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ChatGPT と DeepL が当たり前の未来

2023年の大きなニュースのひとつに、あらゆる業界を騒がせている ChatGPT を代表とする生成 AI があります。事実、最近はお客様からも質問されるようになりました。

特に翻訳については、DeepL のような精度の高い機械翻訳の台頭もまだここ最近にもかかわらず、さらに ChatGPT の登場です。今後いったいどうなるのか、考えてみたいと思います。

ChatGPT を代表とする生成AI が翻訳する世界

ご存じの通り、ChatGPT は翻訳だけができるわけでありません。翻訳をはじめとした言語サービスは将来どうなるのかを ChatGPT に質問してみました。(ChatGPT 4を使用)

ChatGPT の回答は以下のようなものでした。

いかがでしょうか。

まず前提として、ChatGPT の答えをそのまま受け止める必要はありません。なぜなら ChatGPT は、過去のデータを参照して回答を作るからです。「この先どうなりそうか」という問いに対して過去のデータを参照して予測することは非常に重要ですが、未来は時にそれだけではない可能性があるからです。

一方で、ChatGPT の回答には一定の説得力があるのも間違いありません。例えば、大昔には、翻訳依頼のあった Eメールの翻訳などは現在では、DeepL などを使えばお客様側で簡単に行うことができます。ChatGPT の回答にあるように「日常生活などの基礎的なコミュニケーションなら機械で十分」と考えている方がほとんどではないかと思いますし、また事実そうなっていくのではないでしょう。

変化する翻訳ニーズや専門性

日常生活で使えるようになったからと言ってビジネスの現場すべてで使えるかどうかは別の話です。

そこで気になるのは、専門的な分野や先進的な分野など、よりビジネスに近い部分のコミュニケーションがどうなるかということです。これも合わせて ChatGPT に聞いてみました。

このように、ChatGPT 曰く、現時点では完全に置き換えられることはないという結論のようです。また翻訳や通訳だけではなくプログラミングやエンジニアリングについても応用可能であるはずなので、ChatGPT を使って DeepL のようなシステムを開発することもできるのではないかという素朴な疑問をぶつけてみました。

なるほど、やはりプログラミングやエンジニアリングという側面であっても、AI だけではまだ限界があるという回答です。人間が必要とされる「要件定義」や「クリエイティビティ」などはまだまだ AI には及ばないということです。

ちょっと意地悪ですが、さらに質問を重ねてみました。

謙虚・・・というか人間の存在意義を示してくれるような回答でした。

翻訳に関してもプログラミング/エンジニアリングに関してもですが、やはり「人間がいなければならない」という回答を返してくるわけです。そしてそれをどう捉えるかは私たち次第ではないかと思います。

「上手に」使い分ける人や企業が得をする

ここまで見てきたように「AI だけの未来」というよりは、まだ現時点では「AI +人間の未来」のほうが現実的のようです。

これはある意味で分かり切っていた結論ですが、大切なのは「上手に」使い分けることです。

Translation Memory が全盛の時代には「何でもかんでも TM に取り込めばいい」という発想をする企業がありました。

そうすることでマッチ率が高まり、翻訳コストは下がるからです。ところが TM の重要な要素のひとつである「一貫性のある品質」を見落とし、あるいは無視してしまいました。

TM の中にある文章を「そのまま使用することができる」のは便利な機能ですが、どんなドキュメントでも必ずしもその文章が「そのまま使える」訳ではありません。原文がマッチしているからそれをそのまま使えると考えるのはいささか乱暴ですし、事実、いずれかの工程で文章を修正することも多くありました。

つまりこの時点で TM の利便性を失っているわけです。

コスト重視の中で、明らかに文脈(コンテンツ)に即していない文章を取り込むことでリーダビリティを失うということは往々にして起きています。

企業戦略上、コスト重視は致し方ないという点もあるかもしれませんが、今回の機械翻訳や生成AI はより大規模で広範囲に(翻訳やローカライズの知識や経験がない企業にも)影響を与えているからこそ、前述のように「コストも下がるし、翻訳できているから問題ない」という流れになるのではないかと思います。

