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そのフィードバックは大間違い?訳文の品質を向上させるためのフィードバックとは

スタッフSです。

翻訳の仕事では、お客様とのやり取りが複数回にわたることもありますが、それは訳文をお客様のご希望の形に合わせていくためであり、「お客様がご希望の訳文品質」を作ることにほかなりません。

翻訳の目的は、お客様のチェック作業が楽になり、最終的には翻訳業務をアウトソースするコストパフォーマンスが向上することでしょう。

翻訳は「手段」であって「目的」ではない

そのためにはこの一連の「フィードバック」をしっかり定義しておく必要があります。

今回は、納品後の「フィードバック」について、翻訳会社の視点とお客様の視点の両方から見ていきたいと思います。

そもそもフィードバックとは

フィードバック(FeedBack)とは、もともと制御工学で使われていた用語で、出力された結果を入力側に戻し、出力を調整することを指します。

派生して、あらゆる分野でフィードバックという言葉を使うようになりました。翻訳やローカライズにおいても、同様の意味でお客様からのご指摘やご指示というニュアンスで使用しています。

フィードバックは非常に重要なプロセスです。なぜなら、これは品質改善に直接影響するプロセスだからです。

一方、「アンケート」や「お客様の声」などがあります。作り手にとって第三者による使用感、感想といったものは製品やサービスの改善のヒントとなることが多く、あらゆる業界で「現場の声」「使用者の声」や「アンケート」などを重要視しているのは言うまでもありません。

お客様からの反応はどちらも大切なのですが、フィードバックの場合には、納品後に訳文を戻していただく時から活用することができます。

特に初めてのお取引となる場合にはとりわけフィードバックは不可欠な要素であり、フィードバックをもとにした品質改善を行うことで、次回以降の翻訳やローカライズの品質やサービスの向上に役立てることが可能になります。

つまり、「ここが悪かった」、「ここをこうした方が良いのではないか?」という点において、お客様から具体的な指示をいただければ、それらをすべて検証し、次回以降に生かすことができます。

間違ったフィードバックの方法

まずはじめに、間違ったフィードバックの具体的な例をあげてみましょう。

間違った形でフィードバックをしてしまうと、その内容によっては、かえってミスが発生する、混乱を招くなど、結果的にお客様にご迷惑をおかけしてしまうことも少なくありません。

もちろん、そういったことのないように翻訳会社側も努力していますが、どうしても確認事項が増えてしまったり、ご希望の形になるまでに時間がかかったり、またあまりご満足いただけないこともあります。

その典型的なフィードバックをご紹介します。

例1:手書きで原稿に赤入れする

翻訳会社から納品された原稿をプリントアウトし、赤ペンで修正箇所を記入した。それを翻訳会社へPDFで送った。

頻度としてはそれほど多くはないのですが、しかし未だゼロにならないのが手書きによるフィードバックです。紙の原稿のお仕事の場合、どうしても手書きになってしまいがちです。たしかに、校正やチェック作業というのは、印刷してから行う方が間違いを見つけやすかったりするのは事実ですし、修正箇所を手書きですぐに書き込めることは便利だと言えます。

しかし、実はこれをそのままPDF化してお送りいただくと、修正ミスや抜け漏れが発生しやすくなってしまうのです。

理由は3つあります。

ファイル内検索ができない

手書きの場合、ファイル内検索ができないため、似たような文章が多くあるときには、該当箇所の特定に時間がかかります。

手書きが読めない

これはなかなか申し上げにくい点ですが、修正指示が走り書きのような文字だったり、省略形で記入されていたり、修正範囲が曖昧な場合など、どこをどう直せばいいのかがハッキリしないものもあります。その場合、読めなかった箇所については再度お問い合わせすることになり、結果的にお客様にご迷惑をおかけすることも少なくありません。

修正指示をコピペではなく入力しないといけない

これもよくありますが、修正指示がデータであれば、いったんそれをコピペして確認することもできますが、入力しなければならない時にはタイプミスの可能性を発生させてしまいます。

これらは純粋に修正作業ということではなく、余計な時間がかかってしまうため、手書き原稿よりは、PDF等にコメント機能を使用してフィードバックしていただくほうがより効率的です。

例2:修正意図がわからず、充分な確認が取れない

納品された訳文(英語)を読んでいたら変更したい単語があったので、訳文を消して(上書きして)入力しなおしたファイルを翻訳会社へ送った。

お客様の社内で、英語の堪能な方やネイティブの方にチェックして頂くこともあります。当たり前の話ですが、ネイティブがチェックを行う方が精度は格段に上がりますし、修正したい単語があれば、単語を直接修正したほうが効率的です。

しかし、納品原稿を上書きしてしまうことはお勧めしておりません。

その理由は、弊社側では「なぜこの単語の方が良かったのか」、「どういう意図があって修正されているのか」が読み取れないためです。そうなると私たちが出来ることと言えば、「英語としておかしくないか」という観点でのチェックになってしまい、内容への理解は及ばないことになります。

以下の例をご覧ください。

正しい修正指示の入れ方の場合、「どんな意図をもって修正しようとしているのか」が明確なため、翻訳会社側にもその修正の妥当性が判断しやすくなります。

そうでない場合には、翻訳者は原稿から読み取れる情報や調査を行い、内容理解を深めた状態で翻訳作業を行いますが、お客様側で修正した箇所が、どのような意図で修正されたのか、どんな基準で修正されたのかが分からないと、どうしても「英語として不自然でないかどうか」という表面的な確認になりがちです。

例3:ファイルを上書きする

お客様側で上書きされたファイルをお戻しいただくと、「どの部分が修正されたのか」が分からないため、まずは場所の特定から進めなければなりません。これは非常に非効率で、例えば 100ページにわたるマニュアルの場合、100ページ分を納品時のファイルと比較しなければならないからです。

「どこを変更したのか」がはっきり分かる状態でお戻しいただく必要があります。

例4:仕様が変更になってしまう

原稿作成者とチェッカーが別で、仕様の共有が行われておらず、修正箇所が全文に及んでしまい、翻訳しなおすことになった。

チェッカーがプロジェクトの概要を理解せず(または知らずに)訳文をチェックする場合、どうしても主観性が大きく入り込んでしまいます。

仮にチェッカーから「納品された訳文が全く使えない」というコメントが入っても、実はそれには理由があったりすることも少なくありません。コスト削減のため過去の訳文を流用するような指示があったとか、また、産業翻訳の大前提である、「原文に忠実に」という作業許可を頂いていたのに、原文から大きく乖離した訳文に修正してしまったり、といったケースは枚挙にいとまがありません。

こういった事態の場合、最初の仕様の共有をするところから始まり、その上で、訳文をどう修正するのかの方針を改めてお客様と決めなくてはなりません。

プロジェクト中の仕様の変更は、品質だけでなく金額や納期に大きな影響を与えるため、極力避けるべきですが、チェッカーの方のご意向などが強い場合には修正箇所が全文に渡り、使う単語や表現などを大きく方向転換しなくてはならないため再度翻訳作業を行わざるを得なくなります。

これでは、作業時間もコストも大きく無駄になってしまいます。

翻訳では、使用用途や完成イメージを共有するということはとても重要なポイントです。例えば、日本語だけで考えてみても「見出し」と「本文」では役割が違います。

「見出し」は一目見て内容がわかる事を「本文」は情報を正確に伝える事を目的としています。

目的が違えば、言葉選びや表現が変わってくるのは当然ですが、こういった(ある種細かいことですが)仕様の変更は、訳文全体に大きな影響を与えることになりますので注意が必要です。また、これはどの言語でも共通の注意点です。

スムーズなフィードバックのための3つのポイント

ではどうすればスムーズなフィードバックができるのでしょうか。ポイントは 3つあります。

ポイント1:コメント機能を使用する

Word、Excel、PDFなどの納品したファイルには「コメント機能」または「変更履歴機能」を使い修正箇所を指摘する

正しい修正指示の方法

 

