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自動翻訳 API の失敗事例から学ぶ目的の重要性

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成功事例というのは世にあふれていますが、なかなか「失敗事例」についてはお目にかかることが少ないと思います。そこで今回は、失敗事例から学べることをご紹介したいと思います。

※架空の企業 A 社の事例を解説

A 社の多言語翻訳プロジェクト背景

  • 近年増え続けるインバウンド(外国人観光客)向けの Web サイトの多言語翻訳プロジェクト
  • 取り扱う言語は英語や中国語など合わせて5言語以上
  • インバウンド情報を各言語で定期的に発信
  • 多言語への翻訳が必要になるのでコストもそれなりにかかる

最近はよく聞く話ですが、この A 社様では上記の多言語翻訳を行う際に、すべて手動で行うかもしくは、自動翻訳 API を使うかという検討期間がありました。

翻訳が「意味不明」「読めない」という事態

結果としては、「手動で行うとコストもかなりかかるので、自動翻訳で行う」という方針に決定しました。そしてその多言語で自動翻訳された言語を、翻訳会社にチェックしてもらおうという流れになりました。

まずはテストとして少量を自動翻訳し、翻訳会社に見てもらったところ、翻訳会社からは以下のようなコメントが寄せられました。

「この文章が何を言っているのかがわからない。意味を成していない」

「この中国語は簡体字と繁体字が混在していて読めない」

つまり、そもそもの訳文が、チェックしてどうにかなるレベルではないということでした。これには担当者も困り果ててしまいました。当然ながらチェック料金で対応できるものではなく、やり直したほうがいいということになりかねません。

確かに予算が無尽蔵にあれば、手動で翻訳を依頼するほうが品質的には良くなるのかもしれません。しかし、実際にはそんなことはありません。なんとかコストを抑えつつ・・・ということで自動翻訳を選択したものの、テストしてみればそれでは今度は使い物にならないというジレンマ。

そんな状態で進めても Web サイトそのももの評価が下がるのは目に見えています。今回の Webサイトは、インバウンド向けですから、色々な国の方が閲覧する可能性が高いわけです。そのために制作するのですから当たり前です。社内文書ならともかく、外国人が見てネガティブな口コミなど広がってしまったら、その方が影響が大きくなってしまい修復できません。

結局、この後、A 社としてなかなか方向性が定まらず、いったんプロジェクトは頓挫してしまいました。

何を優先するのかの見極めを

これらはよく聞く話かもしれません。ただ実際に「金額と品質と納期」のバランスをどうやって取るのかは本当に難しいものがあります。

ご相談内容から分かる「失敗しない翻訳サービス」とは

 

関連する内容になりますが、数年前に以下の記事を掲載しています。

 

機械翻訳(自動翻訳)と翻訳支援ツール

 

この記事でも触れていますが、自動翻訳にせよ、翻訳支援ツールにせよ、ツールやAPI が悪いではなく、それらを使う「人間がどういう判断基準をもって使用するのか」が重要だということです。

本質的な部分で理解をしていないと、ツールが悪い、API が使えないという話になってしまいます。テクノロジーが進化していっても、それを使う側の発想がまったく進んでいないという事態になれば、ますます「不適切な場面」で使用したり、「必要な場面」で使用しなかったりということになりかねません。

テクノロジーに原因を求めるのではなく、何を優先するのか、つまり「目的は何か」をしっかりと見極めることがますます重要になってきていると言えます。

AI の進化でますます求められる人間の役割とは

「ディープラーニング」という言葉を多く見かけるようになりましたが、このディープラーニングが今後進化し、発達すれば、人間に代わるほどの言語処理を行うことができる可能性があります。

それほどこの「ディープラーニング」は自然言語処理技術でも注目されているテクノロジーです。こちらの内容を解説してしまうとテーマと外れてしまうため、割愛いたしますが、AI が研究段階にある現在では、やはり人間がきちんと基準をもって判断をしていかなくてはならないという事実は何も変わりません。