「何でもかんでも DeepL や ChatGPT で翻訳できる」という発想は、残念ながらそこに一抹の不安を抱かざるを得ないのです。

ChatGPT  や DeepL の特性を理解して使用できる企業こそが、その恩恵に預かるのではないかと思います。

生成 AI や DeepL の上手な使い方

MT+PE として使用/活用する

弊社でもご相談が増えておりますが、一番はやはりこれではないかと思います。機械翻訳をした文章をそのまま使うリスクを考慮すると、結局全部チェックしなければならず、しかしながらそのリソースを割くことができないお客様は、チェックやポストエディットを弊社に依頼するという流れです。

これはお客様の言葉を借りると

「仮に 機械翻訳の 99パーセントが正しかったとしても、残り1%にミスがあるなら全部チェックしないといけない」

ということです。

※内部資料ならまだしも(ダメですが)、外部に公開するドキュメントであれば上記は絶対に許されることはではありません。

機械翻訳+ポストエディット

機械翻訳の問題点を解決するポストエディットとは

大量のドキュメントの処理や意味を捉えるために活用する

一昔前は、マニュアルの翻訳といえば SDL TRADOS を代表とする翻訳支援ツールをメインに展開していましたが、現在はマニュアルそのものの翻訳ニーズが減少していること、Web やマーケティング資料の翻訳などが増えていることもあり、大量のドキュメントを高速で処理するというケースが少ないのですが、それでも一定の需要があります。

そういった際には、DeepL のような機械翻訳は有効に活用できます。

また一方で、「ひとまずどんな意味なのかを知りたい」という点にフォーカスすると、これらも機械翻訳や生成AI で意味を捉えることは可能です。

このように、それぞれのケースに応じて使用するかどうかを決めるべきなのです。通り一遍に何でもかんでも機械翻訳をしてしまうと、後になってそれなりのリスクがあるという事を自覚しておく必要はありそうです。

「正しい使い方」はありませんが、「上手な使い方」はあります。

そういった点において翻訳会社の持つノウハウや知見は役に立つのではないかと思いますので是非お気軽にご相談ください。

ローカライズ費用は外資系企業にとってコストなのか、投資なのか

ローカライズ費用

「本当は翻訳したいのに予算が下りないんです」

外資系のお客様とお話ししているとよくこのようなご相談を受けます。予算次第、というのはどんな仕事でもよくある話ですが、少なくともグローバル企業の日本支社であるにもかかわらず、ある程度の予算が下りないというのはなかなか解せません。そこには、何らかの理由があると考えるのが妥当です。

一方で企業には仕事の優先順位があります。例えば日本に進出してきたばかりであればむしろ投資すると考えるのが普通でしょう。

しかし、お客様に色々とお話を聞いているとどうやら物事はそんなに簡単ではないということが分かってきます。

そもそもなぜ外資系企業はローカライズをするのか

今さら何を、という話ですが、「ローカライズを行うのはなぜなのか」を理解しておかなければなりません。この答えは簡単です。

「日本人ユーザは日本語を読みたい」からです。

もっと言えば、日本語版のドキュメンテーション等がないと、日本ではなかなか受け入れられにくいという側面すらあります。

※これは弊社が翻訳会社として仕事してきた18年以上もの間、何も変わっていません。(変わっていないからこそ翻訳というニーズが拡大している訳ですが)以下の記事は5年以上前に書いたものですが、本質はいまだ変わっていないことを痛感します。

なぜ翻訳するのか?

