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これからはハイコンテクストとローコンテクストのコミュニケーションを使い分けて成果を出す時代に

グローバル化した世界では、多種多様な人々との交流が必須になります。またグローバル化によってコミュニケーションも形を変えています。言い換えれば、slack や skype などのチャットツールだったり、ZOOM だったり、様々なクラウドサービスだったり、スマホを使えばすぐに海外の人々とコミュニケーションを取れる時代だということでしょう。

日本は島国であり、「ガラパゴス」と揶揄されています。それは他国と異なり、自然と日本人以外の人種の方々とのコミュニケーションを最小限にしていたことにも起因します。

そしてそのことによって日本語の特殊性がより一層際立っている事実があります。「日本はハイコンテクスト文化、ハイコンテクスト社会だ」と言われる所以です。

今回はこの「ハイコンテクスト」と対極となる「ローコンテクスト」の 2 つのキーワードに迫ります。

ハイコンテクスト、ローコンテクストとは何か

まず初めに「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」とは何かを解説します。

「コンテクスト」とは、「文脈や背景」と訳されますが、つまり言外の部分=「文化、慣習、知識、価値観」などのことを指します。

「ハイコンテクスト」とは、「コンテクスト」が共通認識となっている状況であり、この場合には、すべてを言葉にする必要がなくともお互いに理解し合えるので、ハイコンテクスト文化と呼ばれます。

一方、こういった背景が共有できていない場合には、すべて言葉で説明しないといけないため「ローコンテクスト」と呼ばれます。これは例えば様々な人種がいるアメリカのような国の場合は、背景がそれぞれ違うので「言わないと理解してもらえない」ということです。

 ハイコンテクスト社会ローコンテクスト社会
背景・単一民族、単一国家である意味でクローズドな環境
・醸成される価値観などが似通っている
・移民や他の人種が極端に少ない
・様々な人種が住む世界
・文化や歴史的背景が多様
・価値観も多様
特長・言葉ですべて説明しなくても意思疎通しやすい
・間接的な表現が多い
・「空気を読む」ことができる
・「察する力」が必要とされる
・きちんと正確に意図を伝える必要がある
・相手に敬意を払いつつ直接的な表現を使う
・言わなかったことは言わない方が悪い
・察するよりもきちんと伝える

ハイコンテクスト文化からローコンテクスト文化へのシフトはすでに始まっている

このように「はっきり具体的に伝えないと相手には伝わらない」というのが「ローコンテクストの社会」です。

そしてご存知の通り、世界はローコンテクスト社会です。

しかし残念ながら私たち日本人は、このローコンテクストが非常に苦手なのです。「ツーカー」という言葉や「阿吽の呼吸」という言葉、または「空気を読む」などという日本語があるくらい、日本語というのは、「言外を察する」ことを求められていますし、私たちはそれに慣れ切っています。

受け手の解釈に委ねられている部分が大きいとも言えます。(「気が利く」というのは褒め言葉ですが、まさにハイコンテクストならではでしょう)

ところが、世の中は多様化しています。日本だけで考えても明白でしょう。

その変化スピードは落ちるどころかますます早くなる一方です。日本の中でも世代によっては価値観がまるで異なっています(働き方ひとつとってもそう)し、歴史的側面からも考え方が違えばハイコンテクストな状態を維持するのは難しくなっています。

これは世界基準で見れば、当然前述のようにローコンテクストですから、日本国内でも、きちんと説明しなければならない世界に傾いているということです。

つまり受け手ではなく、話し手側が、必要な情報を必要なタイミングで必要な量を提供しなければならないということです。

参考:落ちぶれるハイコンテクスト人材、台頭するローコンテクスト人材

https://diamond.jp/articles/-/186382

「コミュニケーションの欧米化」と「察する時代」の終焉

これまで述べてきたとおり、コミュニケーション自体が欧米化(=ローコンテクスト化)しているということです。

例えば、海外の、特に欧米で作成される契約書はとても厚さがありますが、これは契約時に誤解を無くすためであり、「すべて文字にして書いておく」のは当たり前というひとつの好例ではないでしょう。

そして日本でもインバウンドブームしかり、外国人労働者しかり、このグローバル化=ローコンテクスト化の波は確実にやってきています。

今までは「アレ、やっといて」で済んでいたものが「いつまでに、どうやって作業してほしいのか」ということを確実に伝えなければなりません。

これは日本人にとってみると大変煩わしい部分もあります。しかし、(繰り返しますが)誰もが「空気を読む」ことはあり得ないですし、「察する」という行為が通用しない時代なのです。

つまり、個人の価値観が多様化しているということなのです。

ローコンテクスト社会に適応するために

ローコンテクストな社会では、「1から10まで誤解を生まない表現で説明をする」必要があります。

私たち日本人はなかなかこの発想になれませんが、この根底には「自分と相手は違う」という価値観があります。この部分は、コミュニケーションの根幹でもあり、これまでのコラムでも何度も述べてきました。

上手なコミュニケーションをとるための要諦とも言えますが、「価値観の違いを認める」ところがスタートなのです。

コミュニケーション能力の高い人が行っている6つの行動

 

コミュニケーションが「うまくいく」ときの 5つの要素

 

「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した人の話

 

これらのコラムでもポイントは「自分と相手が違う」という前提です。だから「価値観も違う」という理解です。

これが完全に欠落してしまっている場合、いったい何が起こるのか想像してみましょう。

話し手は、受け手の知識や経験を考慮することなく、「自分の話したい順番で、略語を使い、相手の理解度を確認せずに、主観と客観を混在させ、一方的に、話す」ことになります。

そして、話したほうは満足します。「全部伝えることができた」と感じます。

一方、受け手が上述の前提を理解していない場合、話している内容以外の話し方や素振り、態度ばかりに目が行ってしまいます。

ときには「この人、本当は違う意見なのではないだろうか」といった(ある種)勘ぐってしまうような心理が働いてしまいます。

※コミュニケーションにおいてノンバーバルな部分は言語よりも多いので、あながち間違ってはいないのですが、これが過度になると「察する」ことばかりに意識が向いてしまい、肝心の部分を聞き逃してしまうことにもなりかねません。

これは、受け手が(勝手に)想像力を駆使するから、誤解が生まれてしまうケースです。

そしてこれがこれまでの日本社会のコミュニケーション方法だというのは誰しも経験があるでしょう。

では、こういった無駄なトラブルを回避し、ローコンテクスト社会に適応するためにはどうすればいいのでしょうか?

実は、簡単に実践できます。

1. テンプレートやフォーマットを用意する

ローコンテクスト社会では、「言わないと伝わらない」ため、必然的に話し手の責任が大きくなります。これは先ほどの契約書の例と同じですが、説明する量が圧倒的に増えるのです。説明責任が大きくなると言えます。

これは、ビジネスでは上司が部下に伝えるときがイメージされやすいですが、ホウレンソウにおいては、部下から上司への説明でも同様です。

徹底的な「ホウレンソウ」でコミュニケーションを活性化する

 

「正確に伝える」ことがビジネスで成果をあげる上で非常に重要になります。正確に伝えるために、いつでも同じ品質で行動するためには、報告する項目をテンプレート化したり、フォーマットに則って話をするということが考えられます。

どんな人でも、このルールさえ守っていれば一定の品質で情報を伝えることができますし、受け手も安心です。

まず、同じ部署、同じグループといった数人でスタートしてみましょう。

これなら明日からと言わず、今日からでも実践できるでしょう。最近は、チャットツールなども沢山ありますので、これらをカスタマイズしたりすれば、すぐに実践できますし、さほど追加コストもかかりません。

2. 運用ルールを徹底する

テンプレートやフォーマットを準備したら運用ルールを定めます。この「フォーマットに則って報告すること」が絶対です。例外はありません。例外を作った時点でルールではありません。