ポイント2:修正意図を記載する

修正意図(なぜ修正したいのか等)が明確にわかるように元の言語で記載いただき、その上で使いたい単語がすでにある場合は「元の言語+修正したい単語」とセットで記載する

ポイント3:仕様を共有する

複数名による作業(執筆者:日本人、チェック担当者:ネイティブスピーカーなど)になる場合は、完成イメージや目的を必ず社内でも共有する(同じ方針でチェックする)

あらかじめ決められるものはしっかりと決めておく(特にプロジェクトの根幹にかかわるもの)ことが重要です。

フィードバックはその重要要素のひとつでもありますので、以下の記事等もご覧いただき、フィードバックを送っていただく際の参考にしていただければと思います。

翻訳、ローカライズのフィードバックの重要性


なぜ「言い方ひとつ」「翻訳ひとつ」で伝わり方は変わるのか

仕事では誰しも「そんな言い方しなくたっていいのに」とか「そんな風に言われたら悪い気はしない」といった経験があるはずだ。

これは翻訳にも共通する部分でもあり、「話し言葉」だけでなく「書き言葉」も含めた言い方、表現というものを理解しておかないとどうなるだろう。もし「言い方ひとつ」「伝え方ひとつ」で相手への伝わり方が変わってしまうという厳然たる事実があるなら、それはきちんと理解しておかなくてはならない。

当然、あなたのビジネス成果にも直結する。

そもそも言い方で伝わり方は変わるのか

結論から言うと、言い方次第で相手への伝わり方(=相手の受け止め方)は変わってしまうのは間違いない。

例えば提案中の案件の失注の連絡をしたとする。営業マンが受け取ったメールはそれぞれこうだ。

「〇〇さん、おはようございます。ご連絡するのが遅くなってしまったのですが、先日のお見積りの件、諸々検討した結果、残念ながら他社さんにお願いすることになりました。せっかく色々なご提案をいただいたのに、本当に申し訳ないです。個人的には非常に良いご提案をいただいていたので、お仕事ご一緒出来たらといった期待もあったのですが、力不足ですみません。またこれに懲りずに次回以降、ご相談させていただいてもよろしいでしょうか。」

「〇〇さん、おはようございます。先日のお見積もりの件ですが、他社に決まりました。」

どちらも「失注の事実」は変わらない。しかし、前者のほうが経緯の説明や担当者の意図が見える。一方、後者はなんとなくバッサリ切られた気分になる。

いったいどちらが良いのかは一目瞭然だろう。

営業マンの立場からすれば、前者の担当者のほうが(仮にこの経緯が嘘だったとしても)お付き合いしたいと思うのは当たり前の話だ。「もっといい提案をしよう、もっとお役にたてるように頑張ろう」と思うハズ。

営業マンだって人間なのだ。ビジネスだから用件だけ伝えれば問題ないという点は、そこだけ切り取れば確かにそうだが、それだけでは何とも味気ない。

上記は極端な例ではあるが、似たような話は世の中にいくらでもある。どちらのコミュニケーションを採用するかで担当者から営業マンへの伝わり方、つまり営業マンの受け止め方は変わってしまう。

また次に見積依頼をしたとき、もしかしたら後者の場合は営業マンが断ってくるかもしれない。(もちろんそれでも構わないという場合もあるだろうが、今回は伝わり方の話なのでこのまま続ける)

「書き言葉」の場合も同様だ。翻訳では「対象読者」を想定して翻訳するのが常識。技術者向けの文書なのか、経営者向けの文書なのか、世の中のあらゆるドキュメントはその性質を持っているが、翻訳時にそれらを無視して杓子定規に翻訳してしまうと読み手にそのドキュメントの真意が伝わらない。

相手の性格やリテラシーに合わせた用語の選択や表現力というのが翻訳でも求められるわけだ。

間違った伝わり方をすると自分が損をすることがある

しかし、なぜこのように気を遣う必要があるのかそこには理由がある。それは、

「自分が損をすることがあるから」

だろう。

結局のところ、この理由が一番大きいかもしれない。(そんな人はめったに見かけないが)最初からケンカ腰にコミュニケーションをとれば、当然それは相手にもうつるので「何だこの人?失礼な人だな」と思う訳で、同じように(場合によってはそれ以上になって)返ってくる。

仕事もしていないのになぜか険悪なムード、ピリピリした雰囲気になってしまう。

また「翻訳あるある」とも言えるが、あるドキュメントを翻訳する際に、もっとも大切なのは「最初の一文を正確に翻訳すること」である。なぜなら仮に最初の一文が読み手にとって分かりにくいものになってしまうと、「この後の文章もすべて読みにくいのではないか」という心理が働き、疑いの目をもって読まれてしまうからだ。

一文目からすっきりと伝わりやすい翻訳であれば、そのままテンポよく読んでもらうことができる。こういったことは、あり得ないように聞こえるが、実際のビジネスの現場では起きていることだ。

そのコミュニケーションで失注する(ローカライズ編)

「話し言葉」も「書き言葉」も、そのコミュニケーションをサボればその分しっかりと「コミュニケーション負債」として自分に戻ってくるのだ。

翻訳や通訳の場合(翻訳は特に)、文字としてそのまま独り歩きしてしまうため、非常に注意して行わなくてはならない。いわゆる「表現力」が重要な作業だと言える。

コミュニケーションが適切に行われない場合、個人レベルではハラスメント、法人レベルでは訴訟といった最悪の事態に発展する可能性もある。たかが「表現」、されど「表現」なのだ。

どうすれば丁寧なコミュニケーションをとれるか

冒頭の例で、丁寧なコミュニケーションをとることは重要であることはすでに述べたが、ではそれを目指すときに具体的に何をすればいいのだろうか。

それにはいくつかのポイントがある。

相手への尊敬を持つ(相手の立場やリテラシーを知る努力をする)

まず大前提として重要なのは「相手への尊敬」を持つことだ。年齢も性別も関係ない。相手の仕事をリスペクトする気持ちがあれば、「自分ができないことをやってもらっている」という感謝の気持ちも湧いてくるはずだ。そういう視点があれば、ないがしろにはできないはずだ。相手も人間、機械ではない。

だからこそ「相手に丁寧に接しよう」という気持ちが湧いてくる。相手の立場に立つことはコミュニケーションの基本である。

※ただしこれは相手も同様に考えていることが重要。「適当に仕事を流す人」も世の中にはいるので、そういう人にはこの気持ちは伝わらない。大切なのは相手によって態度を変えるのではなく「自分がこの点をはじめから理解しておく必要がある」という意味。

ビジネスマナーとして「一貫した行動」に習慣化する

言い方を気を付けるにあたり、テクニック論ではないが、ビジネスをする以上、ビジネスマナーは大変重要でベースとなるもの。このビジネスマナーの一環として、だれに対しても同じような言葉遣い、同じような丁寧な表現をするのは大切だといえる。

このあたりは「5W1H」をしっかり守ることである程度の「型」は作れるので以下の記事を参考にしてほしい。

5W1Hはコミュニケーションの基本

しかし面白いことに「そこまでしないといけないの?」という意見もあるし、「何だか媚びを売るみたい」という気持ちすら湧いてくる。結果として「そこまでしてコミュニケーションを取りたくない」ということもある。

ただ考えてみてほしい。ある一定の成果を出す人はそういう感情抜きに、定型化して成果を出しているはずだ。何故なら、最低限のマナーを誰に対しても行うことが重要なのを知っているからだ。

日本語でも英語でもリーダーが信じる「言葉の力」

ビジネスリーダーがトップダウンでマネジメントするのはよくあることだが、それが偉そうな物言いだとしたらどうだろう。怒鳴ったり大声で話したりするリーダーに誰がついて行きたいと思うだろうか。

恐らく、尊敬されるリーダーというのは、謙虚で誠実、それでいて行動して結果を出す人ではないだろうか。

彼らは「言葉の力」を知っている。自分ひとりではこのビジネスを進めるには時間がかかりすぎるし、できないことを知っているからこそ、チームで仕事をしようとする。そのためには前向きな言葉、力強い言葉、スタッフの背中を押す言葉が何よりも大切なことを知っている。