いやむしろ、AIの真価が進めば進むほど、私たちはより一層人間的な部分を使わなくてはならなくなります。

そうなると、「全体をざっと自動翻訳しておいてあとはチェックすればいい」という発想では、まったく太刀打ちできないということになります。(すでに Google 翻訳はその精度が飛躍的に向上したというニュースが流れたのも昔の話です)

また現時点では、想定される翻訳品質が上述のようなものであれば、翻訳者も喜んで対応するということはないのではないかと推測します。(実際、弊社の翻訳者さんでも、機械翻訳や自動翻訳で翻訳された訳文を積極的にチェックしたいという方はひとりもおりませんでした)

となると、お客様側の想いだけが先行してしまって、その実情が伴ってこないという事態になりかねません。

一番大切なのは「伝わるか伝わらないか」

もっと言えば、自動翻訳でも AI でも人間が翻訳する場合でも、大切なのはその目的が果たせられるかどうかということです。

上記の例であれば、Web サイトを利用する外国人観光客が、この Webサイトを見て、「すごく便利だし使いやすいし、わかりやすいね」と思ってもらえるかどうかが重要なのであって、常に考えなくてはならないのは、それを達成するためにあなたはどうしますか?ということです。

テクノロジーはそれらをサポートしたり効率アップのためのツールです。しかし残念ながら現状ではそこまで辿りついていないとすれば、何か他の手を考えたり組み合わせたりという発想の転換が必要になります。

繰り返しになりますが、この点こそがひとつの多言語翻訳プロジェクトを成功させるかどうかの分岐点になると言えます。

まとめ

  • 自動翻訳 API も人間による翻訳も AI もそれぞれの特性がある
  • その特性を見極めることこそ、人間の重要な仕事
  • 目的に沿った明確な判断基準を持つことで「使われる」のではなく「使いこなす」ことができる

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「翻訳なんて誰がやっても一緒」だが、誰もが「言葉に魂を込めている」ものを求めている

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職業に貴賎なし

「翻訳なんて、結局、誰がやっても一緒でしょ」

と、はっきりと面と向かって言われたことがあります。この発言をしたクライアントは、有名企業に勤める部長クラスの方でした。

打ち合わせの中で、金額やスケジュール、品質のバランスを一通りご説明し終わっての発言でした。

少なくとも立場的には(おそらく)現場レベルではないと思いますので、その場合は金額とスケジュールに重きが置かれます。それはとても理解できますが、ここまではっきりと、面と向かって言われるという経験は後にも先にもありませんでしたのでとてもビックリしたのを覚えています。

本来、「職業に貴賎なし」と言いますが、翻訳サービスや翻訳業界、翻訳者を下に見ているのではないかと強く感じたのも事実です。

原因は、「伝わっていない、理解されていない」こと

正直申し上げて、この方がおっしゃった発言は決して気持ちの良いものではありませんし、もっと言えば「侮辱されている」と感じたのも事実です。もちろんそのご本人にはその気はないのでしょう。もし気にかけているならこういう発言自体をしないだろうからです。

翻訳や通訳は、2カ国以上をさまざまなレベルで繋げることのできるコミュニケーションツールです。

残念ながらこういう発想を持っていないからこそ「つい」出てくる言葉だと思います。

ちなみに、その時に同席されていたのは、翻訳のことをよく知っている方(現場担当者)で、この発言の瞬間に非常に気まずい表情をしていたのも大変印象的でした。

ここで、私たちが勘違いしてはいけないのは、この部長さんが悪いかというと決してそういう訳でもないということです。

まずはじめに、この方は現場の人ではありません。マネジメントクラスの方なので、コスト管理、リソース管理、スケジュール管理といった「マネジメント」が主たる業務であり、(これは予想ですが)恐らく、翻訳会社だけでなく、さまざまな業者に対して「○○なんて誰がやっても一緒だよ」という発言をしていると思われます。もっと言えば、それは単なる口癖なのかもしれません。

ただ、こちらとしては、言われた瞬間にそこまで想像することは難しいですし、そんなに心を広く持っているわけではありません。ただ、今から考えると背景事情があるのかなと想像できるわけです。