またルールを破った場合には何らかのペナルティを課しても良いでしょう。全員で「テンプレートで基本的なコミュニケーション取るのだ」というルールを徹底するためです。

これには聞き手も話し手も関係ありません。どちらの立場の場合も順守します。

3. 業務マニュアルなどに集約し発展させる

ルールを徹底するとスムースに運用できるようになります。そしてローコンテクスト社会でのコミュニケーションに慣れて来たら、それらを拡大させるために業務マニュアルに落とし込んでいくことが必要です。

このようにして、グループや部署から事業部、全社、世界へと展開していきます。ローコンテクスト社会への適応は日本人にとって決して簡単なことではありません。

しかし、徐々に変化させていくことで「習慣化」されますので、いつしかそれが当たり前になってくるでしょう。

ハイコンテクスト(日本語)からローコンテクスト(英語)にするとき、言葉を補うから長くなる

ちなみに、翻訳の場合、日本語から英語に翻訳する場合、英語の方が文章として長くなる傾向があります。これはまさにハイコンテクストとローコンテクストの文化の違いが影響していると言えます。日本語は省略できますが、英語はなかなかできません。補足する必要があるからです。

どの言語も歴史や文化の影響をモロに受けていますから、文法構造が違ったり、逆に似たような言葉を遠い国が使用していたりすることもあります。

ハイブリッド コミュニケーション

これまでローコンテクスト社会へのシフトとその対応をお伝えしましたが、日本語の良さ、日本の良さというものもできるだけ失いたくありません。

また現実的な問題として、すべてをローコンテクストのコミュニケーションで行うということは不可能ですから、私たちが意識するのは TPO に応じた「使い分け」ではないかと思います。

簡単に言えば、仕事とプライベートでの切り分けです。

仕事は、必ずその先にお客様がいます。そのお客様へ商品やサービスを提供するために、「正確なコミュニケーション」が必要になります。そのためにはローコンテクストコミュニケーションの方が安全です。

一方、プライベート、例えば家族で話をするのにローコンテクストである必要はありません。(もちろん敬意を払うという点は前提としてありますが)「アレ」「コレ」という言葉が出てきても、相手も理解できるでしょう。

また、最悪の場合、まったく理解されなかったとしてもコミュニケーション上の問題はありません。(他の問題はあるかもしれませんが)

例えば、日本のお笑いなどはハイコンテクストコミュニケーションです。もしローコンテクストになってしまえば言外の意味まで説明することになり、「オチ」が先に分かってしまったり、想像する楽しみがなくなってしまいます。

日本語の素晴らしさは、その「奥ゆかしさ」や「間接的な表現」でもあります。読み手の想像力に委ねる部分も大きいのです。だからこそ、同じ言葉を見ても、様々な感じ方ができるわけです。感性に問う言葉も多いのは日本語ならではでしょう。

日本はハイコンテクスト文化、ハイコンテクスト社会の代表格です。察したり、気を遣うというのは日本の美点だとも言えます。これがあったからこ発展したものも多くあります。

一方、ローコンテクストはこれらをすべて破壊するものではなく、相手との関係性によって使い分けることが大切です。

そして、私たち日本人は、ハイコンテクストでもローコンテクストでも、どちらの文化、世界を知っているからこそ、「ハイブリッドなコミュニケーション」を取れるのではないでしょうか。

 


5W1Hはコミュニケーションの基本

他者とのコミュニケーション、特にビジネスにおいては「言った言わない」という低レベルの話をしている時点で仕事はできないというレッテルを貼られてしまいます。

当然ながらそういったことが起きないように、議事録があったり、Slack やチャットワーク、メールなどの様々なツールがあるわけです。

これは社内外問わず同じことです。

本来、コミュニケーションにおいて抑えるポイントが分かっていれば、このレベルの話にはならないはずですが、誰でも一度は経験があるのはなぜでしょうか。日常的に起きているのは何故なのでしょうか。

相手との相性が悪いから?ウマが合わないから?

そうではありません。相性が悪いなら悪いなりの、会わないなら合わないなりのコミュニケーションの手段はあるはずです。

今回は他者とのコミュニケーションの基本となる「5W1H」について解説します。

「5W1H」とは何か

5W1H という言葉は学校の英語の授業などで習うと思いますが、ビジネスコミュニケーションでは、どれもが非常に重要です。ひとつずつ解説します。

5W は、W から始まる英単語、「なぜ(Why)、いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)」の 5つの W を取っています。

1H は、「どのように(How)」です。

※なぜ誰でも知っているような「5W1H」をわざわざ説明するのかと言えば、言葉の定義の統一を図るためです。相手(この場合は読み手)が勝手な解釈をしないために、それぞれ定義しておくことで、これ以降の説明の理解度を深める働きを持っています。

この辺りは「自分と他者が違う」という前提を持っていなければできないことですが、以下の記事も参考にしてみてください。

コミュニケーション能力の高い人が行っている6つの行動

 

このように、5つの W と 1つの H を「5W1H」と呼ぶわけですが、多くの方がご存知でしょう。しかし、これをきちんと使いこなせているでしょうか。

特に日本語は、主語が無かったり、動詞が最後に来るので結論を最後まで聞いていないといけないわけですが、そこがはぐらかされたり、言わなかったりということは多くあります。

なお、「ツーカーの仲」「阿吽の呼吸」で理解するには、相手を深く知らないといけないため、それまではしっかりとしたコミュニケーションをとる必要があります。

ビジネスコミュニケーションの「5W1H」

ビジネスでは、自分に関わる登場人物が多くなります。自分が顧客との窓口(接客や営業)であれば、相対するお客様、さらに自分の上司、上司の上司、他部署の人たち、さらにお客様が企業ならお客様の上司などなど、どんどん増えていきます。

しかも「阿吽の呼吸」仕事ができる仲間や同僚、上司、パートナー、クライアントとなるとかなり厳しいことが分かるでしょう。

登場人物が多いこと、それぞれが持つバックグラウンドが異なることなど、指数関数的に状況が変わっていきます。

このようにある種、伝言ゲームになりがちな仕事をしなければならないとき、「5W1H」が機能しなければどうなってしまうでしょうか。

以下は「5W1H」がはっきりせず起きたトラブル例です。

営業:「部長、昨日私あてに連絡があったみたいなんですけど、先日注文のあったお客さんが来週までに A 商品をあと500個追加したいということでした。」

(直属の)部長:「そうか、それは良かったな。ただ恐らく、ウチの部に A の在庫はそこまでないだろうから、在庫は管理部に聞いてみてくれ」

営業:「分かりました。確認します」

営業:「すみません、A 商品の追加の注文がありまして、500個ほどなんですが、それってそちらにありますか?」

管理部社員「A 商品ですか?ちょっと調べてみますね」

管理部社員「ああ、先週にちょうど500個注文してくださったお客様がいらっしゃって、そちらにすべて納品の手配をかけてしまいました」

営業:「ああそうだったんですか・・・それだと 500個はないですね」

管理部社員:「はい、今はありませんね。これからの生産予定を見ますと・・・えーと・・ああ、これだ、完成するのは来月ですね」

営業:「来月ですか・・・ちょっとそれだと遅くて・・・何とかなりませんか?」

管理部社員:「そう言われても無いものは出せないですしねえ・・・そうしたら、ほかの支社にあるかもしれませんが、私では分かりかねるので、部長に聞いてもらえますか?」

営業:「分かりました。お手数かけました」

営業:「部長、管理部に聞いたんですが、500個分の在庫は無いそうです」

(直属の)部長:「そうか、で、どうするつもりなんだ?」

営業:「えっ?いや、それは部長に聞いてみてくれと言われまして・・・」

(直属の)部長:「はあ?オレが分かるわけないだろう。オレは在庫管理してないぞ」

営業:「そうですよね。。。。」

これは極端な例ですが、これは Who(誰が)が曖昧なケースです。「部長」という役職名だけで会話が進んでいます。もし「○○部長」や「管理部の部長」「私の上司」などがあれば、このような勘違いはしません。