同じ意味を伝えるときにどんな表現をすればいいのか、伝わりやすいのかを知っている。

例えば通訳で考えてみよう。ハリウッド俳優が来日したときに彼らの後ろに立っている通訳者さんはこの人、というイメージがあるだろうか。

通訳者さんは、ハリウッド俳優が話す英語を、相手に伝わるように適した表現を使って日本語にしているし、またその逆も然りだ。

弊社で提供している英会話サービスはその特化型ともいえる。英会話においても「誰」が話すかは超重要ポイントだ。

「あなた」が話すのか、「あなた以外」が話すのか

エグゼクティブが自分の言葉で話す理由

「お腹に入れたら何でも一緒でしょ」と何が違うのか

別の例えをしてみる。「おなかに入れたら何でも一緒だ」という言葉がある。これをコミュニケーションに置き換えたら、「どんな言い方をしようが伝わればいいだろう」という話だ。

確かに、食べ物も胃まで行けば嚙み砕かれているし一緒だろう。

でも、よく考えてほしい。

食事をするときには、お腹に入れる前、口元に運ぶ際には食感、匂いや色、味などすべて異なる。現実的にそれらを無視することができるだろうか。

だとしたら、お腹に入ってしまえば、美味しくてもそうでなくても一緒だとは言えないだろう。

一流のシェフには「お腹に入るまで」の優れたテクニックがある。それを含めて「美味しい」と感じるのだろう。「食材が新鮮であれば調理されてなくても美味しいから大丈夫」とはならない。料理の場合には各技術に対して金額を支払っている要素も強い。

そうであるなら(現実にはありえないが)、ビジネスの場において丁寧にコミュニケーションを取る人は、コミュニケーションスキルだけで料金をとれるかもしれない。相手を貶めるような表現をする人は、単純にお腹がいっぱいになればいい=伝わればいいと思っているわけで、それには当然料金は発生しないし、調理されていない食材を無理やり食べさせられたとしてクレームにすらなるかもしれない。

本当に自分の意図するところを相手に伝えたいのであれば、そのための「技術」は磨くべきだし、きちんと使用すべきだ。翻訳者や通訳者という職業がプロフェッショナルであり、指名制があるのは、そこに「伝える技術」のレベル差が明確にあるからだ。

具体的にどこに気を付けるべきか

ではどんなところに気を付けてコミュニケーションをとるべきだろうか。一覧にまとめてみたので参考にしてほしい。

ちなみに、翻訳では論理性を中心に様々な要素が重要だと考えられている。

トライベクトルが考える「良い翻訳」とは|翻訳会社トライベクトル

多くのコミュニケーション関連講座や話し方講座、翻訳の専門学校があるのは、それらが重要だと考えている人が大勢いる証拠だろう。

言葉の構造を知る

このように、「言葉」には意味と表現がある。

この図のように、同じ意味であっても伝え方(表現)を変えることによって相手の受け止め方や印象が変わってしまうのだ。

この構造が頭に入っていればテクニック的な側面から表現を増やすこともできるようになるし、いろいろな表現をストックできるようになる。言語は他者とのコミュニケーションツールなのだから、表現のバリエーションを持っておくことは双方にとって非常にメリットが大きい。

一方で表現よりももっと大切なポイントもある。

「何を言うか」よりも「誰が言うか」の功罪

これまでの内容を覆してしまうかもしれないが、「何を言うか」よりも「誰が言うか」のほうが重要なケースも実は非常に多い。

これは「ユニフォーム効果」「ハロー効果」も近く、簡単に言えば「権威性や実績がある人」の発言は正しさよりも重く捉えられるということだ。

この「誰が言うか」については、肯定的にも、否定的にも解釈できる。

『この世は所詮「何をいうか」ではなく「誰が言うか」』は完全に正しい。

ちなみにあの Google でさえ、権威性を重視している。「E-A-T」が品質評価に加わったのは有名だろう。

E-A-Tとは、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の3つの概念の略である。

https://www.irep.co.jp/knowledge/glossary/detail/id=10226/

検索品質評価ガイドライン(英語版)

https://static.googleusercontent.com/media/guidelines.raterhub.com/ja//searchqualityevaluatorguidelines.pdf

たとえば翻訳会社が翻訳のことを語るからこそ、その内容に説得力が増す。

「誰が言うか」+「どんな表現を使うか」の最強の組み合わせ

これまで見てきたとおり、自分の意思を伝えたいときには、

  • 「誰」になれる努力をする(権威性)
  • 表現のバリエーションを増やす(ストーリー性)
  • 相手への敬意を持つ

というポイントを理解し実践することが重要になってくるということだ。

「誰」になるための努力をすること

これは簡単には構築できないが、まずはしっかりと誠意をもって仕事をして結果を出す事だろう。結果が伴わなければどんなに素晴らしいことを話しても誰も聞いてくれない。

時間はかかるが、まずは結果を出すことにこだわる必要がある。

例えば、ワンピースのルフィやキングダムの信が、多くの苦労を重ね、成長していく姿を知っている読者からすれば(正しいかどうかは別として)彼らの言うことには一理あることが分かる。

「誰が言うか」は重要だ。

ストーリーがあること

どんな表現を使うのか、「言葉づかいと文脈」こそがストーリーを支える。どんなことがあってどんな展開になったのか、しっかりと説明できるかどうか。そして自分自身はどのように感じているのか、これからどうしたいのか。

そんなことを情熱をもって語りかけることができるかどうかが重要になる。

ルフィや信の立場での言葉遣いがあれば相手の共感度は増す。そうなれば、相手は話を聞く。

それでも「誰が話そうと、話の内容自体が正しくあるべきだ」という点

一方、「誰が話しても、話の内容自体が正しくなければならない」という意見もある。これもまさにその通りではあるのだが、前述のように、ほとんどの人は「何を言うか」の前に「誰が言うか」を見てしまう(見えてしまう)のは避けられない。

本当に伝えたいならこれまでのルールを改善しよう

このように、いくつかのポイントがあるが、まとめると以下のようになる。

面倒くさいだろうか?しかしビジネスではこれらが日常的に行われているし、無意識にできていることも多いはずだ。弊社の翻訳サービスにおいても「対象読者」や「ドキュメントの性質」を理解して仕事をすることが重要であることは何度でも伝えたい。

このように、普段、無意識だった部分を意識することができれば、より一層のコミュニケーションの達人になれるかもしれない。

お互いに気持ちよく働き、お互いに成果を出していくことができれば、これらは努力に値するのではないだろうか。


そのコミュニケーションで失注する(ローカライズ編)

BtoB の仕事は BtoC に比べて金額も大きく、また仕様も複雑になりがちだ。関わる関係者も多くなる。そこには当然 BtoC とは異なる難しさが存在している。

法人営業としてクライアントと接する際や、また逆の仕事を発注する立場などを経験すると、明らかに仕事をする前の「コミュニケーション」によって、自ら失注率を高めているのでは?と思いたくなるケースがある。

もったいない上に誰も得しないコミュニケーションは、お互いを不幸にする。ではいったいどうすれば失注するコミュニケーションを回避できるのだろうか。

今回は翻訳業界や翻訳会社でもよくある「ローカライズ」業務を参考に解説する。

担当者からの問い合わせ

xx ネットワーク株式会社の Aさんは、先日、自社製品のローカライズプロジェクト(新事業)の責任者にアサインされた。彼はまだ若かったがこれまでの活躍が社内でも評価され、ある一定の信頼を得ていた。

そのような経緯があったため経営陣は彼に新事業の立ち上げを任せることにした。

xx ネットワーク社としても、A さんとしても本格的なローカライズ事業は初めての取り組みのため、まず A さんはしっかり協力してくれるであろうパートナー企業(翻訳会社)を探すことにした。このパートナー企業の選定によってプロジェクトの成否も変わってくるだろう。