ほかの仕事や業種は分かりませんが、殊、翻訳という仕事に関して言えば、ほとんど「知られていない」のが現状ではないでしょうか。

一般の人が「翻訳や通訳」という言葉を聞いたときに何を想像するのか

「翻訳を仕事にしています」と言えば、「すごいね~」とか「英語話せるの!」といった回答が多くなると思います。

すごいかどうかは主観なのでそれは別として、「英語が話せる」というのは翻訳とは一切関係ありません。あえて関係あるとするなら通訳でしょうか。

「翻訳力」とは何か

揚げ足を取りたいわけではなく、つまり、翻訳はそれだけ「一般の人には知られていない」という厳然たる事実がそこにあるということです。

ですから、知らない人からすれば「翻訳なんて誰がやっても一緒」という発想になっても何ら不思議なことではありません。冒頭の発言をした人に腹を立てても仕方ないのです。

私たちは、考える基点をここに持ってくる必要があるのではないでしょうか。

「言葉に魂を込めていますよね」という言葉

また、一方でこんなことを言われたこともあります。

「翻訳って言葉に魂を込める仕事ですよね」

そう、その通り!と言いたくなる気持ちもありますが、このような発言をするのは、ほとんどの場合、翻訳のコツやツボを知っている人です。かつて翻訳業界で仕事をしていたとか、自身が翻訳者だったとか、または翻訳の担当窓口などでしょう。

現場に近い方は、自分でも翻訳したり、レビューしたりするので、翻訳という業務を(上述の部長さんのようには)バカにしません。

翻訳の難しさと面白さを知っているからです。

この方のおっしゃっていた「言葉に魂を吹き込む」というのは、とてもよい表現だと思いますし、実際、その通りだと思います。できることならこういうお客様とだけお付き合いしたいと思うのも本音ですし、こういった方がある程度の権限をお持ちの場合には、仕事が非常にやりやすくなり、結果としてかなり高品質の翻訳・通訳サービスを提供することができます。まさに Win-Win の関係を作りやすくなります。

ビジネスとして成立するのは、圧倒的に前者が多いという事実

しかしながら、決裁者が完全な理解を示してくれるということは稀です。

弊社で取り扱っている翻訳サービスはボランティアではありません。そのため「価値=価格」や「価値>価格」という式が成立しなければなりません。

ビジネスとして成立させるとき、価格や予算の決定は、先ほど登場した部長さんのような立場の方が決めることがほとんどです(現場からの進言はあるとしても決定権は現場にないことが多い)。

企業にとってはどんな仕事でもコストを下げることは至上命題です。翻訳サービスもそのひとつでしかありません。全体の中の一部なのです。

私たちが、どんなに「安かろう悪かろうだと、御社のレビューが大変になるから余計な時間がかかってしまいますよ」と言ったところで伝わりません。これらは現場レベルには理解されますが、マネジメントクラスになるとまったく異なる力学やロジックが働くことがあるため、「とにかく安く」なっていればいいということも往々にしてあります。

どんなビジネスでも「お金」は大変重要なファクターです。

そして、このことは(翻訳や通訳サービスに限らず)現実にどこでも起きていることですし、そもそも自分たちでどうにかできる問題ではありません。完全にコントロール外の出来事になります。

色々な「お客様」がいることを理解する

大切なのは「お客様」という括りでも、相手の立場によって権限が変わり、大切にするものの優先順位が変わってしまうという事実をしっかりと理解することです。

  • マネジメントレベル:コスト優先、スケジュール優先
  • 現場レベル:品質優先

上記は極端な例ですが、こういう認識を持った上で、私たちが何をすべきか、何ができるかを把握することが重要です。簡単に言えば、以下の2点に集約されるでしょう。

  1. 良い翻訳を心がけること、そしてその努力を継続すること
  2. お客様(特にマネジメントレベル)に説明を怠らないこと

 

