッションに応じて、響くメッセージは全く異なります。一つのテーマに対し、複数の「切り口」のコンテンツを用意することが求められます。CIO/IT役員向け投資対効果(ROI)を金額で示すエグゼクティブサマリー
情報システム部長/担当者向け既存システムとのアーキテクチャの適合性を示す技術資料
法務/コンプライアンス担当向け個人情報保護法やデータの越境や移転に関する遵法性をまとめたドキュメント
調達担当向け競合製品との機能比較表や標準的な契約条件のひな形

これらの資料を事前に整備しておくことは、営業部門が各ステークホルダーとの折衝を円滑に進める上で強力なエンジンとなります。「真のローカライズをしなければ各ステークホルダーには届かない」というのは説明するまでもありません。

チャネル設計:最適な布陣でターゲットを囲い込む

ペルソナが明確化されたら、次はその対象者が存在する/閲覧するメディアを特定し、効果的なアプローチを行うためのチャネル設計を行います。各チャネルに明確な役割を分担させることが成功の鍵となります。

ツール役割戦術
LinkedIn【認知/興味】

ターゲットアカウント内のキーパーソンに対し、「〇〇といえば」の第一想起を獲得する。
ABMリストを活用し、「企業×役職×業界」で精密なターゲティング設定をします。

「課題提起型」と「解決策提示型」の広告クリエイティブのABテストを行い、エンゲージメントを最大化し継続
Eメール(比較検討の中層戦):【比較検討】

自社を認知した潜在顧客を、具体的な検討フェーズへと引き上げるための地上戦となります。
MAツールを用い、エンゲージメントレベルに応じてセグメント化されたメールを配信。

件名には目的・所要時間・得られる価値などを明記し、開封率アップを促進
イベント(ウェビナーや少人数ラウンドテーブル)【意思決定の最終戦】

最終的な疑問点を解消し、導入を後押しするクロージングの場を設定します。
認知獲得を目的とした大規模なウェビナーと、ターゲットアカウントの役職者限定のクローズドなラウンドテーブルを使い分けます。

参加者には「稟議書などの資料」や「費用対効果の試算シート」を提供し、社内での意思決定プロセスを支援。
自社サイト【全ての情報のハブ/信頼の砦】

全てのチャネルからの訪問者を受け止め、信頼性の高い一次情報を提供する本丸
CMPを導入してユーザーの同意を明確に取得し、Google Tag Manager 等を活用してサーバーサイド計測へ移行します。

これにより、ブラウザの制限に影響されにくい、正確なファーストパーティデータを蓄積する基盤を構築することができます。

これらのチャネル設計は、DataReportal 「LinkedIn の精密なターゲティング能力」と、Privacy Sandbox 公式「Cookie 移行期の技術要件」の両方を満たす、現実的かつ効果的なアプローチとなっています。

ローカリゼーションで「品質を成果に変換する」

クリエイティブでも広告でも、アプローチする際の広義のコンテンツは、どうしても本社から提供されるものが多くなるため、それらをいかに「日本の顧客に伝わりやすい」コンテンツに仕上げるかが大変重要です。

精緻に作り込まれたコンテンツの品質を、具体的なビジネス成果(=商談)に変換するための重要な「仕組み」として捉え、進めていく必要があります。

スキーム
事業KPIと連動した品質管理用語集やスタイルガイドの整備に留まらず、その品質評価をマーケティングの KPI と直接接続させます。

ローカライズしたホワイトペーパーの読了率(ヒートマップツール等で計測)、各種申請資料のダウンロード率、ウェビナー後のアポイント獲得率など
これらの数値が低い場合、翻訳の自然さや、日本の読者の関心事とのズレなど、品質に起因する問題が潜在している可能性を示唆します
翻訳支援ツールと人間の協業翻訳メモリ(TM)、用語ベース、生成AIといったテクノロジーは、翻訳のスピードと一貫性の向上に大きく貢献します。