営業:「すいません、すっかり勘違いしちゃって。管理部の部長さんですよね」

管理部社員:「え?ええ・・・はい(そりゃそうだろ)」

管理部の社員も「納期はいつですか?」と聞けばよかったのですが、完成品が出来上がる時期だけを伝えて、あとは知らん振りです。

営業:「部長すいません、すでにご存じかもしれませんが、私の担当するお客様で、A商品の追加注文をいただいておりまして、在庫を確認していただいたのですが、ここにはない為、ほかの支社にあるかどうかを確認させていただきたいのですが・・・」

管理部部長:「ああ。話は聞いたよ。支社への連絡は部下にさせるが、いつまでに必要なんだ?」

営業:「はい、来週です」

管理部部長:「来週?!私は来週とは部下から聞いてないぞ」

営業:「し、失礼しました。私が伝え忘れていました。申し訳ありません」

管理部部長:「うーん、とにかく来週だったら、今週中にはどうにかして発送しないといけないじゃないか。部下からは在庫が支社にあるかどうか確認したいという事しか聞いてないんだ。そんなに急ぎなら、もっと早く言ってくれないと困るよ」

営業:「も、申し訳ありません。。。よ、よろしくお願いします」

これは、W のうち、When(いつまでに)を伝えていないために起きるケースです。直属の部長には報告してあったのですが、それで自分は報告したつもりになっており、管理部に相談するときに伝えていなかった(=忘れた、または伝える意志がそもそもなかった)ため、時間が経ってから納期が無いという事が発覚しました。

そして3日後。

管理部社員:「他の支社に当たったら、3か所分を集めれば、500個あるそうなので、急ぎこちらに送ってもらうようにしました。まとまったらお知らせしますね」

営業:「ありがとうございます!助かります(ああ、良かったー、これでお客さんに迷惑かからなくて済む・・・)」

これで何とか在庫を確保し、発送できるようになりました。めでたしめでたし・・・とはならないのが仕事です。

お客さま:「お世話になってます。この間お願いした A 商品の追加注文なんだけど、アレ、もう届いたから結構です」

営業:「えっ?まだこちらからはお送りしていませんよ」

お客さま:「いや、今日届きましたよ。今、私の目の前にありますし。間違いなく御社からですよ?」

営業:「ええ?ちょ、ちょっと待ってくださいね、、、(どうなってるんだ??)」

お客さま:「とにかくこちらはもう大丈夫なので、請求書だけ送ってください。よろしくお願いします」

あ営業:「え、ええ・・・(一体何が・・・)」

何とかかき集めた 500個分の商品ですが、すでにお客様に納品されているというのは一体どういうことなのでしょうか。

実はこれは冒頭の管理部社員との会話にヒントがあります。

管理部社員「ああ、先週にちょうど500個注文してくださったお客様がいらっしゃって、そちらにすべて納品の手配をかけてしまいました」

この「お客様」ですが、実は同じお客様だったのです。担当者がいない時に追加注文をしていたことが社内できちんと伝わっていないために起きてしまいました。

営業のいう「お客様」と管理部社員のいう「お客様」は同じ企業だったのです。

営業:「部長、先日の件ですが実はちょっと問題がおきまして・・・」

(直属の)部長:「何っ?納品が間に合わなかったのか?それとも在庫が無かったのか?」

営業:「いえ、在庫はあったんですが・・・実は、すでに500個納品されたみたいなんです・・・」

(直属の)部長:「えっ?間に合ったってことか?それは良かったじゃないか。それの何が問題なんだ」

営業:「あ、いえ、違うんです。ご相談した 500個ではなく、別の 500個がお客様のところに・・・」

(直属の)部長:「何だと?一体どういうことだ、それは・・・・!」

あくまでもこれはコミュニケーションにおいて 5W1H を理解するための例文のため、これ以降の会話は割愛させていただきます。

ホウレンソウは「5W1H」を意識して話す

上記は極端な例ではありますが、これに近い会話はあちこちで起きています。

上司への報告や相談、お客様への連絡では必ず「5W1H」にそって話をするようにします。

逆に言えば、「5W1H」のうち、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)は外すことなく伝えなくてはいけません。時間と場所、主語を取ってしまうと急にぼやけた話になり、責任の所在も曖昧になってしまうためです。

上記の例でいけば、Who=「部長」、When=「来週まで」から始まり、ミスを報告する際にも部長への報告が時系列で整理されて話されていないため、部長は「間に合ってよかったじゃないか」と勘違いしています。ミスの報告自体にミスが含まれている状態です。

お客様に対しても、社内のコミュニケーションがスムースに進んでいないのが明白です。

※実際には、在庫管理システムなどがあればこういった事態は起きないとは思いますが、コミュニケーション上の行き違いや勘違いはシステムでもどうにもできない部分があります。

徹底的な「ホウレンソウ」でコミュニケーションを活性化する

 

まとめ

「5W1H」をしっかり意識して話をするだけで、ミスコミュニケーションはかなり回避できると考えられます。

冒頭でも書きましたが、日本語は省略しても意味が通じる言語体系を持っています。そしてそれはある意味では非常に便利です。

ところが、グローバル化が進むにつれてハイコンテクストなコミュニケーションではなく、ローコンテクストのコミュニケーションが重要になっています。

様々な価値観を持つ人々を相手にビジネスをするために、キッチリ、ハッキリ伝えていかなくてはならないのです。言わなくても分かるだろという会話は、日常生活では OK でも、ビジネスでは致命的です。

それらを回避するために、「いつ、どこで、誰が、どうするのか」を間違いなく伝えることは、発信者の責任だと言えるのではないでしょうか。

そして同時に、上長はこれらの要素が満たされていないホウレンソウは、しっかりと確認する責任があります。

仕事は1つの目的を達成するためにチーム一丸となって取り組む必要があり、その潤滑油として機能するものこそコミュニケーションなのです。これをサボるというのは、必要な油を差さずに機械を動かそうとするのと同義です。

実際、機械なら定期点検やメンテナンス日がありますが、コミュニケーションにはそれがありません。だからこそ、定期点検やメンテナンスの代わりに「5W1H」をしっかり使うことが必要とされるのです。


「翻訳作業前に原稿を読まないのか?」という質問

「原稿を読まないの?」という質問

以前、あるお客様に「翻訳する前に原稿読まないんですか?」と聞かれたことがあります。(実際にご発注いただく前のタイミングです)

最初はよく意味が分からなかったのですが、「翻訳する前に原稿を全部読んで、その時点で不明な点をつぶしておけば訳文の質も上がるだろう」という意図のようでした。

このコメントをいただいたとき、正直申し上げて大変驚きました。確かにこのお客様のおっしゃっていることは(品質を向上させるという点では)理解できるのですが、現実的にこれは難しいと言わざるを得ません。

そもそも、いったいどこからどこまでの作業を「翻訳」と呼べばいいのでしょうか。

翻訳作業とは何か

これはなかなか難しいのですが、そもそも、翻訳作業とはどんな作業なのでしょうか?あまりにも根本的過ぎますが、産業翻訳で言えば「原文にそって忠実に別の言語に置き換えていくこと」です。

Wikipedia:翻訳

翻訳(ほんやく)とは、Aの形で記録・表現されているものから、その意味するところに対応するBの形に翻案することである。

とあります。

ちなみに、弊社の「翻訳」という言葉の定義は以下のように定めています。

原文に忠実に、かつ原文の文意を正確および自然にターゲット言語に訳出すること

いずれにしても、翻訳という作業行為は「もともと存在する原文を使って、異なる言語に変換する作業」のことを指します。

この定義が共有されていれば、冒頭の「原稿を全部作業前に読まないのか?」という質問は現実的にかなり無理があることが理解できるでしょう。しかし共有されていない場合には、こういった発言が出てしまうのかもしれません。(実際今回は起きてしまったので定義の共有ができていなかった弊社にも落ち度はある)

翻訳作業前に原文を読むことができない、いくつかの理由

確かにこのお客様のおっしゃるとおり、「翻訳作業前にすべての原稿に目を通して疑問点を潰して質問し、説明を受けて作業を進める」ことができれば翻訳作業はスムースになると思われます。