もしあなたが外資系企業の日本支社長であれば、日本でのプロダクトの拡販は当然ながらミッションに含まれているでしょうし、設定した売上を立てることは当然の必達目標でしょう。

それをどうやって実現するか=つまりどのように認知してもらい、さらに購入して使ってもらえるかを考えたとき真っ先に浮かぶのは「ローカライズ」ではないでしょうか。

ローカライズ費用は企業にとってコストなのか、投資なのか

外資系企業の場合、予算の獲得にはいくつかの傾向があります。

ローカライズのコスパをシビアに求める外資系企業の本社

コストパフォーマンス

これは各外資系企業によりますが「〇〇円投資するなら、〇〇〇〇円のコストパフォーマンスがなければならない」という本社から指示される会社もあります。

この場合、日本の支社長や担当者は予算を出してもらうためにこの根拠を作らなければなりません。これはなかなか骨の折れる作業です。もちろん適当に回答することはできませんし、かといって誇張することもできません。

初めてのローカライズでは前例が無いため、そもそも「読み」ができません。そのため正確にコストパフォーマンスを出すのが難しい状態です。

しかし本社からその精度を求められると、緻密な設計が難しいため、なかなか前向きにローカライズしましょうという結論は出にくいのは容易に想像できます。

結果をシビアに求められてしまうと(達成できるかどうかは分からないため)ローカライズは見送りになり、英語版のままユーザに提供されたり、営業ツールやマーケティングマテリアルも英語のままになります。

そして(それらも原因の一つと言えますが)日本人ユーザに英語は敬遠されるため、売り上げがなかなか立ちません。

グローバルマーケティングを行う外資系企業

またコスパというよりは「グローバルマーケティング」を行う外資系企業も多く存在します。グローバルマーケティングとは、全世界を市場として捉えるため、ローカライズに比べて各国の自由度は低くなります。

外資系企業では「中央集権化されたマーケティング」とも呼べるため、ブランド統一などには強く作用しますが、各国個別の事情にマッチするかどうかはかなり微妙なケースもあります。

ローカライズを「投資」と考える外資系企業

投資としてのローカライズ

一方で、ローカライズを行うことを投資と考える企業も多く存在します。彼らの場合にはローカライズをすることで認知されやすくなり日本市場で受け入れられやすく、営業もしやすくなるので購入にもつながると考えているわけです。

また投資と考える企業は、プロダクトそのもののローカライズだけではなくドキュメンテーションのローカライズもきっちりと行い、その国のユーザに寄り添った形でビジネスを展開していきます。

※ただしそれに伴った売り上げが達成できない場合には、ローカライズそのものが中止になったり、最悪の場合には日本市場からの撤退もあります(これは事前にサンクコストを算出しておき、撤退ラインを決めておくことで対応します)

※一般的に、日本企業が海外展開する際なども共通して言えるのはその国をしっかり調査し、ターゲットを定め、自社のプロダクトやサービスをまとめてローカライズしています。やはり「郷に入りては郷に従え」という点は無視することができません。ユーザニーズにマッチしないプロダクトやサービスは売れませんし、強引に売ったとしても長期的にはブランドが失墜するだけです。

ローカライズにかかる費用はそのマーケットに対する、本社の明確な意思表示

このように、結局のところは「本社が日本市場をローカライズ対象地域として捉えているかどうか」という価値観が如実に表れていると言えます。

日本の担当者や支社長は日本市場が魅力的であること、だから投資としてのローカライズ費用を出してほしいというアピールや交渉を粘り強く継続していく必要があります。

中には年単位でアピールをし、予算を獲得しているという担当者も存在しますが、本社側から見れば「売れてない市場なら投資しない=コストは押さえたい」という点に帰着してしまうこともあります。

まさに「卵が先か、鶏が先か」状態なのです。

つまり「売り上げるために投資する」と「売上がないから投資しない」は表裏一体であり、各社がどちらにフォーカスしてビジネスを展開すべきかの姿勢が出ているということでしょう。

ローカライズ費用を抑えつつ効果を出すために日本支社としてできること

前述のように、ローカライズにかかる費用を本社から獲得した後、それを使って最大の効果を出すためにには一体どうすればいいのでしょうか。弊社のこれまでの経験上、いくつかのパターンに分けることができます。

必要な個所を厳選してローカライズする

必要な個所をローカライズ

限りある予算の中で日本のユーザにとって本当に必要なものだけを翻訳していきます。リーンスタート、スモールスタートという観点からも理にかなっていますので、まずはここから小さな実績を作ることを目指しましょう。