しかし、最終的な品質、特にビジネスの文脈におけるニュアンスの判断は、市場を深く理解した人間の編集者・レビュアーによるレビューが不可欠です。これが「品質を成果に変換する」ための最後の砦となります。

無料版の AI 翻訳を使ったら訳抜けだらけだったとか、AI 翻訳後、チェックせずにそのまま公開/発信してしまったという話はよくお聞きします。決して AI は万能ではないからこそ、その前後で品質を担保する必要があります。

「7.7%」時代のリアルな予算配分モデル

冒頭にあった Gartner 社が示す「売上比 7.7%」という厳しい予算環境の中で、質を最大化するための予算配分モデルの一例を以下に示します。(あくまで一例)

配分
40%(400万円)
ABM媒体費
主に LinkedIn 広告。

ターゲットアカウントリストへのリーチを最大化し、質の高いトラフィックを確保するための最優先投資項目
25%(250万円)
ローカリゼーション & 役割別コンテンツ制作費
ブログ、ホワイトペーパー、動画、導入事例、稟議書等の資料など、役割別に最適化されたコンテンツ群の制作費。

翻訳/DTP/デザインだけでなく、日本市場に合わせた企画・編集費用も含む。
20%(200万円)
イベント関連費
ウェビナープラットフォーム利用料、ラウンドテーブル運営費、顧客事例など登壇者への謝礼や関係構築費用など
15%(150万円)
計測/同意/データ基盤整備費
CMPライセンス料、サーバーサイド計測環境の構築・保守費、MA/CRMとのデータ連携費。

正確な効果測定とコンプライアンス遵守のための必須投資

この配分に基づき施策を実行し、四半期ごとにターゲット内 MQL 比率、MQA 率、SQL 化率、平均商談単価といった「質の KPI」で成果をレビューし、次期の予算配分を最適化するサイクルを確立します。(同時に本社へのレポーティングにも活用できる資料として作成します)

※弊社では年間でのローカライズ契約(翻訳、通訳、事例、映像制作、英会話など)やコンテンツ制作も承っております。

外資系IT企業専門コンテンツ制作

90日間での実装ロードマップ

ここまでの戦略を、具体的なアクションプランに落とし込んだ 90日間で構築するためのロードマップ案をご紹介します。これは、実行計画を策定する上での雛形となるでしょう。

Day 0–14戦略定義フェーズ1. 営業チームとのワークショップを通じ、既存の優良顧客(売上、利益率、LTV等)を特定

2. 優良顧客の共通項を分析し、ICP(Ideal Customer Profile)を言語化
※アプローチ対象外とする除外条件(競合、特定の技術環境など)も定義

3. 購買に関わる「四つの関門」(IT/情シス/事業部/調達)のペルソナと関心事をマッピング
Day 15–30コンテンツ準備フェーズ1. 各ペルソナ向けに複数の広告クリエイティブ(役職×メッセージ)を準備

2. 日本語に最適化された(ローカライズ)LP、入力フォーム、サンキューページを制作

3. 法務部門と連携し、同意取得文言を確定、CMPを設定。

4. ダウンロードコンテンツとして、「稟議書PDF」「機能比較表」などを整備
Day 31–60施策実行・改善フェーズ1. LinkedInにターゲットアカウントリストをアップロードし、ABM広告キャンペーンを開始

2. 週次で広告CTR、LPの CVR などをモニタリングし、パフォーマンスを最適化

3. 獲得したリードに対し、MAから育成プログラム(メール配信等)を開始
Day 61–90パイプライン化フェーズ1. エンゲージメントが高いアカウントを対象に、ウェビナーや少人数ラウンドテーブルを企画・実施

2. 営業チームとの週次レビュー会を設定し、MQL から SQL への転換におけるボトルネックを特定

3. 特定された課題(よくある質問、反対理由等)に基づき、FAQコンテンツや追加の説得資料を作成・展開

ケーススタディ:先進企業の取り組み

理論だけでなく、実際の企業による取り組み事例は、自社の戦略を検討する上で多くの示唆を与えます。ここで紹介するのは、全て企業やベンダーが公式に発表している一次情報です。