ただ残念ながら現実的には難しいと言わざるを得ません。理由はいくつかあります。

理由①:原文自体の信頼性はお客様が確保するもの

この「原文すべてに目を通してほしい」という意図の中には、「原文が間違っているかもしれないからそれを読んで見つけてほしい」ということも含まれているようです。

そもそも原文の精度はお客様側で担保するものですから、そのミスを発見することを弊社で対応することは実質不可能でしょう。

理由②:原文を読む時間、質疑応答の時間とコストは誰が負担するのか

またコストと時間という点からも、非現実的と言わざるを得ません。弊社では信頼できる翻訳者さんをはじめとしたパートナーとともに仕事をしているため、すべてタダで作業することはできませんし、それを強制することもできません。そもそも売れっ子の翻訳者さんにはそんな時間はどこにもありません。また弊社内でもそのための作業をする時間はありません。

理由③:原文の分量が多い場合には、それだけで莫大な時間とコストがかかる

翻訳会社は、少量のものも大量のものも扱っています。そして、どんなドキュメントを翻訳するのかは実際の翻訳対象原稿を受け取ってみないと分かりません。

分量も内容も分からず、かつご発注すらいただいていないドキュメントを確認する必要性はありません。

このように、いくつもの理由が考えられますが、産業翻訳というジャンルで、納期も予算も制限されている中で「原文を全部読む」というのは現実的には不可能です。

その分のコストも、時間もお客様側で保証していただけるなら可能だと思いますが、それこそおかしな話で、お客様側でそこにコストをかけることはあり得ないでしょう。

それよりも、次にご紹介するように原文のレベルを上げてしまうのが最も簡単です。そしてそれはお客様ご自身でできることでもあるのです。

原文の質を向上させる方法

原文の品質を向上させる場合、以下のような方法があります。

方法①:原文をブラッシュアップさせる方法を最初から盛り込んでおく(ライターなどに依頼するのも手)

きちんとプロのテクニカルライターやコピーライター、編集者などをアサインし、翻訳も想定に入れて制作されることをお薦めします。

例えば、日本語原稿で考えるなら、日本語の場合の言い回しは多様ですのでそのドキュメントの持つ性質や目的、対象読者を想定して作成することで、すっきりとした原文を作ることができます。

文章校正や文法などがクリアな文章は、翻訳しやすいため品質も安定します。

方法②:用語やスタイル、TMなど、(信頼性の高い)流用できるものを準備する

参考資料がバラバラに沢山存在するのは困りますが、たったひとつでも信頼できる参考資料があれば翻訳作業時に大変助かります。

翻訳に役に立つ参考資料とは

方法③:誤解を与えるような文章をはじめから作らない

完成度の低い原文を使って翻訳しなければならない場合、品質向上はあり得ません。翻訳はあくまで翻訳であり、原文とは主従関係にあるため、訳文は原文以上の品質にはなりません。

仮に原文を飛び越えて翻訳してしまった場合、それらが合っている保証はないため、「誤訳、訳抜け」と言われてしまう可能性も高いでしょう。

まとめ

このように「原文の品質」をしっかり高めておくことが、読者への最大の配慮であり、ユーザビリティの向上であり、Web なら検索上位に表示される分かりやすい文章であり、翻訳しても誤解を招くことのない文章になるのではないでしょうか。

何でも「準備が7割」と言われますが、翻訳作業をはじめから想定しているなら、原文の準備(レベルやトーン&マナー、表記統一など)は、お客様側で行うのが最も効率が良くなります。

少なくとも「作業前に原文を全部読んでほしい」というリクエストにならないのは確かでしょう。

ぜひ原文のレベルを引き上げ、翻訳会社への依頼をしていただければ、翻訳会社としても良い意味でのプレッシャーになりますし、翻訳者としても真剣に取り組むベき原稿になると思います。


マーケティング担当者に必須の「マーケティング翻訳」とは

近年、翻訳業界の大きなトレンドとして、「マーケティング翻訳」や「クリエイティブ翻訳」と呼ばれるサービスがあります。

今回はこれらについて解説します。

「マーケティング翻訳」とは何か

まず初めに「マーケティング翻訳」という言葉の定義をする必要があります。

マーケティング翻訳とは、企業の Web サイトや SNS、パンフレットやカタログ、プレゼン資料などのドキュメント類についての翻訳のことです。

これらのドキュメントは、概してメッセージ性が高く、読み手を強く意識したものと言え、それに適した翻訳をする必要があります。

マーケティング翻訳の目的

実は、「マーケティング翻訳」自体は昔から存在していましたが、ここ数年、急激にニーズが高まってきました。その理由として考えられるのは、「クライアントが要求する訳文レベルが徐々に高くなってきたから」と言えるでしょう。

例えば、Web サイトの翻訳を行う場合には、Google の検索結果のページで上位表示に出すために、様々な観点から質の高い文章を作らなければなりません。

なぜならその検索結果が直接集客に結びつき、ビジネスの業績に反映されるからです。

このように企業活動の中で利益の最大化を図るための要素のひとつとして、「マーケティング翻訳」というものが注目されるようになってきました。

仮に英語から日本語の翻訳の場合、これまでの「原文に忠実に翻訳する」という産業翻訳のルールから離れ、「より魅力的な文章(日本語)として翻訳する」という部分が大きな比重を占めるようになります。

繰り返しになりますが、これらが求められる理由としては、企業が提供するサービスや、製品などのアピールをするため、集客のためです。

マーケティング翻訳は大きく2つに分けられる

マーケティング翻訳は、大きく2つに分けることができます。

1. タイトルや見出しの翻訳

文字通り、タイトルや見出しの翻訳ですが、短い文章のため言葉の選定が非常に難しくなります。なぜなら、原文が制作されるプロセスにおいて非常に多くの背景情報や目的設定、ストーリーがありそれらをすべて包括してベストと思われる言葉を選択し、作られているため、翻訳する際にもそれと同じプロセスを理解して訳語を作らなくてはなりません。原文の表面的な部分だけを捕まえて翻訳したところで、薄っぺらな訳文になってしまいます。背景情報の理解が大切になります。

2. コンテンツの翻訳

タイトルや見出しのあとにくる本文の翻訳では、正確で読みやすく、そして読者にしっかりと意図が伝わる文章でなければなりません。

例えば「間違ってないから問題ないでしょう」というスタンスで訳文を作ってしまうと、それはマーケティング翻訳とは呼べません。

マーケティング翻訳をしないと Web は効果が出ない

この2つのタイプの翻訳が求められる具体的な例としては、Web サイトの翻訳が挙げられます。翻訳でなくとも、Google の検察結果で上位表示される文章というのは非常に読みやすく、役に立つ内容になっているのはご存知でしょう。

「検索結果画面で惹きつけられるタイトルで、Description 部分で内容が簡潔に書いてある」という状況があれば、ユーザはクリックして読もうと思います。

繰り返しになりますが、そういった点で、「Web サイトをどう翻訳するのか?」というのは、企業の戦略上、非常に重要な部分を占めていると言えるでしょうし、これからもその比重はますます大きくなるものと思われます。

「翻訳」という範疇の中での創造性

しかし「翻訳」という範囲でどこまでクリエイティブに、訴求力のある訳文を作るのか、原文から離れる必要がある場合、どこまで離れても許されるのか、といった線引きはかなり難易度が高いテーマだと言え、翻訳業界の中でも「これは普通の翻訳だ」「これはマーケティング翻訳ではない」という明確な線引きがあるわけではありません。

そもそも言葉は生き物であること、読者の背景知識や文化、価値観、習慣など様々な要素によって、同じ文章で評価が割れてしまうことは往々にして起きるからです。

原文を横に置かないと理解できない訳文は、あまりにも逐語訳的なのかもしれませんし、とはいえ、「そんな所まで言い切っていいのか」という訳文では、原文の意図を本当に踏襲しているのか分からないということもあるでしょう。

この線引き、さじ加減のバランスを取りながら、クリエイティブに翻訳することでマーケティング向けの翻訳が生まれるのです。

クリエイティブ翻訳との違い

「マーケティング翻訳」と似た言葉に「クリエイティブ翻訳」という言葉がありますが、ほぼ同義語です。翻訳業界では「クリエイティブ翻訳」「TransCreation」で通じます。