A さんは、早速プロジェクトに関連するキーワード「ローカライズ」を並べて Web 検索したところ、2社ほど良さそうな企業が見つかった。

すぐに A さんは問い合わせのメールを送った。

ご担当者様

いつもお世話になっております。私  XX ネットワーク株式会社の A と申します。この度、弊社の新事業である「ZZZZZ プロジェクト」のローカライズにあたり、ご協力いただけるパートナー様を探しているところです。

ご多忙のところ大変申し訳ありませんが、貴社のローカライズ事業について詳しくお聞かせいただけないでしょうか。ご連絡お待ちしております。

どうぞよろしくお願いいたします。

その後、C 社と D 社の二社からすぐに返事をもらうことができた。コロナ禍のため、まずは電話で話をした。

「お問い合わせありがとうございます。C 社の鈴木です。よろしくお願いいたします。早速なのですが、お問い合わせいただいた貴社の新事業についてお聞かせいただけますでしょうか。」

「はい、ありがとうございます。実は弊社でも初めての取り組みになりまして、ローカライズをお手伝いいただける企業様を探しておりまして・・ただ、初めてで色々分からないこともあるので、その辺も相談に乗っていただけるようなパートナーさんと一緒にできたらと考えております。」

「なるほど、ちなみに納期はいつでしょうか?」

「はい、こちらは3か月後をターゲットにしています。」

「なるほどー、それだとすぐに始めないと間に合わないですね!」

「あ、そうなんですか?3か月あるからまだ多少なりとも余裕あるのかなと思ってたんですけど。。。」

「いえいえ、それまでにやらないといけないこともありますので、なるべく早くご発注いただいた方がいいですね」

「え?ああ、発注はまだできませんが、急がないといけないのですね。分かりました」

この電話では、Aさんは、テキパキした営業マンだなと感じた。するとタイミングよく、今度は D 社からも電話がかかってきた。

「いつもお世話になっております。D 社の佐藤と申します。この度は弊社にお問い合わせいただきまして誠にありがとうございます。

「いえ、こちらこそありがとうございます。実は、弊社でも初めての取り組みとなるのですが、ローカライズをお手伝いただける企業様を探しておりまして。。。分からないところもあるので色々ご相談できると大変ありがたいのですが。。。」

「なるほどそうなのですね。かしこまりました。そうしましたら、一度詳しいお話をお伺いできればと思いますので、お伺いして詳細をお聞かせいただくか、もしくはZOOM等でのご面談のお時間を頂戴できればと思うのですが」

「ありがとうございます。あいにく世の中がこんな状況ですので、御来社いただくのはリスクがありますし、弊社も現状、こちらからの訪問も禁止していますので、 ZOOM でお願いできますでしょうか。」

「かしこまりました。では、別途 ZOOM にてお打ち合わせさせていただけますと幸いです。それでは日程ですが・・・・」

A さんは D 社の営業の電話を切った。こちらも丁寧な感じだったし、安心もできそうだ。ただ、あえて言うなら C 社の営業マンに比べたらスピード感は多少劣るかな・・・という点だけは片隅に置いておこう。

A さんは、後日 D 社の営業マンと打ち合わせをした。その際には、「希望納期」「作業の仕様」「予算」「プロジェクト立ち上げの経緯や背景」などを聞かれ、できる範囲で(もちろん言えないこともあるが)回答した。

打ち合わせ中、C 社のことをふと思い出し、D 社の営業マンに聞いてみることにした。

「あのー、他社さんは、すぐに発注してもらわないと間に合わないっておっしゃってたんですが・・」

「ああそうですね、確かに3か月と言うのは意外と短いので余裕があるかと言えばそうでもありません。ただ、急がないといけないかどうかは私には分かりかねます。ほかの翻訳会社さんのお考えもあると思いますので。。。。」

「まあ、そうですよね・・・」

今回は初めてのことばかりで、A さんとしても、それぞれの考え方が違うのかなあという印象を持っている程度だった。いずれにしても、まずは両社から見積をもらうことにした。

しかし、後日、ローカライズの仕様がはっきりしたことで見積書を作ってもらう予定だったが、D 社ではすぐに対応できない箇所があることが分かり、その件について D 社の営業マンから謝罪の連絡があった。

「大変申し訳ありません。お伺いしていた内容だけでしたら問題ないのですが、実はその中にある XXX という工程とそれに付随する作業が、現在の弊社ではすぐに対応ができない状態でございまして、お役に立ちたいのは山々なのですが、ちょっと今回の条件では難しいかと・・・」

「そうなんですか・・・確かにお打ち合わせではこの辺りはきちんとお伝えしていなかったですね。こちらこそ申し訳ありません」

「いえいえ、とんでもありません。私こそ、きちんとお聞きしておくべき個所だったと深く反省しております」

A さんは残念ながら D 社では対応ができない部分があるということで、C 社の営業に連絡をした。念のため、D 社ができないと言っていた XXXXの部分について C 社の見解を聞きたいと思った。

「お電話ありがとうございます!」

「先日はありがとうございました。この間お話しした中で、XXXX の部分を詳しくお伝えしていなかったと思うのですが、貴社ではこの部分の対応は可能でしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「あ、そうなんですか。じゃあ安心ですね」

「はい、それよりも A 様、この間もお伝えしたとおり、時間があまり有りませんので、一刻も早くローカライズ作業を進めさせていただけないでしょうか」

「はい、それは分かるのですが、他にも社内で確認事項がありますのでお待ちいただけますか?」

A さんは、とにかく C 社が急いでいるのを強く感じた。

翌日。A さんは社内のプロジェクトチームに現状報告をしたところ、メンバーからいくつかの質問が出てきた。指摘された点は、確かに彼らの言うとおり、ローカライズ上できちんと抑えておかなければならない部分だ。ローカライズは「現地の商習慣や文化など」に合わせていくため、単純な翻訳になってはならない。

初めての内容で、自分自身も詰め切れてなかったなと反省しつつ、そうは言っても会社としても失敗はできないプロジェクトのため C 社さんに聞いておいた方がいいだろう。すぐに確認しようと思った。

このあたりは C 社さんはどう考えているのだろう。大丈夫なのだろうか。

「そういえば C 社の営業マンはあまり質問自体がなかったな・・・」と気づいた。

しかし、これは自分たちが分からないだけで、彼らは経験豊富で、元々対応可能だから聞いてこなかった可能性もあり、一概に何とも言えない。

そこで、A さんは、再度気になる点をまとめてメールした。これできちんとした回答をもらえれば、安心だし、自分の取り越し苦労に終わるだけだ。

C株式会社 鈴木さま

XX ネットワーク株式会社の A でございます。先日来、ご相談の件ですが、社内会議を行いましたところ、以下の質問が出てきてしまいました。弊社としてもこの点は重要と考えているため、ご多忙のところ大変申し訳ないのですが、以下についてご教示いただけますでしょうか。

1. ローカライズにおける注意点について

2. 製品内の記載、記述方法について

3. 翻訳の方向性(市場を理解する)について

上記につきましてご回答をいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

翌日、C 社からの回答があったのだが、3つの質問に対して 3つの回答があったのではなく、2つまでしか答えを聞くことができなかった。不思議に思った A さんは仕方なく、C 社の営業マンに電話をした。

「お世話になっております。先日メールでお送りした質問の件ですが、ご回答いただきありがとうございました。ただ 2番に対してのお返事が含まれていなかったのですが、これは何か意図があるのでしょうか。」

「いえ、こちらはご不安にならなくても大丈夫なので、お返事していませんでした」

「え?あ、そうなんですか。。。でもこちらとしてはそれを理解しないと進められないですし、また私も上司に説明をしないといけないので。。」

「失礼しました。そのあたり Aさんはご理解いただけると思いましたので」

「いや、申しわけないのですが、分からないのでお聞きしている訳ですからそれは教えていただかないとさすがに難しいですよ」

「でも、前からお伝えしている通り、納期があるのですぐにスタートしないと本当に間に合わなくなっちゃいますよ?」

「いや、そういう問題ではないですよね?私も最初にお伝えしましたが、弊社としても初めてのローカライズプロジェクトなので、御社にとってはお手間かも知れませんが、きちんと確認しておきたいということはお伝えしているハズです」