NEC × LinkedIn(グローバルでの運用統合)

NECは、グローバルでのブランド発信基盤としてLinkedInを統合的に活用。50万人以上のフォロワー基盤を活かし、見込み顧客の育成から顧客化へと繋げる体制を構築しています。企業としてチャネルを統合し、一貫したメッセージを発信することの重要性を示している事例となります。

(出典: LinkedIn Marketing Solutions 公式ケーススタディ)

https://business.linkedin.com/marketing-solutions/case-studies/nec-corporation

NTTPCコミュニケーションズ × HubSpot(営業・マーケティング統合)

同社はHubSpotを導入し、マーケティングと営業のデータを一元化。プロセスの標準化と歩留まりの改善により、施策コストを約2億円削減しつつ、売上は毎年200%成長に貢献したと公表されています。データ統合が具体的なビジネス成果に繋がることを示す、国内の優れたB2Bの成功事例です。

(出典: HubSpot Japan 公式導入事例)

https://www.hubspot.jp/case-studies/nttpc

実務用チェックリスト

日々の業務で活用できるチェックリストも合わせて活用してください。

項目補足説明
定義MQL/SQL/MQAの日本市場における定義を言語化し、営業部門と合意済みか
ABM対象ターゲットアカウントリストが作成され、除外条件まで確定しているか
同意・計測日本語の同意取得テキストは法務部の確認済みか

CMPのログは保全されているか

サーバーサイド計測は実装済みか
資料各役割別(IT/情シス/事業部/調達)の「稟議書等PDF」や「機能比較表」、「費用対効果試算シート」、「FAQ」などが用意されているか
チャネルLinkedIn(ABM)、メール(育成)、イベント(クロージング)の役割分担と、それらを横断する KPI が設計されているか
レビューターゲットアカウント内での KPI(MQA率、SQL化率等)がダッシュボードで可視化され、営業と週次でレビューする仕組みがあるか
法務連携:個人情報保護法やデータの越境移転に関する記述が、自社の公開ポリシー等に基づき、正確な表現になっているか

結論:日本市場を制する鍵は“三位一体”の同期にある

いかがでしたでしょうか。日本市場におけるマーケティングの「質の最適化」とは、

「ABM」×「ローカリゼーション」×「ファーストパーティ計測」

という 3つの要素を同期させることに他なりません。

日本の複雑な意思決定プロセスと、厳しい法務・セキュリティの関門を“障害”と捉えるのではなく、“攻略すべき市場のルール”と捉え直します。そして、その攻略に必要な役割別の説得材料と、稟議や上申に使えるデータや資料を、顧客が求める前に先回りして提案していきます。

このアプローチによって初めて、ターゲット外のノイズから解放され、本当に価値ある商談に集中することが可能です。本社からのプレッシャーや営業との軋轢といった課題は、多くのマーケティング担当者が体験するものですが、データとロジック、そして日本市場への深い理解に基づいた ABM 戦略によってその状況を打開することができるのではないでしょうか。

なぜ海外で成功したマーケティング施策が日本では失敗するのか?データで見る5つの要因

日本市場のマーケティング施策

グローバル施策と日本市場での現実のギャップ

「本社では大成功だったのに、なぜ日本ではうまく行かないのか?」

これは多くの外資系IT企業のマーケティング担当者が直面する共通の悩みです。実際に、外資系IT企業のマーケティング担当者を対象とした調査では、73.6%が日本市場での課題に直面し、そのうちの半数以上が「日本市場に特化した戦略立案」を最重要の課題として挙げているという調査結果があります(以下参照)。さらにこの調査結果でより注目すべきは、75.5%の担当者の方が「日本のマーケティング戦略は、海外のマーケティング戦略と異なる」と回答している点です。

PR TIMES(株式会社 IDEATECH)

