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「AI翻訳」を超えた「マーケティング翻訳」が良質なリードを生む理由

AI翻訳の爆発的な普及と消えない「伝わらない」壁

デジタル化とグローバル化が加速する現代において、翻訳の在り方も変わってきています。特に外資系IT企業を筆頭とするグローバル企業では、海外本社からの膨大なコンテンツ(ブログ、Web サイト、ホワイトペーパー、プレスリリースなど)をスピーディに日本市場に展開しなければならず、翻訳プロセスは常に改善の余地があると言えます。

その点において AI翻訳は、翻訳プロセスに革命をもたらしたと言えるでしょう。

「瞬時に日本語化できる」スピードとコスト効率は、従来の翻訳ワークフローを大きく変え、多くの企業で導入が進んでいるのは周知の事実です。

しかし、その一方で最近では新しいタイプのご相談が増えています。

  • 「確かに手間は減ったけれど日本のユーザには響く日本語になっていない」
  • 「ブランドイメージと合わない」
  • 「結局、期待する結果が出ていない」

(あえてこう表現しますが)これらの「伝わらない」コンテンツではどんなにスピーディに、どんなに広範囲に展開しても、貴社の期待する効果を生み出すことができないということです。

AI翻訳の導入で作業効率は上がっても、肝心のマーケティング効果、とりわけ「良質なリード獲得」が伸び悩んでいるとしたら、それは本質的な課題を見過ごしてしまっていると言えるのではないでしょうか。

目的は良質なリードを獲得すること

これもよくお聞きしますが、翻訳やデザインの仕事では「日本語としての特殊性を本社が理解してくれない」という話です。

(これはある意味で仕方ないのかもしれませんが)マーケティング担当者として直面する課題の1つは、本社の方々(上司)に「日本語の難しさ」ひいては「日本市場の特殊性を理解してもらえない」という側面も大きいのではないかと思います。

なぜなら彼らにとって翻訳作業は単なる「言語の置き換え」であり、「AI翻訳で十分な品質が出せるのだから、日本も同じようにやればいい」と考えられてしまうからです。

しかし日本市場で働く私たちはそうではありません。日本語は「ただの言語」ではないのです。また「本社側がグローバルで導入したシステムに則って AI翻訳をするように」という指示が降りてくることも珍しくありませんし、それにそって「単に翻訳すればいい」ということではありません。

なぜなら、翻訳そのものは貴社の目的ではないからです。

重要なのは「良質な日本語に翻訳しそのコンテンツを通して、日本市場での顧客と接点を持ち、最終的に顧客からの良質な問い合わせ(リード)を増やすこと」にあります。

これが分かっているからこそ、担当者としては「日本語の質」にこだわるのではないでしょうか。

AI翻訳が(まだ)越えられないマーケティングの「壁」

AI翻訳は、正確性も高く、またそれなりの表現力にも優れています。

しかし、良質なリード獲得に不可欠なマーケティング要素においては致命的な弱点があります。それは意味を理解して翻訳しているわけではないため、コンテンツの「パーソナリティ」や「ブランド」、そして「ニュアンス」「温度感」までは再現できないということです。

数年前の弊社記事「マーケティング翻訳」でも挙げたように、例えば「キャッチーな見出し」「洗練された言葉遣い」「ターゲットユーザーの行動を促すための表現」は、残念ながら AI翻訳だけで完結しません。

マーケティング担当者に必須の「マーケティング翻訳」とは

例えば英語のユーモアや比喩、特定の文化圏に根ざした表現は、AI翻訳では味気ない直訳になってしまったり、そもそも意図が伝わらなかったりします。
また、IT分野の専門用語が羅列されるだけの文章では、日本のユーザの心を動かすことはできません。AIは「情報の伝達」は得意でも、「価値」や「魅力」を伝え、顧客に行動を促すのは苦手なのです。(心、というとちょっと大げさですが・・・)

そして、この「伝わらない」コンテンツでは、いくら多くの人に届けた/届いたとしても、残念ながら良質なリードにはつながりにくくなります。外資系 IT 企業としては日本市場での成果を最大化するためには、どうにかしてこの「伝わらない壁」を乗り越えなればならないのです。

マーケッターが意識すべき「マーケティング翻訳」の重要性

ではいったいどうすればいいのでしょうか?

実は最近ではこれらの状況を危惧しているマーケティング担当者の方も増えており、弊社にも同様のご相談が増えているのですが、皆さん口をそろえておっしゃるのは

「従来の翻訳ではなく、「伝わる」マーケティング翻訳をしなければならない」

ということです。

「AI翻訳では不十分であり、単なる言葉の置き換えではダメ」ということが明確である以上、原文の意図や貴社ブランドのトーン、そして日本の市場の文化的な背景を深く理解した上で、最も効果的にメッセージが伝わる翻訳をしなければなりません。それこそがユーザの関心を引き、最終的に貴社へのお問い合わせや購買行動に結びつくようになるからです。