「・・・・。」

「ですからお忙しいとは思うのですが、お送りさせていただいた質問のご回答をいただけないでしょうか?」

「・・・分かりました。ただ、私どもも今回の貴社のプロジェクトに携わらせていただく上で色々準備もありますし、貴社のためにすでに社内でも多くの時間を割いております。これ以上のやり取りは正直厳しいですし、納期に間に合わなくなってしまうのですが」

「え?どういうことですか?私はまだ何も作業はお願いしていませんし、発注書もお送りしていません。仕事を進めるために絶対に必要な仕様を決めるのに、確認するのは当たり前の話ですよね?」

「私どもも今世の中がこのような状況ですからデジタルシフトされているお客様からのローカライズのご相談が多く、私も1社でも多くのお客様のお役に立ちたいと思っているんですが、貴社とのやり取りの時間が増えてしまっていて、これ以上は時間取れないのですよ」

「いや、何をおっしゃってるのでしょうか?弊社としては不明点をきちんと潰してからでないと、仕事をお願いできないですし、それは普通のビジネスでは当たり前ですよね?違いますか?それとも、貴社にとって他社さんは余計な質問もしないし、すぐに進められるから都合がいいということですか?」

「そこまでは言っていません。ただこれ以上のやり取りはもう時間がないのでできませんと申し上げているだけです」

「いや、だから、メールでお送りした3つの質問にすべて回答していただければそれでいいじゃないですか」

「すみません、私ちょっとこれから別のお客様のアポイントがあるので電話切らせていただきます」

「え?どういうこと・・・・」

ガチャ。

電話はそこで切れた。A さんは茫然とした。 ビジネスをしていてこんな風にガチャ切りされたのは初めてだった。自分がいけなかったのか?しかし、仕様が確定しなければ見積だって適切なものではないだろうし、何よりそんなものでは稟議も通らないし上司にも説明できない。このプロジェクトにアサインされた責任がある。

「質問に答えてくれない理由」を聞いただけなのに、なぜか逆ギレされて電話を切られた。まったく意味が分からない・・・

失注するコミュニケーション

上記の例は分かりやすくするため多少の脚色はあるが本当に起きた話だ。ビジネスの世界でというより社会人としてガチャ切りされるようなことは、基本的に起きない。そんな稚拙なやりとりは通常発生しないだろう。

EC サイトのようにネット上で注文まですべて完結できるのであれば、営業マンとのやり取りは不毛だが、今回はそうではない。A さんは「初めてローカライズに取り組むことなので色々相談しながら」と言っており、C 社も D 社も、Aさんや xx ネットワーク社にはこの分野についてあまり多くの知識を持ち合わせていないということは事前に分かっていたはずだ。

だからこそ、D 社の営業マンは丁寧にヒアリングをし説明をしていった。確かに途中、対応できない工程があったのは残念だが、A さんと一緒に考えてくれて誠実に話をしていた。

一方、C 社の営業マンは「とにかく早く発注してください」の一点張り。細かい話はしない。本当にこんな営業マンに当たったら怖くて発注なんてできないのは明白だろう。

まさにこれが「失注するコミュニケーション」だ。

  • クライアントの質問にきちんと答えない(ローカライズに関しての疑問点を聞いても回答してくれない)
  • 都合が悪くなると話をすり替える(納期の話ばかりをする)
  • しっかり確認をせずに「大丈夫」しか言わない
  • クライアントへのヒアリングが甘い(仕様をきちんと確認していない)
  • 最終的にクライアントの無知のせいにして逆ギレ

このようなことをすれば、発注前から容易にトラブルが起きることが想像できるはずだ。

あなたの命を預けるに値するのか

別の例で考えてみよう。もし今回のようなコミュニケーションを医療に置き換えてみたらどうだろうか。あなたは患者で知識もない。この先どうなるのか、どうすればいいのか分からない。しかし日に日に痛みだけはひどくなってくる。

そんな状況で病院に行ったとする。その際の医者から「これは手術ですね、しかもすぐにやったほうがいいので、今からやりましょう」とだけ言われたらどう思うだろうか?

  • いったい何が起きているのか
  • なぜ手術するのか
  • 何の病気なのか
  • 本当に手術は最善なのか

などなど、疑問だらけのはずだ。家族にも相談しなければならない。会社にも連絡しないといけない。万が一のことも考えないといけない。。。

そんな色々な不安が一気に押し寄せてくるのに、医者は「3時間後には開始したいと思いますのでこの書類にサインを」と言ってくる。

あなたはパニックになるだろう。

それでもあなたはこの医者の言う通り、手術をしようと思うだろうか?

あなたはあなたの命をこの医者に預けようという気になるだろうか。

なぜこんなことが起きるのか

実際、なぜこういったことが起きるのだろうか。恐らく C 社の営業マンはどこかでクライアントを「下に見ている」可能性がある。

「分からないところを手伝ってやってるんだから、黙ってオレたちのいうことを聞いていればいいんだ」

という心理が(無意識であったとしても)働いているからこそ、誠実に回答しないし、「分かったから早く発注してくれ」というトークになるのだろう。

確かに C 社や、上記の医者も専門家でありプロフェッショナルなのかもしれない。ローカライズ実績や手術件数も多く、任せたらきちんとしたものを仕上げてくれるのかもしれない。

しかし、今回のクライアントや患者は初心者だ。その初心者も安心してお願いできる(お願いしたい)ように説明を加えないのは、単純にクライアントをバカにしているだけだろう。

「説明をしなくてもできるから大丈夫」という態度があからさまに出てしまっているため、クライアントはそっちに引っかかってしまうし、残念ながら C 社の営業マンはそれ自体に気付いていない。「なぜ早く発注してくれないのか?」と本気で思っている可能性すらあるのだ。

ちなみに、このケースではないが別の事例では「そんなことも分からないのですか」といった発言や、クライアントを小バカにするような対応をする会社もある。チャットツールのやり取りの最中に、クライアントのコメントに「Bad」ボタンを押してしまうようなケースだ。もちろんこれも実話だ。

こんなことは通常ありえない。

「分からないからやってあげてるのだ」という態度がそのまま出てしまっている。そしてクライアントは敏感にそれを察知する。

A さんのケースでは、初めから正直に、出来ないからお願いしている、分からないからその道の専門家に聞いているのだが、なぜか C 社の営業マンはそれを曲解して「だったら俺の言うことを黙って聞いていればいいのだ」という不遜な態度にすり替わってしまっている。

特に、BtoB ビジネスにおいては、プロジェクト関係者も多く社内における A さんの立場もある。細かい仕様まできちんと確認するのは当たり前の話であり、それをいちいち面倒臭がっていては、仕事にならない。

また医者の例でも「インフォームドコンセント」という発想がない医療は誰も安心できないだろう。

ちょっとした手間、補足説明を省いてしまうとこのようにクライアント側の不安が増大する。結局これでは双方にとって時間の無駄だし、何一つメリットがない。

こういったコミュニケーションで悪評を広めるくらいなら、初めから D 社のように断った方がマシだろう。

まとめ

ここまで極端な事例はあまりお目にかからないはずだが、本当にそのお客様の役に立ちたいと思っているのかは、営業マンのスタンスで分かる。なぜなら営業マンはその会社の看板を背負っているからだ。

  • 他のクライアントの仕事があると言いながら、結局自分視点でしか話さない
  • 他のクライアントにも同様に接し方をしているのは明白
  • 最初は調子はいいが行動が伴わない