例えば、「こんなポイントがありますよ」「このあたりに気をつけると見積金額も抑えられますよ」ときちんと価値を説明し提供することも大切です。

コンスタントに良い品質の訳文を手に入れるための 5 つのポイント

翻訳の見積もりに必要な6つのポイント

どちらか一方だけになってしまうと、文字通り、片手落ちになります。

翻訳は分かりにくい商品であるため、クライアントの理解度にも大きな差があります。それらのギャップを少しずつ埋めていくことは、とても大切な作業だと言えます。

「ウチの翻訳には間違いない」「ワタシが翻訳しているんだから高くても当然だ」というロジックは、作り手のみのロジックで、これだけでは片手落ちになってしまいます。作り手はその情熱を注ぎ続けているからこそ、そう思うのは当然ですが、買い手はそこまで含めて理解してくれることは(特にマネジメントレベルでは)ほとんどありません。

だからこそ、私たちはそのギャップを埋めていかなくてはならないのです。

「翻訳なんて誰がやっても一緒」という言葉を発する人も、結果的に「言葉に魂を込めている」という言葉に感動するのは事実ですし、それをないがしろにすることはできないはずです。

ちなみに、「言葉に魂を込めている」という人は「翻訳なんて誰がやっても一緒だ」とは言いません。

なぜなら、「翻訳」というサービスに価値を置くかどうか、またどのくらいの価値があると考えているかどうかが問われているからです。

特に、Web全盛のこの時代では、言葉の品質はダイレクトにビジネスに影響を与えることになります。SEO 然り、ライティング然り、表現が変われば相手に与える印象が大きく変わってしまうのです。

そしてこのことは決して他人事ではなく、私たちにも当てはまることですから、どうやったらより高い価値を提供できる翻訳サービスを開発できるのか、どうすれば満足度の高い通訳サービスを提供できるかといったことを常に考えなくてはならないのではないでしょうか。

そして、そういったことが業界の底上げに繋がるのではないかと感じています。

弊社も翻訳業界だけの常識にとらわれることなく、業界以外の方の理解を促すように努力をしていきたいと考えております。

そのひとつの取り組みとして翻訳者のタマゴ、翻訳者になりたい方のための「プロフェッショナル翻訳者への道」という Podcast 番組を配信していますので、ご興味があればお聞きください。

参考:Podcast「プロフェッショナル翻訳者への道」

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「翻訳なんて誰がやっても一緒だよ」と発言する人はこれからも出てくるでしょう。そしてその度に腹を立てても、否定してもあまり意味はありません。そうではなく、「翻訳サービスって言葉に魂を込める素晴らしい仕事ですよね」という人を、どうやって増やすのかを考え行動しなければならないのではないでしょうか。

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外資系企業での翻訳、ローカライズ業務の進め方

翻訳やローカライズ、通訳が存在するための絶対必要条件があります。

それは「同時に2つ以上の言語が発生しなければならない」ということです。そして伝えるものがなくてはなりません。

これはとても当たり前のことですが、実はとても重要な要素であり、これによってさまざまな思惑が引き起こされるのです。今回はそれについて解説してみます。

まずは標準的なプロセスを見てみましょう。今回は内容を分かりやすくするために以下の前提条件を設定します。

 アメリカ本社の IT 企業。従業員数 300人程度。APAC では日本とシンガポールに支社がある。

日本支社は20人~50人程度。

日本支社は立ち上げ(スタートアップ)から5年ほど経過。

日本支社の立ち上げからビジネス拡大につれて変化する翻訳、ローカライズ業務の変遷

※以下は標準的なプロセスですのであくまで大まかな流れとしてご覧ください。

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それでは順番にみていきたいと思います。

プロセス1:翻訳は各国でそれぞれ独自に対応

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どんな業種でもどんな企業でも同じですが、スタートアップというのはとても重要な時期であり、そこにはとてつもないパワーが必要とされます。

「企業内起業」であっても、そこに関わるスタッフは、多大なエネルギーを必要としますし、様々な決断、選択をスピーディに行っていかなくてはなりません。

仮にアメリカ本社企業が日本支社を作ろうとした場合、そこには、日本支社を管理するマネージャーの採用、市場調査、パートナーの選定、商品の輸出入、企業設立に関わる登記などの諸手続きなどなど、さまざまな準備が必要になります。