これからは「マーケティング翻訳」をして良質のリードを獲得することを強く意識しなければならないのです。

ちなみに、この「マーケティング翻訳」をひとことで説明すると「翻訳以上、ライティング未満」と言えます。

つまり「ライティング要素を盛り込む」翻訳となりますが、IT分野のコンテンツの専門性を保持しつつ、日本のユーザが共感し行動を起こすような魅力的な表現へと昇華させることになります。それは、まるでオリジナルの日本語コンテンツであるかのように、自然で力強い響きを持っているのです。

成功事例に学ぶ:マーケティング翻訳がもたらす具体的な「成果」と本社へのレポート

マーケティング翻訳は、以下のような形で貴社のミッション達成に貢献し、その効果は本社への具体的なレポートなどにも利用することができます。

①エンゲージメントの向上

日本のユーザが「自分ごと」として感じる言葉で語りかけることで、Web サイトの滞在時間や記事の閲覧率を向上させます。「単なるアクセス数ではなく、滞在時間や再訪率といったエンゲージメント指標が改善し、リードに繋がる顧客の興味関心が高まった」という報告ができるようになります。

②ブランド価値の構築

マーケティング翻訳では、AI翻訳で失われがちな貴社ブランド独自のトーンなどを守り、日本市場でのブランドイメージを強化します。

一貫性のあるメッセージは、ブランドへの信頼感を高め、長期的な顧客育成(ナーチャリング)につながります。
「マーケティング翻訳により、日本の顧客からのブランド認知度や好感度が向上し、それが良質なリードへと結びついた」といった形で示すことができるでしょう。

③コンバージョン改善と良質なリード獲得

貴社製品の魅力がより伝わるコピーに翻訳することで、問い合わせや資料請求といったコンバージョンにつながりやすくなります。

これもデジタルであれば明確なKPIとして設定可能ですので、本社への報告が可能になります。
「Web サイトからのリード獲得数や、セミナーへの申込数が増加しただけでなく、それらのリードの質が向上し、商談化率が高まった」といった形で報告できます。

このように、マーケティング翻訳は、単なる翻訳作業ではなく、貴社のコンテンツを強力な「マーケティング資産」に変える投資であり、技術であると言えるでしょう。

また、海外本社に対しては、「AI翻訳では得られない具体的なビジネス成果、とりわけ良質なリード獲得への貢献」を数値や事例で示すことが、予算を獲得する本質的な理由にもなり、日本市場での成功を確実にするポイントとなります。

一方で良質なコンテンツは「SEO効果の向上」や「読了率の向上」といった具体的なメリットも合わせて提示することができるのでより一層説得力が増すでしょう。

ローカライズ費用は外資系企業にとってコストなのか、投資なのか

まとめ:AI翻訳とマーケティング翻訳の最適な組み合わせで、日本市場の「良質なリード」を

AI翻訳は効率化のツールとして今後も不可欠なのは言うまでもありませんが、一方でユーザの心に響き、最終的に良質なリード獲得という成果につながるコンテンツを生み出すためには、マーケティング翻訳という作業が欠かせません。

プレスリリースやブログ記事、社内文書など、目的に応じてAI翻訳とマーケティング翻訳を戦略的に使い分けることが、限られた予算と時間の中で最大の効果を生み出す方法だといえます。またそれらは将来の貴社のマーケティング資産になるということも改めてお伝えします。

日本市場の特殊性を考慮した「伝わる翻訳」がいかに良質なリード獲得に直結するかを具体的に示すこと、さらに貴社コンテンツを資産として構築し、より一層良質なリードを増やすための方法として「マーケティング翻訳」をお勧めいたします。

「原稿の意味を汲んで翻訳して欲しいのに」というご要望への解決策

お客様の本質的な悩みとは

お客様から寄せられるご相談のうち、特に多いのがこの悩みです。

“原稿の意味を汲んで翻訳してほしいのに、全然できない会社が多い”

ご訪問してお伺いすると、このようなご不満やお悩みをお伺いすることがあります。これは最近に限った話ではないのですが徐々に多くなっています。

今回は、それは何故なのか、そしてどうすればお客様のご要望にお応えすることができるのかを考察します。

「原稿の意味を汲む」というのはどういうことか

そもそも、多くのお客様の言う「原文の意味を汲む」というのはどういうことを指しているのでしょうか。

その意味を正確に理解するために、現状をしっかり把握する必要があります。

はじめに、産業翻訳の場合には「原文に忠実に翻訳する」というルールがあります。

これは、翻訳業界にとってはデファクトスタンダードであり「翻訳会社や翻訳者を守る」という点でも明確なルールでもあります。原文に書いてあることを勝手に省略したり、原文に書いていないことを勝手に付け加えたりすれば、「誤訳だ、訳抜けだ」となるからです。

しかしながら、この状態が長く続いているからこそ、冒頭のお客様の「原文の意味を汲んで・・・」という発言につながる可能性があります。事実、このように発言されるお客様が非常に多いことは否定できません。