これではいけない。まだプロジェクトが始まってもいないのに「頼みたくない」と思われてしまうのは愚の骨頂でしかないし、印象も最悪だ。

大切なのは、上からモノを言うことでもなく、変に下手に出ることでもなく相手の立場を想像して対応していくことだ。

  • プロフェッショナルとしての高いパートナー意識
  • クライアントが目指している方向を向く(クライアントの実現したいことを理解する)
  • クライアントの困りごとを一緒に解決していく気持ちで対応する

簡単にいえば「困っている/悩んでいるお客様に対して自分たちがもっている技術でお役に立つ」ということだ。

翻訳業界でも他業界でもおそらく似たようなコミュニケーションが起きているはずだが、それによって失うビジネスチャンスはどのくらいあるのか、自社の営業マンがこんな回答をしていないか、あらためて考えてみてもいいだろう。

かなり無駄なコミュニケーションコストを払っている可能性がある。逆に言えば、こういった部分をしっかり整備できる企業は「対応品質」が高い。

翻訳会社としてローカライズに対して確かな実績がある会社なら、高すぎたり、安すぎたりということはあり得ない。適正な価格と適正なスケジュールの中で、どのようにクライアントのプロジェクトをローカライズするのかを真剣に考えるはずだからだ。

そのためにはどんなプロセスが必要で、どんなリソースをアサインすればいいのか、どんな項目をクライアントにヒアリングすればいいのか、どういう体制ならそれらをすべて満たせるのかといったローカリゼーションに関わる要素がすでに言語化されているはず。

だからこそ、クライアントも安心して発注することができるし、実はそこには大きなビジネスチャンスが潜んでいることも合わせて伝えておく。

また、以下は「ローカライズ(Web/ゲーム/アプリ)」に関する参考となる記載があるページのため参考にしていただきたい。

外資系企業での翻訳、ローカライズ業務の進め方

外資系企業のための CMS を活用した Web サイトローカライズ

翻訳、ローカライズの品質とは

UI を翻訳・ローカライズする時に注意したい 3 つのポイント

ゲームローカライズ時に抑えておきたい 3 つのポイント

最初に知っておきたい iPhone / android アプリローカライズ時のポイント

アプリをローカライズするときに気をつけたい7つのこと

 


翻訳会社から見るテレワーク時代のテキストコミュニケーション

コロナウィルス(COVID-19)が世界中で猛威を振るっています。各国における感染拡大は日に日に増大していますが、そんな中で私たちのビジネス、そして働き方というものも大きく変容を遂げようとしています。

その中でも、特にテレワーク/リモートワークへとシフトしたときのコミュニケーションの取り方は、これまでよりもさらに高度なものになっています。

今回は翻訳会社(弊社)のケースも交えながらこの機会に改めて考えてみましょう。

テレワークの定義

「在宅勤務」という言葉よりも一気に広まった感がある「テレワーク」ですが、そもそもどういう意味なのでしょうか。

日本テレワーク協会によると「テレワーク」は造語だそうです。

テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

引用:日本テレワーク協会(https://japan-telework.or.jp/

たしかに、現在の働き方は多岐にわたっていますし、そもそも正社員ではなくともフリーランス、個人事業主もますます活躍している時代でもあります。昔からの翻訳者や通訳者という職業はそれこそ、その走りかもしれません。

翻訳者という職業に関して言えば、もともと自宅で翻訳作業することが圧倒的に多いのはイメージしやすいかもしれません。また顧客(主に翻訳会社)とのやり取りなども、これまではメールや電話でのコンタクトが多いわけです。これは現在でも変わっていませんが、さらにこれに加え、ZOOM などのオンライン会議ツールや後述のチャットツールなどによってさらに自由度が高く、場所に縛られない働き方ができるようになっています。

※「翻訳者」という職業については、弊社が撮影協力した厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版 O-NET)にも掲載されております。

https://www.trivector.co.jp/contents/?p=2905

翻訳会社にとっては当たり前の「テレワーク東京ルール」宣言

翻訳会社は他業界と比較するとテレワークの導入は容易かもしれません。

弊社の場合には、「テレワーク東京ルール」実践企業として登録してあり、「週3日・社員の6割以上のテレワークを実施します」という宣言を行っています。

https://www.telework-rule.metro.tokyo.lg.jp/

弊社からすると「すでに15年以上前から行っていたことであり、コロナウィルスによってそうせざるを得なかったというよりも、ようやくオンラインでの環境や価値観が整ってきた」というのが正直なところです。

いずれにしても、テレワークは造語ではありながら、いま確実に日本社会に根付いている働き方だと言えるでしょう。

テレワークで使い倒せる各種コミュニケーションサービス

テレワークが始まると移動時間が無くなったり、無駄な残業も減る、無駄な会議も減るという点は間違いないでしょう。しかし、同じオフィスにいたときのように、隣の席に軽く声をかけるのと同じ感覚ではいられないのも事実です。

そこで、そんな違和感をできるだけ払拭できるのが、以下に挙げる様々なツールやサービスです。弊社でも翻訳やローカライズプロジェクトにおけるクライアントとの打ち合わせや、社内コミュニケーションでこれらのツールを積極的に使用し、スムーズなプロジェクトの推進を行っています。

これらは翻訳会社では比較的当たり前に使用されているものばかりですが、もしまだの場合には積極的に取り入れていきましょう。

Chatwork:https://go.chatwork.com/ja/

Slack:https://slack.com/intl/ja-jp/

Skype:https://www.skype.com/ja/

LINE:https://line.me/ja/

ZOOM:https://zoom.us/

WebEx:https://www.webex.com/ja/index.html

Microsoft Teams:https://products.office.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software

弊社のお客さまの中には、「メールと電話だけだとさすがに厳しい」という声も聞こえてきますがこの手のツールを導入することによってかなりコミュニケーションは改善されるでしょう。

企業訪問自体も感染拡大防止のために制限されているというのが現状のため、商談や打ち合わせなども ZOOM などを筆頭に頻繁に行われるようになってきましたので、この流れはますます強くなると思います。

働き方改革と 5G の登場

もうひとつ、テレワークと並び、在宅勤務を含めた自由な働き方を後押しするのが、2019年にはじまった「働き方改革法」です。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

さらに、この状況に加えテクノロジーが後押しします。5G の登場です。

5Gと4Gで何が変わる?何ができる?

https://www.softbank.jp/biz/5g/column3/

つまりテレワークをしやすい環境が今後続々と始まっていくということです。

余談ですが、転職や就職活動でも「テレワーク」「在宅勤務」といったキーワードが人気で、そういう企業への応募意欲は高いそうです。

テレワークのデメリット

テレワークが IT業界特有のものから社会全体に浸透する背景は理解できましたが、とはいえ、まだまだ慣れていないシーンも多いでしょう。ここでは考えられるデメリットもご紹介します。メリットとデメリットを合わせて検討することで対策しやすくなります。

代表的なデメリットは以下になります。

時間管理が難しい(自己管理能力の低い人は相当大変)

これまでは通勤時間を計算して始業までに出社をしていた生活から急に、始業までにテレワークの準備をしておけばいいということになり、通勤時間がゼロになります。

それによって満員電車などのストレスは軽減されると考えられますが、一方で時間管理をきちんとしないと強制力が働きにくくなるため、ダラダラと仕事をしてしまう傾向もあります。

仕事のスイッチの ON/OFF の切り替えも難しい側面があります。またはテレビを見ながら仕事をするとか、家族がいるため集中できる環境の確保が難しいといった面です。

逆に時間管理をきっちりできる人には有効な手段です。

他者との接触頻度の低下によるメンタル面の不調(ネガティブな人は特に)

こちらは最近多くの声を聴くようになりましたが、やはりずっと在宅でひとりで仕事をするということで、元々少しネガティブに物事を捉えてしまいがちな人は、これまでのように社内やクライアントとのコミュニケーションが十分に取れないため、余計な心配をしてしまったり、あらぬ方向に考えてしまったりということが発生します。