ちなみに、弊社では以下のように定義しています。

読み物など広告系の原文の翻訳の際に、原文にとらわれず、魅力的な訴求力の強い訳文を訳出すること

としています。弊社では主に「クリエイティブ翻訳」という言葉を好んで使用しています。

コンテンツ向けクリエイティブ翻訳プラン

 

SNS 向けクリエイティブ翻訳プラン

従来の翻訳との違い

マーケティング翻訳はこれまでの翻訳とはどう違うのか、という質問を受けることもありますが、一言でいえば「翻訳以上、ライティング未満」と言えるでしょう。

これは以下の図で説明することができます。

 

この図は、弊社のクリエイティブ翻訳プランのページで使用しているものですが、これまでの翻訳は、ドキュメントの種類によって多少の訳し方の違いはあれ、基本的に原文に忠実であることが重要視されていました。

以下の「翻訳ドキュメントマップ」ではドキュメントによって訳し方が違う(求められる方向性が違う)という点を可視化したものです。

翻訳ドキュメントマップ

翻訳業界の 4つの勢力

このように、マーケティング翻訳やクリエイティブ翻訳は、従来の翻訳とは違う訳ですが、これらを取り巻く業界構造そのものが大きく変化していることも原因の一つと言えます。

簡単に言えば、「簡単な翻訳は AI や機械翻訳に取って代わる。人間にしかできない翻訳とは何か」という部分は、少なからずともテーマとして存在しているはずです。

現在、様々なプレイヤーによって翻訳業界は変革の中にありますが、どうして変革しているのかは、「お客様のニーズの変化が起きたため、翻訳会社が変化に対応する」というのが本質だと言えます。

以下のページでは、その業界を占める4つの勢力について記載しています。

翻訳の功と罪

機械翻訳との違い

一方で、機械翻訳や自動翻訳という技術も発達してきました。ニューラルネットワークを活用した Google 翻訳の精度が飛躍的に向上したのは記憶に新しいでしょう。

いわゆる、機械翻訳または自動翻訳は日々進化を遂げていますが、読み物としてのドキュメントの場合には、まだ改善の余地がありそうです。

機械翻訳(自動翻訳)と翻訳支援ツール

現状、機械翻訳は意味を理解しているわけではないので、この部分では、まだ翻訳者の優位性は変わらないと言えますし、マーケティング翻訳との違いは明確になるでしょう。「文章の質」を細分化していくことで、いずれは棲み分けがなされる可能性もあります。

翻訳支援ツールとの相性は

機械翻訳や自動翻訳に似た概念として「翻訳支援ツール(CAT)」があります。翻訳支援ツールは、あくまで「翻訳者がメインであり、翻訳作業をサポートする」という立ち位置です。

Translation Memory というデータベースを構築し、精度を高めていくわけです。

TM の精度について

基本コンセプトは、「n対n」で原文と訳文をペアにしてデータベースに格納していくわけですが、マーケティング翻訳との相性という点から考えると、ツールの使用自体がなかなか難しいケースもあると言えます。

それは何故でしょうか?

これは原稿のバージョンアップのケースを考えるとイメージしやすいかもしれません。

データベースに格納された訳文は、センテンスで保管されます。最初に翻訳した際にはその訳し方で問題なかったとしても、ドキュメントが変更になったときに、果たしてデータベース内の訳文をそのまま使えるのかどうかという疑問が残ります。

例えば「you」という単語ひとつとっても、最初は「あなた」で良かった場合でも、文脈によっては「お前」と訳さないといけないかもしれません。

これは結局のところ、データベースよりも「文脈(コンテクスト)」や「リズム」がより重視されるためです。

ところがデータベース優先になれば、ぎこちない「あなた」を使うことになります。結果として、読み手は「読みにくい文章」と感じるわけです。

ツールを使えば再利用率は高くなるかもしれませんが、マーケティング翻訳やクリエイティブ翻訳には向いていないと言えます(弊社もマーケティングマテリアルでのツール使用は限定的です)

※読みやすさなどは二の次で、徹底的にコストを抑えるという目的の場合には、ツールの使用は目的に適っていると言えます。

コピーライトやライティングをすればいい?

マーケティング翻訳やクリエイティブ翻訳をご紹介すると、「通常の翻訳とも違う、機械翻訳とも違う、翻訳支援ツールも使わないのは理解したが、結局翻訳は変わらないのだからそれならライティングの方がいいのではないか?」というご質問をいただくこともあります。

この回答としては「その通りです」とお伝えしています。

ライターによる取材を重ね、サービスや商品への理解度を深め、訴求力のあるワードを選び構成していくという点では、圧倒的にライターに軍配が上がります。

そしてそれは当たり前の話であり、むしろそうでなくてはならないとも言えます。

弊社でご提供するマーケティング翻訳は「翻訳以上、ライティング未満」であることは前述の通りです。あくまで「翻訳」の範疇で行われるものです。

ライティングには「原文」の制約はありません。つまり誤解を恐れずに言えば、自由度が非常に高いわけです。(もちろん、完全に自由な仕事はありませんが)

その代わり、かかるコストは翻訳とは比べ物にならない位大きくなるでしょう。

つまり、作業内容が異なるため比較自体にあまり意味がありません。大切なのは「コストもできるだけ抑えつつ、できるだけ魅力的な文章を作りたい」というお客様のためのサービスだということです。

 文書の読みやすさコスト
機械翻訳
翻訳支援ツール
マーケティング翻訳
クリエイティブ翻訳
ライティング×

世の中のグローバル化が進み、翻訳市場は大きくなると言われていますが、これは言い換えれば、翻訳をするドキュメントが増えているということです。しかしそのすべてにライティングをすることは現実的に難しいでしょう。

となれば、「できるだけライティングに近い形で翻訳したい」というニーズが高まるのは自然な流れです。

まとめ

いかがでしょうか。最後に簡単にまとめると以下のようになります。自社に合った形で翻訳サービスを利用するようにしましょう。

  • マーケティング翻訳の目的は、読み手にしっかり伝わる訳文を作ること(ツールや機械はその次)
  • マーケティング翻訳の定義は「翻訳以上、ライティング未満」であること
  • 機械翻訳も、翻訳支援ツールも、ライティングもすべて使用目的によって変えるべき

マーケティング翻訳やその他の翻訳、通訳サービスについてはお気軽にお問い合わせください。


バックトランスレーション(逆翻訳)のメリットとデメリット

機械翻訳、ポストエディット、翻訳支援ツール、多くの MLV(マルチランゲージベンダー)やクラウド翻訳など、翻訳サービスには様々な形態が存在します。

翻訳の功と罪

 

そんな中、「バックトランスレーション」という手法があるのはあまり知られていません。日本語にすると「逆翻訳」と呼ばれます。(これに対し、通常の翻訳を「順翻訳」と呼ぶこともあります)

この「バックトランスレーション」というものは、いったいどういうものなのか、そしてメリット、デメリットや利用する際の判断基準について解説します。

バックトランスレーションとは何か

バックトランスレーションは、上述のように「逆翻訳」と言われますが、具体的には一度翻訳したものを使って、元の言語に翻訳しなおす作業のことを指します。

例えば、日本語から英語に翻訳する際、その訳文(英語)が原文(日本語)の意味をきちんととらえて翻訳されているかどうかを検証するために、訳文(英語)を日本語に翻訳します。

この訳文(英語)から原文(日本語)への翻訳プロセスをバックトランスレーションと言います。

バックトランスレーションの意味と目的

バックトランスレーションの意味や意義、その目的は何なのかを知っておく必要があります。この手法自体、翻訳プロジェクト、ローカライズプロジェクトの中でどういう位置づけのものかを把握する必要があります。

バックトランスレーションの目的は 3つほど挙げられます。

  • 訳文の正確性を確認するため
  • ターゲット言語が分からない場合のチェックやレビューのため
  • 翻訳としての妥当性、好みなどの恣意的なものかの見極めを行うため