【外資系社員のマーケティング担当者106名に聞いた】73.6%が日本市場で課題に直面したことがあり、半数以上が「日本市場に特化した戦略立案」「日本市場のニーズ把握」に課題を実感

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000151.000045863.html

確かに弊社の肌感としても、これまで 20年余、翻訳やローカリゼーションというお仕事の中だけで振り返ると「日本は特殊な市場である」という話は何度も耳にする機会がありました。

では、具体的に何が違うのでしょうか。今回はデータと実例をもとに、海外で成功したマーケティング施策が日本で失敗する5つの構造的な要因を分析し、それぞれに対する実行可能な解決策を探りたいと思います。

【ギャップ1】日本企業の意思決定プロセスの構造的な違い

課題:「短期成果主義 vs 稟議制度」

最も見落としがちなのが、日本企業の意思決定プロセスでしょう。多くのグローバル標準では「決裁者にダイレクトにアプローチし、短期で成果を出す」ことが重視されますが、日本企業では稟議制度に基づく合意形成プロセスが根強く残っています。いわば日本式の意思決定プロセスです。

この違いは数字にも現れています。国内の公開調査では、選定に関与するメンバーは「4〜5名」、最終承認者は「2〜3名」が一般的で、検討期間は「1〜3ヶ月が最多」と報告されています(大規模案件ではさらに長期化)。これが一般的な意思決定プロセスとすれば、確かに「時間がかかる」わけです。

解決策:段階的な合意形成プロセス

効果的なアプローチは以下の3段階に分けてクライアントの合意を獲得する必要があります。逆にこのプロセスを辿ることで合意を得やすくなるとも言えます。

フェーズ期間内容
第1段階情報収集フェーズ数週間~数か月・現場担当者向けの詳細な技術資料、機能比較表、ROI計算ツール等を提供

・「上司への説明用資料」として、プレゼンテーション素材をセット

・競合比較や業界動向を含む、包括的な情報パッケージを準備
第2段階社内検討フェーズ数ヶ月〜四半期単位・各部門(IT、調達、法務、セキュリティ)向けの専門資料を個別に準備

・段階的な導入計画と予算分散などの提案

・他社の導入事例と失敗回避策を詳細に提示
第3段階最終決定フェーズ案件と稟議の層数に依存・経営層向けの戦略的な価値提案

・導入後のサポート体制とリスク管理計画

・段階的な成果測定指標の設定

成功事例:Salesforce の長期にわたる関係構築のアプローチ

Salesforce は日本市場への参入当初、アメリカ式の短期クロージングアプローチで苦戦していました。しかし、2010年以降、前述の日本企業の意思決定プロセスを理解し、以下の施策を実行しました。

  • Trailhead プラットフォーム:無料学習コンテンツを提供し、現場担当者の理解度向上を支援
  • 段階的な導入プログラム:小規模パイロットから始める低リスク導入モデルを確立
  • 業界特化型アプローチ:製造業、金融業などの業界ごとの特殊な状況や事情にも対応

これらのプロセス変更により、徐々に日本市場に受け入れられるようになり、Salesforceは日本を含むアジア太平洋地域においても、CRM市場シェア1位となるなど評価が上がっています。

Salesforce、12年連続で世界No.1 CRMプロバイダーに選出

【ギャップ2】コミュニケーション文脈の誤解

課題:ダイレクトメッセージング(ローコンテクスト) vs 間接的表現文化(ハイコンテクスト)

欧米のマーケティングでは「明確な価値提案」「ストレートなベネフィットの訴求」が非常に効果的ですが、日本ではこのまま適用すると「過度な売り込み感」「押しつけがましい」として敬遠される傾向があります。この文脈を理解しないまま、販売活動を続けても成果に結びつきにくくなります。

解決策:文脈を理解した日本的なコミュニケーション

日本では「売り込まれている」「押しが強い」といったスタンスではなく、「お客様のために」「お客様の役に立つ」といった効果的なコミュニケーション戦略をとる必要があり、これはセールス、マーケティング部門では必須の考え方となります。