販売代理店と契約して「テコの原理」を使う

販売代理店と契約

外資系企業が複数の販売代理店と契約することで、彼らに提供する販促ツールやマーケティングマテリアルと厳選し同じものを提供しますが、販売代理店が営業活動を行うことでテコの原理を軸に、1社で行うよりも早くリードを獲得することができます。

自社で直販するためのローカライズよりも、スピーディにマーケットになげかけることができるため効率的です。

オリジナルコンテンツを作る

オリジナルコンテンツ

ローカライズの一環として日本独自のコンテンツを作ることもできます。プロダクトに絶対に必要な UI の日本語、ドキュメンテーションの日本語、また営業ツールとしてにコンテンツ制作(日本での導入事例やインタビュー)などです。

まとめ

このように、外資系企業のローカライズ業務というのは、翻訳の仕方などのローカライズ作業そのもののポイントもさることながら、予算獲得にまつわる動きが重要であり、優秀な日本支社の担当者は「本社から予算を引っ張ってこれる人物かどうか」というのもポイントになります。(まるで政治家のようですが)

それを適切な個所に配分、投資することによって日本語版を提供し、売上を作っていくことができるわけです。

ビジネスを展開しスケールさせるにはやはり投資が必要であり、それは中長期、短期と両方の視点がありますが、どちらも継続しなければならないと感じています。実はこれは海外から日本進出だけではなく、日本から海外展開という場合も同様です。

これらは翻訳会社という見地からだけではなく、すべての企業が考えなくてはならないテーマなのではないかと思います。

外資系企業での翻訳、ローカライズ業務の進め方

弊社ではWebサイトをはじめ、外資系企業様の日本進出の足掛かりとなるローカライズサービスをご提供しております。

ご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。

インフォグラフィックスの種類と作成方法

インフォグラフィックスの種類と作成方法

インフォグラフィックスとは

インフォグラフィックス(infographics)とは、イラストやチャート、表やグラフ、ピクトグラム、年表、地図などのことを指し、これらを使用することでより視覚的に情報を提供し、読者の理解度を上げることができます。

文章だけのコンテンツよりもインフォグラフィックスと併用したほうが読者の印象にも残りやすく、伝わりやすくなるため大変有効なツールです。まさに百聞は一見に如かずです。

インフォグラフィックスは、Web コンテンツや、カタログ、取扱説明書、動画などあらゆるメディアで使用できるため、インフォグラフィックスの理解を深め貴社についてしっかりと伝えていきましょう。

インフォグラフィックスの種類

インフォグラフィックスには以下の種類があります。

  • イラスト
  • チャート(フローチャート)
  • グラフ(円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフなど)
  • ピクトグラム
  • 年表
  • 地図

それぞれについて解説します。

それぞれのインフォグラフィックスの特徴と効果

イラスト

イラスト

イラストはイラストレーションの略称で、挿絵のことを言います。フリーで使える「いらすとや」などはとても有名です。イラストは文章ではイメージにしにくいものを挿絵として表現することで、読み手に共有のイメージを持ってもらうことができます。

いらすとや

https://www.irasutoya.com/

チャート図(フローチャート)

フローチャート

チャート図とはフローチャートようなものです。例えば、作業手順をチャートにする場合、各ステップを四角+テキストで表し、矢印でそれらをつなぎ、流れを表現することによって手順が分かりやすくなります。

表

様々な情報を整理し、縦と横のマトリクスにして表現します。数値をはじめとした様々なデータを一覧できるのが強みです。

グラフ(円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフなど)

グラフ

グラフは、関連する情報を整理し、表よりもさらに図示します。円グラフや棒グラフ、折れ線グラフで表現することによって割合、比率、経緯などを分かりやすく伝えることができ、読み手の理解度を上げることができます。

ピクトグラム

ピクトグラム

ピクトグラムとは、トイレの男女マークは非常口のマークなど、文字情報が読めない人でもその絵を見れば理解できるというものです。言語のない状態でも共通の概念さえあれば、ピクトグラムで十分通用します。東京オリンピックではピクトグラムをテーマにしたパフォーマンスも好評でした。