特に気持ちが切り替えにくくなる人や、気持ちが下がっているときなどは、どうしても悪い方向に考えてしまうのが人間ですので、このあたりはチームや部署として、上司としてどうフォローしていくかという課題にも直結します。

人間は社会的な動物で、やはり他者とのコミュニケーション量が減ってしまうと、メンタルへの影響はあると思われます。(一方で、ハラスメントなどのリスクは減少しますので良い面もあります)

弊社の場合でも、メンタルへの影響は大きいと考え様々な対策をとっています。

完全な成果主義

こちらも最近特に言われていますが、これまではオフィスでのコミュニケーションだけで仕事をしていたような、いわゆる社内での交渉に長けていたり、根回しが上手だったり、派閥争いといった関係性重視の仕事をしてきていた場合は、基本的に厳しくなるでしょう。

在宅ではその方法が通用しないですから、純粋に作業の成果や仕事の成果で評価されることになります。(本来はこうあるべきなので問題ないと思います)

そういう意味で、テレワークやリモートワークは、「完全なる実力主義の世界」とも言えるでしょう。無駄な会議や打ち合わせなどは発生しにくいため、「今日はどんな仕事をしたのか」「今日の成果は何か」をきちんと示せないと、周囲からの信頼も失ってしまいます。

何となく惰性で仕事をしてきていた人にはかなり辛い環境になるでしょう。

(見えない)コミュニケーションコストの増大

また、隣の席同士なら一言、二言で済んでいた話が、チャットやメールになると急にやり取りが増えます。

例えば、YES か NO かだけを問うケースで考えてみましょう。

■リアルな場所で直接会って話をする場合

部下:「・・・ということで、こちらの案件は進めてよろしいでしょうか?」

上司:「うーん、いいんだけど、この前問い合わせのあった別件の翻訳はどうなったんだ?」

部下:「(別件は関係ないよな)・・・ああ、あちらはまだパートナーさんと交渉中でして」

上司:「あれはさ、早くしないとダメって言ったよね?」

部下:「はい、それはそうなんですが、こちらの件を先に進めるというのがお客様の要望で」

上司:「うん、だからそれは分かるんだけど、ウチにとったら別件の方が重要なんだから」

部下:「ええ、それは分かってますが、まずはこちらを進めてから検討するということで・・」

上司:「いやだから、それはやっていいんだよ、でもさ、その前に別件のほうも合わせて考えてほしいんだよね」

部下:「分かりました、、、ではまずは別件を聞いてみます」

これは同じ場所にいると、(確かにイライラはしますが)まだ我慢できなくはない回答です。しかし、これはチャットやメールの場合はどうでしょう。

■チャットやメールの場合

部下:「・・・ということで、こちらの案件は進めてよろしいですか?」

上司:「いいけど、この間問い合わせのあった別件の翻訳はどうなりましたか?」

部下:「(あれ?これって OK ってことかな)・・・別件はまだ交渉しています」

上司:「まだですか。こちらを先に進めてください」

部下:「(それは分かってるけど)・・はい、かしこまりました。しかし、こちらの件を先に進めてほしいとお客様はおっしゃっています」

上司:「(いや、だからさ)それはそうですが、ウチにとったら別件の方が重要なのはわかりますよね?」

部下:「(はあ?当たり前だろ)もちろん理解しています。しかしこちらを進めてから検討するとおっしゃっていますが」

上司:「(いやいや、そうじゃなくて)理解しているなら、別件を含めて考えてもらうように伝えてください。」

部下:「(え、結局 NO ってこと?)はい、分かりました、、、ではまずは別件を聞いてみます」

これらは極端な例ではありますが、なぜか文章になるとそれぞれ丁寧な言葉遣いになります。そしてそれがかえって冷たい印象を与えます。また、顔が見えない分、断定してしまうことも多くなるでしょう。

これらは、少しずつ積み重なり、見えないコストが増大していくことになります。

非言語コミュニケーション(Non Verbal Communication)が通じない世界

コミュニケーションは言語情報と非言語情報に分けられますが、上記の例のように「言語情報」が主を占めてしまうと、これまでコミュニケーション内で受け止めてきた「非言語情報」がゼロになるため、本当に相手が何を言いたいのか分からなかったり、間違えてしまうこともあります。また文章だけだと、「どういうトーンで書いているのか分からない」ことも多くなるため、「怒っているのかも」と推測したり「大して重要ではない」と軽く受け止めたりという誤解も招きやすくなります。

言葉は、同じことを伝えるのにも様々な表現があります。非言語情報(身振り手振りのようなもの)が遮断された状態だと、丁寧な言葉が逆に突き放す印象を与えたりすることもあります。

補足ですが、言語的な側面から考えた場合、翻訳というのは原稿と向き合う仕事であり完全に言語情報だけで作業しなければなりません。

この状態でより良い訳文を作ろうとした場合は、開示できる範囲で背景情報など、非言語情報を共有していただくことで品質向上の役に立ちます。

このように非言語情報は、実はコミュニケーション上では大変有効な情報なのですが、これからの時代はそれらを受け取れないという前提で仕事をすることを考えなくてはなりません。まさに上述の翻訳作業と同じ状況が生まれるということです。

テキストによるコミュニケーションがますます重要に

非言語情報が使えないということは、文章力がますます重要になるというのは明白です。

数年前にこんな記事も書いています。

読み書きができないと取り残される時代がやってきた

読み書き、つまり視覚情報が重要になるとき、いったいどういう点に注意すればいいのでしょうか。

テキストコミュニケーションにおける10個の注意点

テキストがメインになる世界では、これらのポイントをしっかり押さえておきましょう。弊社の翻訳プロジェクトなどの場合でも注意しないと誤解が生まれてしまうポイントのため、ひとつひとつは当たり前のことなのですが、非常に重要です。

1. 使う言葉の定義をする

これはコミュニケーションにおける「基本」です。これまでに何度もお伝えしていることですが、これがないと、リアルの場でのコミュニケーションも上手く行きません。

例えば、弊社の掲げる「良い品質の翻訳」という言葉の定義は、「お客様の望むものを作ること」となっていますが、これがもし決まっていなければ「自分たちが良いと思った翻訳こそが良い品質」というように勝手な解釈が含まれてしまい、お客様の希望する翻訳にならない可能性もあります。乱暴な言い方をすれば、それはどんなに訳文として素晴らしかったとしても、翻訳サービスを提供する弊社では定義とは異なるため「良い翻訳」とは呼べないのです。

トライベクトルが考える「良い翻訳」とは|翻訳会社トライベクトル

なぜならそれはお客様を無視した訳文であり、しかも毎回それが満たされる可能性も少ないため、一定の品質をお届けすることができません。

お客様との打ち合わせの中で「良い品質、良いものを作りたい」という発言があったとき(大抵誰もが良いものを作りたいと思っている)、その言葉の定義が確定していれば問題ありませんが、そうでない場合には、「作り手の作りたい品質」という解釈で進めてしまうと、プロセスとしてのコミュニケーション、また成果物そのものがおかしくなります。

2. 1つのテーマの中に複数のテーマを入れない(誤解が生じる)

これは翻訳でもよくあるのですが「1つのテーマの中で、別のテーマを論じない」ということです。

リアルな場であればそれも流れをつかめるケースも多いのですが、基本的にテキストメインになると背景情報やノンバーバルの情報量が減少するため、その中で別の話をしてしまうと読み手はついてこれない可能性があります。

翻訳の場合には、文脈がおかしくなってしまったり、2つ以上の意味で受け取られるような文章になってしまったり、係り受けがおかしかったりといったものは分かりにくいため、理解もされません。

プライベートならまだしも、ビジネス上では1つのテーマが話し終わってから次に移る方が結果的にスムーズになるでしょう。

3. YES/NO の質問には最初に結論を述べる(結論、意見 → 理由、意図の順番)

上記例でも説明した通り、まずは結論を述べるということです。これはリアルな場でも同じことですが、結論が出ない話し合いや打ち合わせは意味がありません。ただ参加者が何となく不安だからということで開催されるケースがほとんどです。その場合、何となくの安心感だけを手に入れて業務への改善が見られません。