となると、お客様の望んでいる品質と、産業翻訳業界での「原文に忠実に」というルールは相容れないことになります。

直訳とは何か、意訳とは何か

では「直訳」ではいけないということでしょうか。すべてお客様に合わせるべきでしょうか。

「直訳」とは何でしょうか。またそれに対する「意訳」とは何でしょうか。

https://ja.wikipedia.org/wiki/直訳と意訳

翻訳会社の立場から言えば、「直訳」であっても何も問題はありません。「産業翻訳」としては、誤訳も無く、訳抜けもない、問題のない品質だと言えます。

しかし、お客様から見ると「直訳では問題だ」という事実もあるわけです。この事実に目を背け、「いや、問題ありません」というだけでは、議論は平行線のままです。

大切なのはこの事実をそのまま受け止め、このギャップを埋めることです。

産業翻訳のルールを変えればいい

もしお客様が求める品質がすべて「正」だとしたら、(極端に言えば)産業翻訳の「原文に忠実に翻訳する」というルールをすべて変更すればいいように思えます。(どのように変更すればいいかは置いておきます)

しかし、少し考えてみるとこれもおかしいということに気づきます。

なぜなら、お客様側には一貫した判断基準がないからです。「お客様」自体がさまざまな業種、さまざまな職種にはじまり、企業ごとの状況も異なっています。その中でどこまでが直訳で、どこからが意訳なのか、またどういう方向性(文体や表現)を好んでいるのかなどはお客様ごとにバラバラで「正解」が見えにくいのです。結局のところ、「お客様」という大きな括りになってしまうと、誰に合わせたらいいのか分からないため、非常にぼやけた話になってしまいます。

また、ドキュメントの性質から考えた場合、正確な翻訳(=直訳)の方が大切で必要だというケースも多く存在します。

※ドキュメントの性質や用途をまとめた「ドキュメントマップ」をご覧ください。

翻訳ドキュメントマップ

つまり「産業翻訳のルールを変えればいい」という単純な解決方法ではうまくいかないということになります。

ドキュメントの用途や性質には大きな関連がある

上述のように多様な「お客様」の判断基準は一貫性がありません。無くて当たり前だからです。しかし一方で、一貫性があるのは「ドキュメントの用途や元々持っているドキュメントの性質」です。

例えば、契約書なら契約書なりの翻訳の表現がありますし、財務書類なら財務書類の翻訳の仕方があります。

これらの特性を理解して翻訳することは、翻訳会社からすれば当たり前の話です。そのためにコーディネーターがいます。

分野や専門性を考慮し、そのドキュメントに適した訳し方をすることによって、読み手にとって理解しやすいものとなるわけです。

しかし、適した翻訳者をアサインしているにも関わらず、冒頭のお客様の声が増えているのは何故なのでしょうか。翻訳会社が作り上げる訳文がダメだということも無さそうです。

マッチしているときとそうでないときがあるということは、ドキュメントによってかなり訳し方が違うということが分かります。特に冒頭のお客様のコメントで多いのは、どちらかというとマーケティング資料(カタログや Web など)に対してです。

これは、「読み手にしっかり伝わる文章を作りたい」「伝わらなければ意味がない」というリクエストがより強く出てくるドキュメントは、マーケティング資料が多いためです。

ここに、今回のテーマの答えがありそうです。

最近では、 Web サイトの翻訳やローカライズにおいて、テキスト(文章)はますます重要な位置づけを占めており、そこにフォーカスした翻訳サービスをご提供する必要があります。

仮に英語が原文だとした場合、それをそのまま日本語に翻訳しただけでは、Webサイトには適さない翻訳になってしまうこともあるでしょう。これは日本語から英語への翻訳でも同様のことが言えます。

特にキャッチコピーのようなものは、字面を追いかけて翻訳するくらいなら、英語のままにしておいた方が「カッコいい」場合もあります。

クリエイティブに翻訳するということ

ひとつの解決策として、弊社では、「通常の翻訳以上、ライティング未満」という位置づけで「クリエイティブ翻訳プラン」をご用意しています。

コンテンツ向けクリエイティブ翻訳プラン

https://www.trivector.co.jp/service/contentstranscreation/

SNS向けクリエイティブ翻訳プラン

https://www.trivector.co.jp/service/snstranscreation/

「翻訳を超えた翻訳」を作ることが唯一の解決策

このように、マーケティング関連のドキュメントは、ますますテキストが重要となっています。

例えるなら、「翻訳を超えた翻訳」を作ることです。これが SEO 対策としても重要ですし、何よりもっとも大切なのは、そのテキスト(文章やキャッチコピー)を読んだ人が「次の行動」を起こせるかどうかということです。

  • SNS(Facebook や Instagram等)の広告を見て、クリック(タップ)するかどうか
  • コンテンツを読んで問い合わせするか、申し込みをするか、購入するかどうか

まとめ

「原稿の意味を汲んで翻訳してほしい」というご要望にお応えする解決策としては、

  • ドキュメントの性質や特徴をつかむこと
  • そのドキュメントに合った表現や言い回しをすること
  • それは翻訳を超えた翻訳、つまり「クリエイティブな翻訳」をするということ

と言えます。

せっかくお金を払って翻訳するのですから、「翻訳はコストではなく、プロフィットである」という観点から効果的な翻訳を行っていただくことをお薦めします。