Breathtaking Pictogram Performance at Tokyo 2020 Opening Ceremony | #Tokyo2020 Highlights

年表

年表

年表は年代に沿って、出来事を順番に記載した表のことであり、ビジネスでは会社の歴史やプロダクトの変遷などで使用されます。

地図

地図

会社までのアクセスやお店までのアクセスなどは地図で表現することで読み手に分かりやすくなります。どの程度デフォルメするかなどは、その用途や想定読者によって変わります。

インフォグラフィックスの作成手順

インフォグラフィックスの作成方法と手順について解説します。

テーマとペルソナの設定

ペルソナの設定

何を伝えたいのかというテーマ、誰に伝えたいのかというペルソナを設定します。これが無いと、とにかくオシャレな感じにしたい、自分が好きなデザインにしたいということだけが優先されてしまい、本来の目的を失ってしまいます。

伝えたい情報を整理する

情報の整理

どういう内容を盛り込みたいのか情報を整理します。このインフォグラフィックスを見て何を伝えたいのかを言語化します。

どのインフォグラフィックスが向いているかを検討する

インフォグラフィックスの選択

情報が確定したら、それを最大限に表現できるインフォグラフィックスはどれがいいのかを検討します。例えば、ある数値の割合を目立たせたい場合には、パーセント表示ではなく、円グラフにしたり、時系列のデータを表現したい場合には単純な表ではなく折れ線グラフにするなどです。

インフォグラフィックスの作成ツール

最近ではインフォグラフィックスを簡単に作ることができるツールが沢山ありますので、それらを利用するのもひとつの手でしょう。

Canva

Adobe Express

 

インフォグラフィックスのローカライズ

弊社の場合、インフォグラフィックスをゼロから作成するだけでなく、すでにあるインフォグラフィックスをローカライズするというケースも多く存在します。これは翻訳と同様ですが、以下の手順で進めていきます。例えば、US本社で制作されたインフォグラフィックスを日本市場向けにローカライズする場合、以下の手順となります。

インフォグラフィックスのローカライズ手順

特にローカライズで重要なポイントは、「情報の取捨選択」です。例えば本社では必要と思われる情報も(法的、商習慣的などの理由で)日本市場ではマッチしないこともあります。

そうであればその分、日本独自の情報を入れたほうが良いケースも多く、弊社では構成を考えるところからお手伝いさせていただきます。

動画による翻訳・通訳・ローカライズ解説

Youtube 動画による「失敗しない」翻訳・通訳・ローカライズサービスの選び方や発注方法などについてお伝えしております。

No.1 翻訳業界の構造とは

【翻訳 発注担当者向け】翻訳業界の構造とは?

関連ページ:翻訳業界と翻訳会社

翻訳業界と翻訳会社

No.2 字幕翻訳のポイントとは

【翻訳 発注担当者向け】字幕翻訳の発注のポイントとは?

No.3 翻訳会社の3つのカテゴリーとは

【翻訳 発注担当者向け】発注前に知っておきたい 翻訳会社の3つのカテゴリーとは

No.4 翻訳発注時に失敗しない 3つのポイント

【翻訳 発注担当者向け】翻訳発注時に失敗しない 3つのポイント

【徹底解説】Web サイト翻訳の見積もり依頼の方法

スタッフ N です。

昨年来、コロナ禍で Web からのリード獲得やコンバージョンに注力される企業様が増えており、弊社にもコロナ前と比べ 3 倍近くの Web サイト翻訳のご相談依頼が続いております。

様々なご相談をいただいておりますが、その中でも特に最近になって Web に力を入れ始めたお客様の場合、翻訳やローカライズのお見積りを作るにあたり、必要な情報が不足してしまい、やりとりにお手間をかけてしまう上、正確なお見積りをお伝えできなかったというケースもあります。