それぞれ解説します。

バックトランスレーションの目的①:翻訳の正確性

翻訳の正確性を確認するためにバックトランスレーションを行うというのは、どういう意味でしょうか。これはつまり「日本語の単語が正しい英単語に置き換わっているか」という確認です。

また、(あえて挙げるなら)文法的にも「主語+目的語+述語」という日本語ならば、「主語+述語+目的語」という文法構造で英語が成立しているかどうかということでしょう。

バックトランスレーションの目的②:ターゲット言語でのチェックができない

例えば、日本語から中国語へ翻訳したケースがあるとします。発注した企業は、これを使ってビジネスを展開する訳ですが、翻訳会社から納品された中国語の訳文のチェックが社内で行うことができない場合、一度日本語に逆翻訳して、きちんと翻訳されているかどうかを確認するために使用されます。

バックトランスレーションの目的③:訳文の妥当性や好みなどの恣意性の見極め

①と重複しますが、こういう目的でバックトランスレーションを行うケースもあります。納品された訳文が妥当なものであるかということを検証しようとするわけですが、文章には「好み」があります。実際のところ、これらはバックトランスレーションをしても確認することはできません。あくまで翻訳後の言語の文章として好きか嫌いかという話だからです。

このように、一言でいえば、訳文としての「違和感」があるかどうかということを、バックトランスレーションによって見極めようとしているわけです。

しかし、残念ながらこれらはあまりうまく行きません。

バックトランスレーションのメリットとデメリット

ではなぜうまく行かないのでしょうか?

実は、厳密にはすべてがうまく行かないのではなく、上手く行くものとそうでないものが混在すると言えます。

バックトランスレーションのメリット

上述のように、様々な目的をもってバックトランスレーションを行う訳ですが、この中で上手く行くのは論文など専門性の高いドキュメントに限定されるでしょう。

「A という単語が B という訳語に正確に翻訳されているのか」を確認するために行なうためのバックトランスレーションは有効だと言えます。

バックトランスレーションのデメリット

しかし「ちゃんと翻訳されているかどうか」といった、(どちらかというと)表現力をお求めになる場合には、バックトランスレーションは不向きでしょう。Web サイトやプレスリリース等をバックトランスレーションしたところで恐らくほとんど意味はありません。

仮に、日本語→英語→日本語 というプロセスを辿った場合でも、実際に使用するのは英語であって、英語として自然なものか、意味が通る訳文かどうかを判断できないと意味がありません。

「日本語では大丈夫だった」という事実は、イコール「英語として大丈夫」ということにはならないからです。

また、言語によってもバックトランスレーション自体が意味を成さないケースもあります。韓国語のような表音文字などは、その文字自体に意味を持っていないため、バックトランスレーションをしてもほとんど意味がありません。

そういった点からも、第一義的には翻訳後の言語がターゲット言語なのですから、そのターゲット言語として訳文を評価、検証すべきでしょう。

バックトランスレーション使用時の注意点

これまで述べてきたように、バックトランスレーションの使い方は限定的とはいえ、その判断基準を持って行うことである一定の結果を得ることができます。その基準とは、「効果の出るドキュメントと効果の出ないドキュメントを理解する」ことです。

例えば、論文や特許書類など、単語の正確性が極端に求められる場合には、バックトランスレーションは有効です。決まった用語を使用なければ、ドキュメントの正確性が問われてしまうような場合などは、バックトランスレーションを使用することができます。

そういった基準を持たずに、どんなドキュメントでもバックトランスレーションをすることは、現場の混乱を招くばかりか、今後は「バックトランスレーションをしてもクレームにならない訳文を作る」ことが目的となり、逐語訳や直訳的な文章が増えてしまうかもしれません。その訳文が使われる場所や、対象読者のことが置いてけぼりになれば、伝えたいことも伝わりません。

まとめ

これまで述べてきましたが、バックトランスレーション自体を否定するものではありません。しかし、残念ながら限定的な使い方しかできないのもまた事実です。

そしてもしビジネスにおいて「正確な訳文を」「伝わる訳文を」と考えるのであれば、バックトランスレーションの前に以下の点に注意することがより有効だと思われます。

・バックトランスレーションする時間を取るより、その時間をしっかり最初の翻訳作業にあてる

・品質を気にするなら専門用語集やスタイル、事前のトレーニング、研修などを開催する

用語集構築・運用

・翻訳後にネイティブチェックのプロセスを増やす

定額ネイティブチェックプラン

いかがでしょうか。

バックトランスレーションを行う際には、これらの点を含めて正しい判断基準をもって行うようにしましょう。


日本語を理解できない日本人

AI などのテクノロジーが進化するに従い、「日本語が読めない」「話が噛みあわない」といった記事も増えています。コミュニケーションは常に他者との対話から始まります。今回はこのコミュニケーションのズレはどうして起きるのかを読み解いていきたいと思います。

文章の読解ができずに単語で反応する人たち

先日、以下の記事が拡散されていました。

日本の生産性を引き下げている「文章を読めない人」

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53224

「日本人が、日本語を理解できなくなっている」という驚愕の事実です。以下、記事の一部を引用します。

昔からそうだが、ニュースサイトのコメント欄を見ても、明らかに文章を読んでいない人のコメントや、1つのキーワードだけに反応し、文脈をまったく無視したコメントが無数にアップされている。文章を読んでいない、あるいは読めていない人が一定数存在しているのは間違いない。

またそれに伴い、生産性の低下にもつながっている、との記述も。

投資銀行家で「ぐっちーさん」の愛称でも知られる山口正洋氏は、ビジネス上のメールの内容をきちんと読めていない人が多いと自身のコラムで指摘している。内容があいまいなまま物事が進むので、実際に会って内容を再確認しなければならず、これが日本の生産性を引き下げているという。

これが本当だとしたらかなり致命的ではないでしょうか。

この記事でもうたっていますが、主な理由としては「読解力の低下」が著しいことが原因でしょう。

「読解力」は、学力の基本と言われています。実際、子どもの読解力も低下しているという調査もあります。

OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント

PISA2015年調査国際結果の要約

ベストセラーにもなった「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」でも、人間(日本人)の読解力不足が指摘されています。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

https://amzn.to/2QsDuyB

「教科書が読めない」子どもたち 教育現場から見えた深刻な実情

https://dot.asahi.com/aera/2018041200052.html

そもそも「読解力」とは何か

では、「読解力とは何か」また「読解力を上げるためにはどうすればいいのか」を考えてみましょう。その答えのひとつをご紹介します。

子どもの学力は読解力で決まる(斎藤孝 著)

https://amzn.to/2pElgi1

メディアでもよく見かける有名な斎藤先生の本によれば、読解力は子供の頃からトレーニングし、獲得すること、そしてそのために具体的に何をすればいいのかが書かれています。子どもの学力というタイトルですが、大人が読んでも十分ためになる内容です。

詳細は省きますが、読解力を上げるためには

  • 本を読むこと(名作を読む)
  • その本の一番言いたいことは何かを把握する(要約、客観性)
  • その上で自分なりの視点を持つ(コメント、主観性)

が大切とあります。細かい説明は著書をご覧いただくとして、確かに読解力がなければ、意味を理解することができないので、要約することもできずに、表面上のリアクションしか取れません。

実は、読解力は対人においても大いに活かされています。「相手が何を言いたいのか?」を理解することができない(読解できない)からこそ、冒頭でご紹介した「日本語の読めない日本人」が増えてしまったわけです。

コミュニケーションは、対人関係を成立させる上で重要ですが、「話が噛み合わない」「何が言いたいのか理解できない」「どう伝えればいいか分からない」ということが増えれば増えるほど、自分自身が苦しくなり、対人コミュニケーションそのものへの恐怖が生まれます。

逆に、読解力があれば、コミュニケーションが楽になり周囲との意思疎通も良くなりますから、仕事もやりやすくなるでしょうし、多少大げさかもしれませんが、自分自身が生き生きと働けるかもしれません。