その中でもスタートアップ時からすぐに必要なのは、その国の言語への翻訳です。この例では、日本支社の立ち上げですので、日本語への翻訳が必要になります。

日本支社(まだ登記もされず支社になってもいないケースがほとんどですが)のマネージャーは、翻訳会社を選定し、発注をかけて Webサイトの翻訳やローカライズ、商品カタログや会社案内の翻訳などを行っていきます。

オーナーの権限がよほど強いプライベートカンパニーでない限り、ある程度の予算を持って翻訳やローカライズを進めていくことになります。

どんな仕事もそうですが、最初から右肩上がりに急激に日本のビジネスが立ち上がるかといえば、そういうわけではありませんので、できるだけスピーディに、できるだけリーズナブルに翻訳を行っていく必要があります。

弊社では、スタートアップ企業様とのお取引実績も豊富で、日本支社がカントリーマネージャーおひとりの時から、5人、10人、30人、50人と成長するような関係性を大切にしております。

日本ネティーザ株式会社様

F5ネットワークスジャパン株式会社様

プロセス2:翻訳やローカライズの中央集権化

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日本支社が立ち上がり、事業が軌道に乗り始める(売り上げが立ち始める)と、翻訳やローカライズ、通訳などの分量も増えてきます。しかしそれと同時に、本社側でも日本語をはじめとした多言語展開を行うようになってきます。同時に、質にもこだわり始める時期がやってきます。

本社サイドには、翻訳やローカライズの担当者がアサインされるようになり、一元管理体制(中央集権化)に代わります。日本支社で担当者が(ある種)自由に決断していたドキュメントの翻訳などが、すべて本社もしくは APAC を通す必要があります。

本社で承認された案件だけを翻訳していくことができます。徐々に日本支社での決裁権などが少なくなっていく状態です。

本社側としては、日本支社だけのことを考えているわけではなく、グローバルでの管理であり「多言語翻訳」という括りになるため、妥当といえば妥当な判断だと言えます。

そしてそれはやがて「中央集権化」されていくことになります。

中央集権化によって引き起こされる副作用とは

中央集権化するとたいてい問題になるのが、日本支社の担当者からの翻訳品質の低下の懸念です。それまでざっと読むだけで済んでいたレビュー作業が、中央集権化されたことにより、品質にバラツキが出たり、レビュー負荷が急激に上昇したりすることがあります。

  • 残業してレビューしなくてはならない
  • ほかの業務を後回しにしてレビューしなくてはならない

といったことが発生するのがこの時期です。

多言語翻訳を行う上で本社側の判断基準とは

一方、本社サイドではそのような状況は見えないため、多言語の一括管理を進めていくことになります。ここでは、翻訳サービス自体も、翻訳支援ツールだけではなく、機械翻訳や自動翻訳といったサービスも含めて業務フローに組み込まれていきます。

機械翻訳(自動翻訳)と翻訳支援ツール

このような様々な要素を検討しながら、多言語翻訳を行っていくわけですが、その判断の大きな基準となるのは、圧倒的に「料金」です。

どの翻訳会社に発注するかという判断は、この基準が大きな力を持っています。

それはなぜでしょうか。

答えは簡単です。欧米の企業が「日本語の品質を正しく評価することはできない」からです。

もっとも定量化され分かりやすいのは価格であり料金です。ですから、中国やインドなどのローカライザーが席巻することになります。

翻訳の功と罪

翻訳会社も、世界中に展開している MLV(Multi Language Vendor)が、多言語翻訳を一括でアメリカ本社から受注し、 自社の各国支社へ振り分けることでコストダウンを実現します。ただしその場合、必ずしもその国の言語の翻訳を、その国の翻訳者が行うとは限りません。例えば、日本語の翻訳でも、MLV の中国支社が請負い翻訳を行うことも多くあります。

それぞれのメリットとデメリット

簡単にまとめると次の表のようになります。

※これはあくまでも海外本社と日本支社のそれぞれから見た視点です。

meritdemerit

どうして日本支社は、本社に対して強く言えないケースがあるのか

これはあくまで推測でしかありませんが、全世界での売上に対しての日本支社の売上の割合が関係していると思われます。品質に難があっても本社の決定に従わなくてはならないのは、いくつか理由があります。