「結論を先、次に理由」を述べていくというのは、テキストベースのコミュニケーションでも基本中の基本です。

4. 日付は、曜日だけで答えない

これは無意識にやってしまいがちなのですが、「来週の木曜日までに納品してください」といったケースです。

「木曜日」だけだと、勘違いする可能性を作ってしまいます。もちろんそうならないようにお互いに注意すべきなのです。

誤解を生まないようにするためには、初めから「4月9日木曜日に納品してください」とします。端折らずにきちんと伝えましょう。

産業翻訳では「原文に忠実に」というルールが存在します。このルールに則って翻訳するなら「次の木曜日」という訳文よりも「7月1日(木)」にとした方が正確性が高い訳文となります。

5. 言葉を端折らない(主語、述語、目的語がないと指示や話が曖昧になる)

会話ではよくあると思いますが、言葉を端折ることで伝わらなくなります。

例えばローカライズプロジェクトにおいて「〇〇社の用語集を構築する」ということが決まった場合、「いつまでに、だれが、どういう形式で、どういうツールを使って、どの原稿から、どのくらいの数の用語集を構築するのか」をはっきり書いておくということです。

これが結論として書いていないと結局誰もやりません。指示がハッキリしなければ動けないですし、曖昧な個所は質問して確認しなければ進められません。

「うまく翻訳してください」や「ざっくりデザインしておいて」というような指示ではいつまでたっても望む品質の成果物は手に入れることができません。

6. 箇条書きを使って順番に話をする

これも簡単なことなのですが、意外とできない(やっていない)ことです。文章をダラダラと書くくらいなら、箇条書きにしてシンプルに伝えた方がよいでしょう。

翻訳の場合も同様なのですが、分かりやすい文章というのは論理性があります。そしてその中には「文章構造はシンプルにする」ということも含まれています。

二重否定のような文章は、一見読むだけでは分からないことも多いですし、ストレートに書くのが一番です。

二重否定文:その翻訳プロジェクトは成功しないとも限らない。

修正後:その翻訳プロうジェクトは成功するかもしれない。

7.  全体として 5W1H を意識する

前項の言葉を端折らないと点にも共通しますが、5W1Hを意識しないとどうしても自分の視点だけになり、話が分からなくなることがあります。「いつまでに、誰が、何をするのか」をはっきり書くことが大切です。

産業翻訳では 5W1H がなければ誤訳や訳抜けと言われることもあります。書き言葉でも話し言葉でもどちらでも大切なポイントです。

5W1Hはコミュニケーションの基本

8. 多少冗長になっても、明確に書いておく

言葉を端折れば端折るほど、誤解は生まれやすくなります。たしかに会話の中では(非言語情報が多いため)端折ってしまっても伝わることも多いのですが、テキストだけでやり取りしようとするときには、きちんと書いておきましょう。

それによって余計な質問もなくなりますし、結果的にやり取りが一度で済みます。

「翻訳文は、原文よりも長くなる傾向がある(特に日本語から英語への翻訳の場合)」と言われますが、それは何故かと言えば、きちんと説明しないと誤解を招いてしまうからです。機械の取扱説明書や医療分野での手術の説明などの場合、正確に翻訳しなければ大事故につながりますし、命の危険すら発生してしまうのです。

9. テキストによるコミュニケーションは予想以上にコストと時間がかかる

心構えとして「テキストによるコミュニケーションは、(意外と見えない)コストがかかるということも念頭に置いておきましょう。

これまでは、同じオフィス内にいるため、「隣にいるから話しかけたらすぐに終わる」「電話すればすぐに済む」という状況も多かったはずです。またそのやり方に慣れている人も多いとは思いますが、チャットツールやメールではそうはいきません。その分、予測しながら書くようにしなければなりません。上手に文章を書かないと意図が伝わりにくくなります。

10. ポジティブに書くのかネガティブに書くのか

これは書き手の思想に影響を受けますが、例えば何らかの報告などのケースでは、どうしても主観が入ります。そのため、ポジティブに書くのか、ネガティブに書くのかによって読み手の持つ印象は変わってしまいます。

よく「事実」と「意見」を分けて書くことを推奨されますが、チャット等ではそれらをテンプレ化してもいいかもしれません。

読み手の判断が変われば打ち手も変わってしまうので、特に注意が必要です。

テキストに振り回されないために

ここまで翻訳会社から見たテキストによるコミュニケーションの注意点を書きましたが、これらを注意するだけでなくZOOM などを合わせて活用することもお薦めします。映像が入ると、非言語情報を発信/受信できるようになるため、リアルな場でのコミュニケーションに限りなく近くなります。

弊社でもオンラインでの商談では、ZOOM や Skype 等を利用しています。

オンライン商談の対応について

まとめ

翻訳会社の業務はまさにこの文章(テキスト)を商品としているため、弊社ではテレワークの有無にかかわらず、論理性の高い訳文を作るということを常に意識してきました。また職業的にも、テレワークで進められる部分が大きいのも事実です。新型コロナウィルスによってテレワークが脚光を浴びましたが、これからの時代、テキストによるコミュニケーションは新しいルールになるでしょう。

翻訳会社としては、「誤解なく正しくお伝えするノウハウや経験」は豊富にありますので、オンライン時代でもどのようにコミュニケーションでの成果を出すのかについて今後とも発信していければと思います。


オンライン商談の対応について

世界的に蔓延するコロナウィルス対策のため、様々な企業や団体がイベントや展示会の中止や延期を発表しています。

弊社では、これまで企業様への訪問活動を積極的に行っておりましたが、この機会に ZOOM を利用した「オンライン商談」に対応しております。

オンライン商談のメリット

これまでも弊社ではオンラインでの商談やお打ち合わせを行っておりましたが、改めて整理したいと思います。

メリット①:時間や場所の選択肢が広がる

これまでは移動時間や、営業時間を考慮してお約束をさせていただいておりますが、ZOOMの場合には、ある意味でどこにいてもお打ち合わせができるため、時間や場所に制限されにくくなります。

メリット②:低コスト

ZOOM自体は無料での使用も可能です。移動などが無い分、余計なコストがかかりません。

メリット③:クリアな音声品質、映像品質

使ってみると分かるのですが、オンラインへの抵抗があったとしても、非常にクリアな音声、映像品質であるためすぐに慣れてしまうと思います。

必要な準備

商談に必要になるのは、ZOOM社の「ZOOM」です。こちらをお使いの PCにインストールしていただき、ミーティングルームを作ることでスムースにオンラインでのお打ち合わせが可能になります。

ZOOM

https://zoom.us/

カメラ

PC に内蔵されているカメラでも問題ありませんし、別売りのカメラでも安いものであれば、数千円程度で購入できるものもあります。またスマートフォンの場合には、アプリをインストールするだけでミーティングが可能です。

マイク

こちらも PC なら内臓のマイクでも問題ありませんし(テストは必要)、別売りのヘッドセットでも問題ありません。

※ご希望のお客様には ZOOM の簡単な操作方法などはお伝えし、弊社とのお打ち合わせをサポートさせていただきます。

「貴社のビジネスを止めない」ために

相次ぐコロナウィルスの影響により世界経済が大きく揺れております。リーマンショック以上という声や東京オリンピック開催自体も不透明な状態(2020年3月23日現在)になっていますが、だからといって完全にビジネスを止めてしまうと、今度は経済的な悪影響が出てしまいかねません。

「安全かつ、ビジネスを止めずに経済活動を継続する」ということを考えた場合、オンラインで進められるものはスピーディに進めていくことが非常に重要ですし、今後、ウィルスが収束したときこそ、スタートダッシュを決めるためにも今進められるものは進めていくことが必要になると思います。

お問い合わせフォームの備考欄に「オンライン商談希望」とご記載いただければ、弊社営業担当から折り返しご連絡させていただきます。

ぜひお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。