誰しも経験があると思いますが、コミュニケーションがうまくとれない人とは、やはり何をしても上手く行かないものです。そしてそれはもしかしたら自分自身の「読解力」に原因があるのかもしれません。

コミュニケーションがうまくいかない、ズレていると感じるときは、「読解力」を疑ってみる必要があります。

翻訳でも同じことが起きる

さて、翻訳という業務においても同じ「言語」や「読解力」という枠組みで考えれば、同様のことが起きています。例えば、プロの翻訳者が翻訳したものを、レビューする人の読解力が低い場合、仮に訳文が正しいものだったとしても、理解されない=受け入れられないかもしれません。(ちなみに、プロの翻訳者自身の読解力が低い場合には、訳文もそれに伴った品質になりますが、プロである以上は、読解力があるはずという前提です)

これは極端な例ですが、もしこれが頻発すればその企業にとっては致命的です。

前述の記事にも以下のような記載があります。

米国のサイトの方が英語という外国語であるにもかかわらず、内容が直感的に理解できるのだ(参考までに、筆者は外国に住んだ経験はなく、ごく一般的な英語力しかないので、英語の基礎力が高いことで内容が容易に理解できているわけではない)。

日本のサイトは、統計データと関連するおびただしい注記事項が羅列してあるだけというケースが多く、情報が整理されていない。様々な立場の人が読むことをまったく想定していないのだ(あるいは想定していても、体系立てて表記できないのかもしれない)。

確かに、日本語はその「曖昧さ」が美しい表現を支えている部分もありますし、行間を読むような「相手の読解力」や「共感力」に委ねる部分もあります。(いわゆるハイコンテクスト)

しかし、ビジネスにおいては、(そういうシーンが許されることがあるとしても)大抵が明確であり正確であることが重要です。この部分にもっとフォーカスしなければなりません。

「理解できないのは相手の問題」と一蹴するのは簡単ですし、ある特定の内容であれば、相手も同程度の読解力があるという前提になりますから、難解な表現でも通じる可能性が高いでしょう。

しかし、これまで述べてきたように、日本語力の低下は一部に起きるものではありません。全体への影響が大きいと推測されます。その時に、「相手の読解力の問題=相手が悪い」という見解だけでは仕事としても成立しないでしょう。

翻訳や通訳をサービスとして利用する理由は、本業のビジネスをうまく成功させるためです。主従が逆転することはあり得ません。

翻訳は「手段」であって「目的」ではない

 

また、百歩譲って「相手の問題」であったとしても、読解力の低下に合わせて文章を短くしてみたり、平易な言葉を選択したりすることによって、相手のビジネスがスムースになることを主眼に置かなくてはならないのではないでしょうか。

翻訳サービスを提供する上では、「読者は誰か、読み手は誰なのか」という観点を見失ってはならないのです。読み手の読解力に依存するのは危険だと言えます。

※自分の趣味で翻訳する場合には他人が読むことはないので、難解であっても長文であっても問題ありません。

まとめ

読解力を持つことは、これからの時代ますます大切な能力となります。AI への代替やよりクリエイティブな仕事が求められるようになるためです。単純労働では、人間が働く価値は見いだせなくなってしまう可能性があります。

より一層クリエイティブな仕事をするためには、自分一人の知見だけでなく、チームを組み、様々な意見を出し合うことが求められます。その時に、読解力がなければ、表面的な意見ばかりになってしまい、生産性が上がることはないでしょう。

そうならないためにも、日頃からしっかりと「日本語を読める」状態にしておく必要があるのではないでしょうか。


翻訳は「手段」であって「目的」ではない

弊社は主に「コミュニケーションサービス」を提供している企業ですが、そのうち、翻訳や通訳といった言語サービスを中心にご提供を行っています。

お客様からサービス提供への対価をいただきながら、経済活動を行っていますが、時折、そこに該当しないケースがあります。より大きな目的(弊社の場合には経営理念の実現)の場合であれば、該当しなくても(長期的には整合性が取られるため)問題ありませんが、以前にはそうでないケースも散見されました。

このあたりはもしかしたら業界構造や業界の変化にも関連しているかもしれません。

翻訳の功と罪

今回はビジネスでついつい「勘違い」してしまいがちな点について考察します。

陥りやすい「手段の目的化」

今はもうほとんどありませんが、以前に多かったのは「手段の目的化」です。翻訳や通訳サービスは、それを利用するクライアントのビジネスコミュニケーションをスムースにするためのツールのひとつであるべきで、それ自体が目的になってしまうのは本末転倒です。

具体的には、翻訳者の作る訳文がクライアントが求めるものとずれ、クレームになる場合などを指します。プロの翻訳者が行なう翻訳作業なのですから、ある一定の精度があるはずです。にもかかわらず、どうしてクレームになるのでしょうか?

考えられる原因はいくつかあります。

  1. 翻訳者の実力不足(一定の精度が無い訳文だった)
  2. 翻訳会社のヒアリング不足(営業窓口の力不足)、不適切なアサイン(人には向き不向きがある)
  3. クライアントが翻訳以上のものを求めている
  4. クライアントの好み(恣意的なもの)
  5. 納期等のその他の条件

 

これ以外でも、できない原因はあげればキリがないので、このあたりにしておきますが、いずれにしても様々な原因でクライアント期待とは違うものが納品されてくればクレームになる場合があります。

つまり、上記のような点が「ずれているから」起きてしまうトラブルやクレームが一定数存在します。

いったい何のために翻訳するのか?通訳するのか?

手段を目的化しないために、最初から最後までブレてはいけないのは、この翻訳、通訳の目的は何か?いったい何のためにクライアントは翻訳や通訳を利用するのか?ということです。

これは翻訳会社としてもしっかりヒアリングしなければならない部分ですし、それをコーディネーターから的確に翻訳者に伝えなければならない点です。

逆に、それをしっかりと汲み取って訳文を作ったり、通訳していくことができれば、理論上は大きな齟齬というのは出ないはずです。

※特に通訳の場合には、現場での対応になり、クライアントの担当者と直接打ち合わせができることも多いため、本来の目的を確認しやすいと言えます。

どの企業も、どの業界でも共通しているのは、ビジネスのコミュニケーションをスムースにして期待する成果を得ることであり、それを達成するために私たちは翻訳や通訳サービスを提供することで何ができるのか?ということです。

これを見失ってしまうと、クライアントの期待する翻訳や通訳サービスにはなりません。誤解を恐れず言えば、「作り手の独りよがりのサービス」になってしまうのです。

翻訳や通訳というサービスは、限りなく商品に近いところにあるために、ついつい勘違いしてしまいそうですが、残念ながらそれ自体は目的にはなりません。もし「翻訳すること」自体が目的であれば、それはビジネスではなく、ボランティアや趣味、また自分自身の勉強のためであることがほとんどではないでしょうか。(ちなみに、これらが悪いということではなく、ビジネスコミュニケーションサービスとして提供する以上はクライアントがいるわけですから、その要望も汲み取っていかなくてはならないということです)

これは英会話なども同様です。英語と言うツールを使って、仕事をスムースに進めることが重要な目的であって「英語が話せます」という話ではありません。実際の現場では、TOEIC の点数が非常に高くても、ビジネスの基礎がない人は活躍することできないのは何も英語に限った話ではありませんので、細かく説明するまでもないでしょう。

エグゼクティブ専門英会話 [Be Confident]

翻訳という仕事をしていると、どうしても TOEIC が高得点でなければならないといった類のことを言われることも多いですが、実態はそうではありません。「翻訳力」とでも言うべき能力はまったく定義が異なります。

 

「翻訳力」とは何か

 

「お客様に喜んでもらう」ことがひとつのバロメーター

仕事にはどれも相手(お客様)がいます。その「お客様のために価値を提供する」ことが重要なのであり、結果として収入や報酬があるのです。

クライアントが困っていることに対し、自ら蓄積してきた能力や経験で解決することが重要です。大ざっぱに言ってしまえば、人の役に立つことです。お客様の役に立つことを本気で考えれば、自ずととるべき行動は定まってくるでしょう。それは自己満足でも自慢でもないはずです。手段が目的化されている場合には、「自分がやったから結果が出たんだ」となりがちなので要注意です。