  1.  企業全体の売上に対しての日本支社の貢献度:ほとんど売り上げがあがっていない場合には、予算を持ってくることすら困難になります。まずはしっかりと売上を作らなければ交渉の余地も無いということです。語弊を恐れずに乱暴な言い方をすれば、「売れていればある程度強く言えることもある」ということです。実績や結果が大切というのはどの国も変わりません。
  2. 本社担当部署のダブルバイト圏への理解度:アジア圏をどの程度重視しているのか、日本のユーザの細かい要求が事実として存在していることために、ある程度の品質の日本語訳を作る必要があることを理解しているかどうかという点です。
  3. 日本の担当者の熱意:日常的にしっかりと状況をレポートし、人間関係を築いておけるかどうかは隠れたポイントでもあります。急に話が持ち上がっても相手にされないことが多いためです。これは世界共通の人間心理です。

ビジネスである以上、これは当たり前のことです。このようなパワーバランスが存在していることを前提に、どうやって翻訳やローカライズ業務を進めていくのかを考えていかなくてはなりません。

プロセス3:ユーザの指摘、担当者のレビュー負荷増大

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中央集権化が進み、システマチックに翻訳やローカライズを進めていくと、少しずつ綻びが出るケースがあります。それは「ユーザからの指摘やクレーム」です。

  • 日本語が分かりにくい

ユーザからのこの指摘は、シンプルではありますが、日本支社にとってはじわじわとボディブローのように効いてくることがあります。

また一方で、レビューを一生懸命に行っていても、上記の指摘やクレームが出るように、品質の向上にも限界が見えてきます。

  • レビュー負荷の増大

特に、日本の顧客(ユーザ)は品質にうるさく、それは商品そのものだけでなく、付属するドキュメントなどにも同様の質を求めることが多くあります。

様々なポイントに気を張り巡らせているにも関わらず、ユーザからのクレームが増えていくことになります。

プロセス4:日本支社への権限譲渡と品質管理

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プロセス3まで進むと、日本支社の担当者はこれ以上のレビュー負荷をかけるわけにはいかないとして、本社担当者に交渉を行います。

「翻訳、ローカライズの予算は日本で持つから日本の翻訳会社を使いたい」

というシンプルな動機です。

根気強く交渉を続けることで本社の担当者の理解を得ることができます。ただし、外資系企業の場合には、担当者の転職など頻繁に行われるために、運用ポリシーがせっかく決まりかけていてもひっくり返ってしまうことも往々にしてあります。

そういったリスクもありますが、それらを乗り越えてあらためて日本での翻訳、ローカライズを行うことができれば、品質的には向上すると言われており、またレビューもスムースに、ユーザへの提出もスピーディになり、顧客満足度も上昇する傾向にあります。(年単位での移行となるケースが多い)

まとめ

  • 企業ごとに、中央集権化⇔分散化のプロセスは常に変動している

中央集権化が良い、分散化が良いという二元的な結論ではありません。どちらもメリットデメリットがありますし、企業によってステータスが変わりますのでどれがベストかというのは、答えが変わってしまいます。(ただ傾向としてローカルでのコントロールのほうが柔軟性があるので運営はしやすいようです)

  • 中央集権化を体験した企業は、ローカルで翻訳をコントロールしようとする

日本支社の視点から見ると、品質が低下するのはそのまま業務に直結するのでどうしても避けたいところです。日本の市場がグローバルでの売上構成に貢献していることで発言力が強くなる(売れていなければコントロールすることはできないということ)

  • 一部の企業は、品質が耐え得るレベルにない場合には「ローカルにコントロール権が還ってくる」という現象が起き始める

翻訳やローカライズを日本支社でコントロールできるようになると、Web サイトやその他の業務も同様に交渉しやすくなります。自分たちの手元でプロジェクト管理ができれば、業務はずっと楽になります。(結果も出しやすくなります)