コミュニケーション戦略具体的な施策
コンテンツのトーンの調整・「革命的」「画期的」などの過度な形容詞を避けたり、「改善」「効率化」などの現実的な表現を使用するようにする

・ベネフィットより先に、顧客の課題共感を示す

・具体的な数値データより、「お客様の声」を重視
情報提供スタイルの変更・セールス色を抑えた「情報提供セミナー」形式

・「業界の動向レポート」として価値のある情報を先に提供

・「相談対応」「課題解決サポート」としてのポジショニングをとる
フォローアップアプローチ・頻度の高いフォローより、タイミングを見計らった価値ある接触に重点

・季節の挨拶や業界イベントに合わせたごく自然なコミュニケーション

・一方的な情報提供より、双方向の意見交換を重視(対話)

成功事例:マイクロソフトの「お客様第一主義」ローカリゼーション

マイクロソフトは2014年の新CEO就任を機に、日本市場でのコミュニケーション戦略を大幅に見直しました。いわばローコンテクストからハイコンテクストへのシフトです。

コミュニケーション戦略

Azureは2015年時点で既に国内2位(AWS 1位、Azure 2位、Google 3位)との調査があり、2020年の利用率調査でも国内2位という結果が出ています。

https://business.ntt-east.co.jp/content/cloudsolution/column-374.html

【ギャップ3】競合環境の認識

課題:グローバル競合想定 vs 国内ベンダーとの競争

多くの外資系IT企業は、グローバル市場での競合他社(GAFA、Oracle、SAP等)を想定したポジショニングを行っています。しかし、実際の製品選定タイミングにおいて日本市場では国内ベンダーや日本独自のSaaSベンダーとの競争が重要な要素となることが隠れてしまうことがあります。

解決策:日本市場での独自の競合マッピングと差別化戦略

日本市場を理解するための様々な「競合」を把握することが重要ですが、日本市場に特化した競合分析フレームワークを用いて様々な角度から分析を行っていきます。

競合分析補足説明
技術的な競合相手・他社グローバルIT企業
※これが従来の競合分析
関係性の中での競合・既存の国内ベンダーや SIer
現状維持としての競合・自社開発で解決したり、既存システムをそのまま使用(延命措置)する
代替手段による競合・他部門での課題解決や外部への業務委託による投資による回避

このように、外資系IT企業だからこそ持ちうる様々なリソースと日本企業の特徴を掛け合わせることで、新しいマーケティング戦略を生み出すことができます。

戦略設計補足説明
グローバル標準の技術力 × 日本市場への理解度外資系IT企業が保持する高い技術力を武器に、日本市場や日本企業文化を理解した方法でのアプローチ設計が重要。
本社リソース × 現地サポート体制の充実外資系IT企業の潤沢なリソースを活用し、きめ細かい日本企業へのフォローやアフターサポート、フォローアップ。
コスト競争力 × 導入リスクの最小化強い資本力から生まれる価格競争力とクライアントにとっての導入リスク(価格、品質など)をカバーした戦略

成功事例:Salesforce の国内 SIerとの協業パートナー戦略

Salesforce は当初、直販モデルで日本市場に参入しましたが、国内ベンダーとの競合で苦戦していました。そのため、2012年以降、戦略を以下のように転換しました。

協業パートナー

これらの方針転換により、Salesforce は日本市場で大きくシェアを獲得することができました。また、IDCの経済効果分析では日本におけるパートナー収益率(Salesforce 1ドル当たり)が7.07倍と推計されています。

2019年から2024年の間に、日本で1,090億ドル以上の新規ビジネスと、 約20万人の新規雇用を「Salesforceエコノミー」が創出

【ギャップ4】購買影響者の見極めの失敗

課題:決裁者重視 vs 現場担当者の影響力

欧米では「Decision Maker(意思決定者)」へのダイレクトアプローチが効果的ですが、日本企業では現場担当者の意見が意思決定に大きな影響を与えることがあります。そのため、現場担当者の理解をどのように得られるかがポイントになります。