一方で、Web サイトの翻訳についての相談ポイントを正しく知っておかないと、発注後に齟齬が起きてトラブルになってしまう可能性があります。

そこで今回は、発注後のトラブルを防ぎ、お見積段階から納品まで、正しくスムーズにプロジェクトを実行していただくための方法をご紹介します。

翻訳の見積もりに必要な6つのポイント

外資系企業のための CMS を活用した Web サイトローカライズ

Webサイトの翻訳で最も多い見積依頼の4パターンとは

翻訳のお見積り依頼をいただく際に、ほとんどのお客様が以下の 4パターンのいずれかでご相談いただくことが多くなっています。

  • 翻訳対象の Web サイトの URL を送る(トップページの URL のみ)
  • 翻訳対象ページの URL だけを送る
  • 翻訳対象の Web サイトの URL と文字数を伝える
  • 翻訳対象となるテキストを Word か Excel で送る

上記のパターンにはメリットデメリットがあります。以下に解説します。

1. 翻訳対象の Web サイトの URL を送る(トップページ URL)

お見積り依頼時に翻訳対象の Webサイトのトップページの URLだけを送るパターンです。

問い合わせ例:

https://www.trivector.co.jp/

「上記サイトのお見積りをお願いします」

一番多いのがこのパターンでのお見積り依頼です。確かに、URL をコピペして、メールに張り付けて送信するだけなので非常にスピーディで楽です。しかしお見積もりの精度としては、これがもっとも精度が低くなってしまいます。

  • 翻訳対象となるページが正確ではないため、対象ページに見落としや抜けが出る可能性がある
  • 画像や動画などが含まれる場合の確認をしたり、その分、抜けや漏れが出る可能性がある
  • 基本的に Web サイト内のテキストをコピペして分量を算出するが、コピペ防止の Web サイトの場合は取得できない
  • 逆に翻訳対象外にもかかわらず、不要な個所を含めてしまい見積もり金額が上がってしまう
  • 見積もり前の確認作業が増えるため、見積もりを出すまでに時間がかかる(翻訳会社によっては対応不可、もしくは別途作業費がかかるケースも)
  • 翻訳対象に抜けがあった場合、追加費用が発生し、ローンチスケジュールに間に合わない
  • Web サイトを元に見積もりした時から内容が更新されることもあり、見積もりの精度が落ちる

2. 翻訳対象ページの URL だけを送る

問い合わせ例

https://www.trivector.co.jp/

https://www.trivector.co.jp/service/

https://www.trivector.co.jp/service/beforeorder/

https://www.trivector.co.jp/feature/

https://www.trivector.co.jp/brandoftranslation/

「上記のURLのお見積りをお願いします」

これは 1 番とほぼ同じですが、最初の「翻訳対象となるページが正確ではないため、対象ページに見落としや抜けが出る可能性がある」という点は防ぐことができます。しかし、それ以外については同様の理由により不明確な点が多くなります。

3. 翻訳対象のWebサイトのURLと文字数を伝える

問い合わせ例

https://www.trivector.co.jp/  (200文字)

https://www.trivector.co.jp/service/(300文字)

https://www.trivector.co.jp/service/beforeorder/(180文字)

https://www.trivector.co.jp/feature/ (2,000文字)

https://www.trivector.co.jp/brandoftranslation/  (780文字)

合計:3460 文字です。上記の URL のお見積りをお願いします。

あらかじめ分量と内容がわかるため、お見積りは比較的早く提出できますが、いくつか注意点があります。

  • お客様による分量の算出方法に誤りがないか、実際の原稿を Word か Excel でお借り次第、再度見積もり
  • 実際の作業時は Word か Excel で支給してもらう必要がある(これができなければ、1 および 2 と同じリスクが発生する)

1 番や 2番よりはリスクは減りますが、最も安全とまでは言えません。最後にお勧めする方法がもっとも安全で正確な見積もりを作ることができます。

4. 翻訳対象となるテキストを Word か Excel で送る

問い合わせ例

添付のエクセルに、翻訳対象のテキストを URL ごとに記載してあります。こちらのファイルを元に、お見積りをお願いいたします。

この方法が一番安全かつ、正確にお見積り作ることができますし、以下のメリットを享受することができます。

  • 見積もりをすぐに作ることができる
  • 対象箇所に誤りが出にくい
  • ファイルに上書き、または併記にして納品できるためお客様側で最終確認をしやすい
  • 多くの翻訳会社の見積もりの基本算出方法である「分量×単価」の「分量」を正確に出しやすい
  • 明らかな不要箇所(重複しているヘッダー、フッターのメニュー、URL・電話番号など)を特定できるため、コストを抑えられる

それぞれの特徴(まとめ)

上記の内容を表にまとめるとこのようになります。

それでもスピーディで楽な方法が良い?