どの企業もビジネスを行う上での目標のひとつとして「売上の増大」「利益の確保」があります。コスト削減はとても重要な要素です。

大切なのは、コストと品質のバランスをどう取っていくのかということであり、安かろう悪かろうや、また過剰な品質は意味がありません。外資系企業の場合にはしかもこれらを二国間以上で行わなくてはならないため、非常に難しい問題であると言えますが、この大きな流れがあることを理解していれば本社との交渉なども比較的やりやすくなるのではないでしょうか。

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お客様のお悩み(その3)「翻訳会社はたくさんあるけど、どう選べばいいの?」

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お問い合わせいただく中でも、このご質問も多く、お客様がかなり混乱されているのが良く分かります。弊社では、そんなお悩みをお聞きし「自社に合った翻訳サービス」を一緒に考え、最適なサービスをご提案いたします。

翻訳サービスの全体を知ろう

まず、全体像を知らなければ選択することはできません。

台頭する翻訳サービスは、主に以下の4つに分類されます。

  1. 翻訳者が対応する翻訳サービス
  2. 機械翻訳、自動翻訳(例:Google 翻訳)
  3. クラウド翻訳サービス
  4. 海外ローカライズベンダー

 

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このうち、貴社にとってどれが最適であるのかも含めて一緒に考え最適なご提案をさせていただきます。

なお、上記の4分類において弊社では以下の記事にてさらに詳細の考察を行っております。

翻訳の功と罪

翻訳業界情報について

また弊社では、様々な形で最新の翻訳業界情報をお届けしております。

翻訳業界と翻訳会社

 

メールマガジン

翻訳会社の正しい選び方

Podcast「プロフェッショナル翻訳者への道」

これらの情報も同時に取得し、業界情報を理解することで現在のトレンド、また自分の仕事へ応用していただくことも可能です。

自分に合った翻訳・通訳サービスとは

上記のように自社に合った翻訳・通訳サービスを選ぶのには、まず「判断基準が何か」を考えなくてはいけません。例えば、以下の4つはお問い合わせいただく中で多いご相談です。

  • とにかく安ければいい
  • 多少コストがかかっても品質が高いほうがいい
  • 急いでいるからスピード優先で
  • 色々相談しながら決めたい

これらの要望は、それぞれ「金額優先」「品質優先」「納期優先」など、優先順位が異なっています。優先順位が違えば、それに合わせて弊社でご提案させていただく内容も変わります。

弊社では、初めてのお客様でもご安心いただけるよう、様々なご要望をお伺いしながらお仕事を進めております。

弊社の既存のお客様の声

お客様の声/翻訳者の声

トライベクトルが選ばれる6つのポイント

以上のように、弊社では、「コミュニケーションとバランス」を大切にしながら貴社に合った翻訳サービスをご提供しております。

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「たくさんある翻訳会社や翻訳サービスの中で、どうしてトライベクトルが選ばれたの?」

その6つの理由について解説しておりますのぜひご覧ください。

トライベクトルの強み

ご相談内容から分かる「失敗しない翻訳サービス」とは

まとめ

弊社は「翻訳・通訳」サービスを事業のひとつとしてお届けしておりますが、実際のところ弊社が販売しているのは「バランスの取れたコミュニケーション」です。

弊社の最大の強みである「品質、価格、納期、対応のバランス」をベースに、マーケティングコミュニケーションにおける様々なお手伝いを行っております。

「バランス」を失ったビジネスや事業は、長期的な繁栄はありません。私たちは翻訳も通訳も、バランスのとれたサービスをご提供することを大切にしています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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お客様のお悩み(その2)「初めて依頼するのに、料金体系がよく分からない」

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翻訳料金については、業界特有の計算方法などがあり、かなり難解なケースがあります。よく分からない計算方法で、お客様が混乱されご相談いただくこともございます。