解決策:日本企業における購買影響者マッピングを行い、アプローチする

日本企業での意思決定プロセスにおいて現場の担当者の共感と理解を得ながら、経営までの意思決定をスムーズに運ぶためためのいくつかの階層を通過しなければなりません。それぞれのポジションにおける評価ポイントを確認しつつ、営業マーケティング活動を進めます。

階層影響度属性特徴や評価ポイント
エンドユーザー実際の利用者、現場担当者・日常業務への影響を最重視
・操作性、利便性および学習コストを評価
技術者、技術検証者中~高IT部門のシステム管理者やエンジニア・技術的な妥当性やセキュリティ面、運用負荷などを評価
・既存システムとの連携性を重視
業務の責任者部門長、マネージャー層・業務効率、コスト効果を評価
・導入による組織への影響を考慮
経営中~決定権役員、CIO等・戦略的価値、投資対効果、信頼度を評価
・最終的な予算承認権限を保有

段階的なエンゲージメント向上を狙う

以下のプロセスに則って、購買者に対しそれぞれの訴求ポイントを中心に、プレゼンテーションを重ねていかなければなりません。
成功事例:Adobe の現場主導型の導入支援

Adobe Creative Cloudの企業向けの展開では、従来のトップダウンのアプローチから、現場主導型に戦略を転換し成功を収めています。

現場担当者エンゲージメント

これらの施策により、Adobeは国内「グラフィックスソフト」部門でBCN AWARD(量販POSベース)最優秀賞を獲得し、同カテゴリでの強い地位が証明されています。

【ギャップ5】投資時間軸のミスマッチ

課題:四半期での成果 vs 長期関係構築の重要性

外資系IT企業の多くは四半期ベースでの短期の成果を求められますが、日本市場では長期的な関係構築が売上に大きく影響するため、それらを無視してのビジネス推進は長期的には拡大が難しくなります。

解決策:段階的なROI測定と長期投資のバランス

例えば、以下のように短期から長期のそれぞれの目標設定および、投資バランスなども設定しておくことで、短期的な目標を満たしつつ、長期の関係構築も進められるようになります。

短期成果指標(3-6ヶ月)中期成果指標(6-18ヶ月)長期成果指標(18ヶ月以上)投資配分の最適化(例)
・リード獲得数
・セミナー参加者数
・パイプライン金額
・検討段階進展率
・受注金額
・継続契約率
短期成果:40%(リードジェネレーション、イベント等)
・ホワイトペーパーダウンロード数・パートナー紹介案件数・顧客生涯価値(LTV)の向上中期成果:35%(関係構築、パートナー開拓等)
・初回商談 創出件数・既存顧客エンゲージメント向上率・口コミや紹介による新規開拓長期成果:25%(ブランディング、思想リーダーシップ等)

成功事例:Oracle の10年投資戦略

Oracle は1990年代の日本市場参入時、短期的な売上追求で苦戦しましたが、2000年以降、長期投資戦略に舵を切りました。

長期投資

日本企業は一度信頼関係をしっかり築いてしまえば、契約更新なども見込めるため「損して得取れ」という発想が必要になります。Oracle はそういう点では日本市場を深く理解したからこそ成功したと言えるでしょう。

実践のための5つのアクションプラン

前述のように日本市場に合わせた(ローカライズされた)マーケティング戦略が必須ですが、具体的に明日から実践可能なアクションプランをご紹介します。この順番で戦略設定からスタートすべきであり、最適なパートナーとともに進めていくことが求められます。

5つのアクションプラン

まとめ:日本市場での真の成功に向けて

いかがでしょうか。海外で成功しているマーケティング施策や手法が日本で失敗してしまう要因は、決して日本市場の「特殊性」や「閉鎖性」が理由ではありません。

むしろ、日本企業の合理的な意思決定プロセス、リスク管理重視の姿勢、長期的な関係性を大切にする企業文化を正しく理解し、それに適応したマーケティング戦略を構築することが重要だと言えます。