前述のように実際に多いお見積り依頼はスピーディで楽な 1 番のパターンです。パッと URL をコピーしてメール送るだけですから、急いでいるときは特にそうしたくなると思います。

ただこれまでお伝えしてきた通り、結局、その後、翻訳会社から翻訳対象箇所の確認の連絡があったり、どこまで作業するかといった条件の確認があるので、それらのやり取りの時間を考慮しトータルで考えると、むしろこちらのほうが時間がかかってしまったというケースもあります。

つまり、1 番~3番目までの方法は実際には「楽」ではなく、「楽」に見えるだけで、最終的にはお客様側のご負担が大きくなってしまいます。

ましてや、もし貴社が、その先のお客様から Web の翻訳相談を受けていれば、貴社だけではなく貴社のお客様にもやり取りのご負担がかかってしまう可能性があります。

そういったことを防ぐために、ぜひ 4 番目の方法をご検討いただきたいのですが、そうは言っても「実際にやるかどうかわからないのにそこまでは準備できない」というご意見もあるでしょう。その場合には以下の条件で、概算お見積りをお渡しすることが可能です。

概算見積もりについて

お問い合わせいただく際に、よくあるのは以下のようなご意見です。

「まだやるかどうかもわからないから、Word や Excel の準備はできない」

とりあえずどのくらいの金額と作業期間がかかるのか目安が知りたいだけ

確かにこのような場合には、Word や Excel をわざわざ見積もり時点で準備するのは難しいと思いますし、弊社でもそのような場合は、「何が何でも Word や Excel で支給してください」とは申し上げません。

ここまでにお伝えした URL 等でのお見積りの精度のご説明を差し上げ、あくまで概算見積であり、正式なお見積りは諸条件がはっきりした時点で作り直すという前提で概算見積もりを準備しますのでご安心ください。

翻訳会社にはこの順番で問い合わせよう

上記の優先度に応じて翻訳会社に問い合わせると概算見積もりとはいえ、それなりの精度の高いお見積りを取ることができます。

TRADOS などの翻訳支援ツールではだめなのか

また Web サイトの翻訳を行う上で、翻訳支援ツールを使用してお見積りを作るというケースもあります。

※Web サイトコンテンツのようなマーケティングマテリアルについて、TRADOS を代表とする翻訳支援ツールを使用すること自体の信頼性がどうなのか、という点は今回は割愛します。

あくまでお見積りを作成するという点において考えると、結局のところこれも同じことです。

お見積金額や納期に関わってくるのは、ツール使用の有無でなく、「翻訳対象箇所を具体的に指定できるかどうか」だからです。

「なんとなくこのあたりを見積もって」ということであれば、TRADOS を使っても正確にはカウントできません。そのため、こちらも概算お見積りとして使用することはできても、対象範囲をはっきりさせることがより重要だと言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。翻訳の見積もりをとるに限らないのですが、結局のところ、「最初に手間をかけるか、後で手間をかけるか」という点が重要だということです。

確認作業を減らし、正確で安全なお見積りを翻訳会社からとることを目的にしますと、「仕事は準備が7割」と言うくらいですから、やはり事前にファイルを整理していたただくのが最も効率が良いと言えます。

今後もコロナウイルスの影響はまだまだ続きそうですので、Webサイトに注力される企業様は増えていくでしょう。そういったお客様のために、弊社で少しでもお役に立つことができれば何よりです。今回の記事には書いていないようなケースもあるかと思いますので、こういう場合は?これはどうなるの?これもできる?などなど、ご質問等ありましたら、遠慮なくお気軽にお問い合わせください。