弊社の場合は「単価計算方式」にて翻訳のお見積もりを作成しております。その計算方法と翻訳業界を取り巻く現状をご説明いたします。

翻訳料金の算出方法

現在では紙原稿だけしかない、ということはあまり多くありません。ほとんどのドキュメントでは、必ずと言っていいほどデータが存在しています。そして、データがあれば基本的には以下の計算式でお見積もり金額を算出することが可能です。

formula

この中には、翻訳者の作業、弊社でのレビュー作業などがすべて含まれております。そのため翻訳のみをご希望のお客様の場合には、これ以外に金額が発生することはありません。

また、翻訳以外の作業で DTP やコーディング、印刷などをご希望のお客様の場合には別途お見積もりとなります。

従来の計算方法とその問題点

以前の翻訳業界では「仕上がり計算方式」という方法が採用されていました。

これは例えば「英語を日本語に翻訳した場合、いくら位になるのか」という考え方に依っています。これはかなり大きな問題です。

問題点①:計算式が各社バラバラ

一番大きな問題は、計算式が各社バラバラだということです。なぜそういったことが起きるのでしょうか?

例えば、以下の仕上がり枚数の例を考えたとき、どれが一番安いのか、そしてどれが一番高いかが分かるでしょうか?

例:英語から日本語への翻訳の場合

 日本語仕上がり 350字/3,000円(英語200ワードあたり)

 日本語仕上がり 800バイト/3,000円

 日本語仕上がり 400文字/3,500円(英語 250ワードあたり)

いかがでしょうか。ルール(計算式)が分かれば計算はできそうですがそもそもお客様側にそういった負担をかけること自体が計算方法として推奨できません。

なおこの方法は、紙原稿しかないなど、正確に分量を把握できない場合などでは必要ですが上述のように今ではあまり使われなくなっています。

問題点②:予算超過の危険性

さらに2つ目のリスクとして、仮に予算を確保しても「実際に翻訳してみないと正確な金額は分からない」という可能性が残されてしまいます。

あくまでこの計算方法は「予想」ですから、実際に翻訳してみたら 50枚のところが55枚になってしまった、ということも起きる可能性を孕んでいます。

その場合、お客様側としては「50枚で予算を取っていたのに、55枚になってしまうとその分予算を超えてしまう」という事態が発生することになります。

改めて予算を割りあえててもらうことができればいいのですが、通常そんなに簡単なことではありません。またそういった手続き自体がストレス要因となります。

翻訳料金のご案内

翻訳料金は、難易度や分量、納期によって多少の変動がありますので、具体的にどんなドキュメントを翻訳しようと考えているか、どこまでの作業が必要なのかをご確認ください。

料金のご案内

お得な翻訳プラン

いかがでしょうか。弊社では上述のようなお客様の余計なストレスを最大限無くすため、以下のように、翻訳やそれに関連する業務について様々なプランをご用意しております。

翻訳業務関連プラン

コンテンツ向けクリエイティブ翻訳プラン

SNS 向けクリエイティブ翻訳プラン

用語集構築・運用

多言語翻訳まとめてお得プラン

通訳業務

オンライン通訳・リアル通訳サービス

マーケティング業務関連プラン

初めての場合、余計なコストがかかるかもしれないというご不安をお持ちになるのは当然です。
そこでこれらのプランをご利用いただくことで、プラン内ですべて完結するサービスをご提案しております。

料金サンプル

上記をふまえ、弊社にご依頼いただいた場合の翻訳料金サンプルをご覧ください。

各ドキュメント、各分野ごとに、翻訳を行った場合のおおよその参考価格となります。

料金のご案内

まとめ

はじめてお客様がお問い合わせされる際に気になるのは、品質もさることながら、「一体いくらかかるのか?」という点です。弊社では、お客様にすぐにご理解いただける料金体系と計算方法によってご安心してご依頼いただける体制を採用しております。

弊社の最大の強みは「品質、価格、納期、対応のバランス」です。

 

ご相談内容から分かる「失敗しない翻訳サービス」とは

「安かろう悪かろう」という結果を招くのではなく、この4点の「バランス」をとりながら、既存のお客様からのリピートオーダーにつながり、実績を重ねていると自負しております。「このドキュメントはいくら位かかるのだろうか?」と気になりましたら、どうぞお気軽にお問い合わせいただければと思います。

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