外資系企業にとって重要なのは、グローバル本社のリソースと日本市場の特性を組み合わせた「ハイブリッド戦略」の構築です。技術的優位性やグローバル実績という強みを活かしながら、日本企業の意思決定プロセスや購買行動に適応したアプローチを取ることで、将来を含めた持続的な成長を実現することができます。

今回ご紹介した5つの要因と解決策は、多くの外資系IT企業が実際に直面している課題への実践的なアプローチと言えます。まずは完璧を求めるより段階的に実装し、継続的な改善を通じて日本市場でのビジネスを加速しましょう。

日本市場は確かに独特ですが、それは同時に、適切にアプローチできれば長期的で安定した収益を生み出す魅力的な市場でもあるということです。外資系企業というポジションを上手に活用しながら、日本市場での存在感を増すためのマーケティング活動をお勧めいたします。

「品質と価格は比例する」と言い切ったお客様の話

ある外資系企業のお客様がおっしゃっていました。

「私は品質と価格は比例すると思っています。だから価格が上がるのは問題ありません」

という発言をされました。(それまでの文脈は割愛)

もちろんですが、その通りと感じましたが、こういったことをなかなか面と向かって言うことも少ないのではないでしょうか。

また、実際にはそれが分かっていても実行できないケースや状況が(残念ながら)存在するのも事実でしょう。「そんなことは綺麗ごとだ」という意見もあります。

それでもハッキリと断定したこのご担当者様には、ご自身のお仕事に対する非常に強いポリシーを感じましたし、弊社をパートナーとして見ていただいているのだという良い意味でのプレッシャーを受けました。とにかく安ければいいという風潮もある中で、実際には胸が熱くなるようなシーンもありました。このお客様の言葉をお借りして、品質が高ければ価格が高いのは当然であること、またその逆も然りであることを改めて考えてみたいと思います。

「品質」とは何か

価格が品質によって決まるとするならば、まず先に「品質の定義」が必要となります。

※すべての業界、すべての企業で品質の定義をしているでしょうから、その解釈には多くのパターンがあると考えられます。

弊社の場合、品質とは、お客様が「望んでいるとおりのものを得る」状態のことを指しており、以下のコンテンツでより詳細の説明(定義)をしておりますのでご確認ください。

翻訳、ローカライズの品質とは

さらに、これらの品質を確保するために弊社では「良い品質の翻訳とは」というページも作成、公開しておりますので合わせてご覧ください。

トライベクトルが考える「良い翻訳」とは|翻訳会社トライベクトル

※「品質」は訳文だけの話ではなく、対応品質なども含まれています。

※今回のご担当者様の発言は、この「ご担当者様がご希望のモノやサービス」通りに、または「希望以上のモノやサービス」をお届けしたあとのご感想です。

「価格」よりも「価値」を考える

品質が高ければ後から価格があがりますということを言いたい訳ではありません。またそういうケースはかなりレアでしょう(詳細は伏せますが、今回はそういうことが可能なお仕事だったというだけ)。

よく「価格」ではなく「価値」を考えなさいと言われます。価値とは何でしょうか。あまり難しく考えるよりも、自分がモノやサービスを購入することを想像してみます。

モノやサービスを購入する決断をするときには価格を見ます。しかし、価格を見る以上に見ているものがあります。

「価格に納得できるとき」というのは、「これを買ったら自分の課題や悩みが解決できるかも」と思うときです。価格の向こう側にある「自分が得られる価値」を想像するのです。

そして実際にそれが解決したら「ああ、良い買い物をした」と思うのです。逆に「期待外れ」だった場合には二度と購入されることはありません。

つまり、買い手にとっては「そのモノやサービスの価値を見出すことが大切」ということですし、売り手にとっては正しく価値を伝えることが大事になってきます。

「迷う理由が値段なら買え、買う理由が金額ならやめとけ」

という言葉もあります。つまり、値段(価格)を基準にして判断してはいけないという意味です。「安いから買う、高いから買わない」のではなく、「自社にとって価値があるかどうか=自社が課題解決できるかどうか」が基準であるべきということでしょう。

「品質=お客様にとっての価値が高い=課題解決できる」であるならそれは当然買うし、(仮に高かったとしても)買いますということです。これは誰しも経験があるでしょう。

価格を考えるのではなく価値を考えるというのはこういうことです。

「品質が高い」は「価値が高い」

このように考えると、「品質が高い」という言葉は「お客様にとっての価値が高い」という意味になります。例えば、これを無視して「自分が作ったものは最高だ」と言ったところで、それはビジネスではあまり意味がありません。

ビジネスにおけるプロフェッショナルは、お客さまの課題をしっかりとヒアリングし、それについての改善案を提案し、共に伴走する人のことです。

医者ならばきちんと患者さんの病状を把握し、できる限り相手に負担をかけず、時には激励したり、寄り添ったりしながら最適と思われる治療方針を出し、伴走していくのと同じでしょう。

腹痛を訴えている患者さんに何も確認せずに「この薬を飲みなさい」という医者はいません。しっかりと相手の話を聞き、かつプロとしての視点から改善方法を模索しつつ、提案を繰り返していくからこそ患者さんは安心して任せることができるのです。もちろん、病状からの回復が最大の価値であることは言うまでもありませんが、そこに価値があるのです。

今回の外資系企業の担当者様はこれらの基本的な、でもとても大切な構造をしっかりと理解した上で発言をされていらっしゃいました。だからこそ非常に納得感が強かったわけです。

「価値」はどういう人や企業と付き合うかの基準にもなる

一転して、数年前にこのような記事を書きました。

「翻訳なんて誰がやっても一緒」だが、誰もが「言葉に魂を込めている」ものを求めている

こちらのエピソードも大変驚いたのでよく覚えていますが、今回の担当者さんは、この記事に登場する部長さんとはまったく真逆の発想だと言えます。

ただ、よく考えると要求水準は今回のお客様のほうが高いのです。

なぜなら「私たちが要求する品質のものを出してください。それができれば価格が上がるのは問題ないが、逆にその品質が出せないのなら価格は下がりますよ」と言っているのと同じことだからです。またもっと言えば「価値がないなら取引自体がありませんよ」ということでしょう。

(もしかしたら、一見厳しそうに見えた以前のお客様の方が「翻訳なんて誰がやっても一緒」と思っている分、品質への評価基準がブレている可能性があるため、あまり細かいことを言わないのかもしれません)

いずれにせよ、弊社の提供する言語サービスについてある一定の価値を見出してくださっているお客様である以上、弊社も毎回真剣勝負でお仕事をしています。

重要なのは「価格優先なのか、価値優先なのか、それは担当者 個人としての考えなのか、企業としての考えなのか」といった様々な要素がある中で、「何を課題として持っていて、どういう解決策がお客様にとってベストなのだろうか」ということをもっと真剣に考え、提案しなければならないですし、こういった考え方を持つためには、そもそも自分たちが何を大切にしたいと思っているのか、どう有りたいと思っているのかといった根本の思想が問われているのだということです。

どういった企業と取引をするのか/付き合っていくのかは、まさにこの部分(価値基準)に根差すものであるべきです。そうでなければ「翻訳なんて、通訳なんて、英会話なんて、誰がやっても一緒でしょ」という言葉に流されてしまいます。

まとめ

お客様の要求水準を満たす/超えるために、様々な側面からサービス品質を上げてお客様の課題を解決しようとする(価値)という行動は、長期的に見てお客様との信頼関係をより強固なものにし、また仕事の拡大を促す大きなドライバーになります。

このように(顧客にとって)価値があると感じるものにはそれなりの理由があるということです。そしてそれを無視して「誰がやっても一緒」なんてことはあり得ないということでしょう。

これまで以上にもっともっと努力しなければならない、身の引き締まる思いでした。