それよりも全力を尽くし、その結果としてお客様から感謝されるほうが自分が持つ能力が誰かの役に立てたと思えるのではないでしょうか。こういう真摯な気持ちで仕事に向き合ったとき、人はさらなる成長をすることができます。

翻訳も通訳も「お医者さん」と同じ

翻訳も通訳も様々なテクニックや最新のツールやテクノロジーがあります。ドキュメントによって訳し方が違ったり、分野によっても扱うドキュメントは様々です。

しかしそれ以前のスタンスの問題として自覚しておかないといけないことがあります。

それは、プロフェッショナルとしての翻訳者や通訳者は、その高い専門性や高い言語能力を駆使して、お客様の困りごとを解決できるということです。いわば「お医者さん」と同じように正しい診断を行い、治療法を提案していくこと、また専門性が高ければ、ブラックボックス化せず、インフォームドコンセントを行い、クライアントが満足する治療を受けることができるのです。

この正しい心構えを持ち、最新のテクノロジーを駆使し、自らの能力を最大限発揮することができれば、クライアントの悩み(顕在的/潜在的)を解決することができるのです。


「原稿の意味を汲んで翻訳して欲しいのに」というご要望への解決策

お客様の本質的な悩みとは

お客様から寄せられるご相談のうち、特に多いのがこの悩みです。

“原稿の意味を汲んで翻訳してほしいのに、全然できない会社が多い”

ご訪問してお伺いすると、このようなご不満やお悩みをお伺いすることがあります。これは最近に限った話ではないのですが徐々に多くなっています。

今回は、それは何故なのか、そしてどうすればお客様のご要望にお応えすることができるのかを考察します。

「原稿の意味を汲む」というのはどういうことか

そもそも、多くのお客様の言う「原文の意味を汲む」というのはどういうことを指しているのでしょうか。

その意味を正確に理解するために、現状をしっかり把握する必要があります。

はじめに、産業翻訳の場合には「原文に忠実に翻訳する」というルールがあります。

これは、翻訳業界にとってはデファクトスタンダードであり「翻訳会社や翻訳者を守る」という点でも明確なルールでもあります。原文に書いてあることを勝手に省略したり、原文に書いていないことを勝手に付け加えたりすれば、「誤訳だ、訳抜けだ」となるからです。

しかしながら、この状態が長く続いているからこそ、冒頭のお客様の「原文の意味を汲んで・・・」という発言につながる可能性があります。事実、このように発言されるお客様が非常に多いことは否定できません。

となると、お客様の望んでいる品質と、産業翻訳業界での「原文に忠実に」というルールは相容れないことになります。

直訳とは何か、意訳とは何か

では「直訳」ではいけないということでしょうか。すべてお客様に合わせるべきでしょうか。

「直訳」とは何でしょうか。またそれに対する「意訳」とは何でしょうか。

https://ja.wikipedia.org/wiki/直訳と意訳

翻訳会社の立場から言えば、「直訳」であっても何も問題はありません。「産業翻訳」としては、誤訳も無く、訳抜けもない、問題のない品質だと言えます。

しかし、お客様から見ると「直訳では問題だ」という事実もあるわけです。この事実に目を背け、「いや、問題ありません」というだけでは、議論は平行線のままです。

大切なのはこの事実をそのまま受け止め、このギャップを埋めることです。

産業翻訳のルールを変えればいい

もしお客様が求める品質がすべて「正」だとしたら、(極端に言えば)産業翻訳の「原文に忠実に翻訳する」というルールをすべて変更すればいいように思えます。(どのように変更すればいいかは置いておきます)

しかし、少し考えてみるとこれもおかしいということに気づきます。

なぜなら、お客様側には一貫した判断基準がないからです。「お客様」自体がさまざまな業種、さまざまな職種にはじまり、企業ごとの状況も異なっています。その中でどこまでが直訳で、どこからが意訳なのか、またどういう方向性(文体や表現)を好んでいるのかなどはお客様ごとにバラバラで「正解」が見えにくいのです。結局のところ、「お客様」という大きな括りになってしまうと、誰に合わせたらいいのか分からないため、非常にぼやけた話になってしまいます。

また、ドキュメントの性質から考えた場合、正確な翻訳(=直訳)の方が大切で必要だというケースも多く存在します。

※ドキュメントの性質や用途をまとめた「ドキュメントマップ」をご覧ください。

翻訳ドキュメントマップ

つまり「産業翻訳のルールを変えればいい」という単純な解決方法ではうまくいかないということになります。

ドキュメントの用途や性質には大きな関連がある

上述のように多様な「お客様」の判断基準は一貫性がありません。無くて当たり前だからです。しかし一方で、一貫性があるのは「ドキュメントの用途や元々持っているドキュメントの性質」です。

例えば、契約書なら契約書なりの翻訳の表現がありますし、財務書類なら財務書類の翻訳の仕方があります。

これらの特性を理解して翻訳することは、翻訳会社からすれば当たり前の話です。そのためにコーディネーターがいます。

分野や専門性を考慮し、そのドキュメントに適した訳し方をすることによって、読み手にとって理解しやすいものとなるわけです。

しかし、適した翻訳者をアサインしているにも関わらず、冒頭のお客様の声が増えているのは何故なのでしょうか。翻訳会社が作り上げる訳文がダメだということも無さそうです。

マッチしているときとそうでないときがあるということは、ドキュメントによってかなり訳し方が違うということが分かります。特に冒頭のお客様のコメントで多いのは、どちらかというとマーケティング資料(カタログや Web など)に対してです。

これは、「読み手にしっかり伝わる文章を作りたい」「伝わらなければ意味がない」というリクエストがより強く出てくるドキュメントは、マーケティング資料が多いためです。

ここに、今回のテーマの答えがありそうです。

最近では、 Web サイトの翻訳やローカライズにおいて、テキスト(文章)はますます重要な位置づけを占めており、そこにフォーカスした翻訳サービスをご提供する必要があります。

仮に英語が原文だとした場合、それをそのまま日本語に翻訳しただけでは、Webサイトには適さない翻訳になってしまうこともあるでしょう。これは日本語から英語への翻訳でも同様のことが言えます。

特にキャッチコピーのようなものは、字面を追いかけて翻訳するくらいなら、英語のままにしておいた方が「カッコいい」場合もあります。

クリエイティブに翻訳するということ

ひとつの解決策として、弊社では、「通常の翻訳以上、ライティング未満」という位置づけで「クリエイティブ翻訳プラン」をご用意しています。

コンテンツ向けクリエイティブ翻訳プラン

https://www.trivector.co.jp/service/contentstranscreation/

SNS向けクリエイティブ翻訳プラン

https://www.trivector.co.jp/service/snstranscreation/

「翻訳を超えた翻訳」を作ることが唯一の解決策

このように、マーケティング関連のドキュメントは、ますますテキストが重要となっています。

例えるなら、「翻訳を超えた翻訳」を作ることです。これが SEO 対策としても重要ですし、何よりもっとも大切なのは、そのテキスト(文章やキャッチコピー)を読んだ人が「次の行動」を起こせるかどうかということです。

  • SNS(Facebook や Instagram等)の広告を見て、クリック(タップ)するかどうか
  • コンテンツを読んで問い合わせするか、申し込みをするか、購入するかどうか

まとめ

「原稿の意味を汲んで翻訳してほしい」というご要望にお応えする解決策としては、

  • ドキュメントの性質や特徴をつかむこと
  • そのドキュメントに合った表現や言い回しをすること
  • それは翻訳を超えた翻訳、つまり「クリエイティブな翻訳」をするということ

と言えます。

せっかくお金を払って翻訳するのですから、「翻訳はコストではなく、プロフィットである」という観点から効果的な翻訳を行っていただくことをお薦めします。


「旅の恥はかき捨て」だが「受け入れ側の恥はずっと残る」という話

インバウンドの伸びに伴い、様々なトラブルも増えている

年々、インバウンド需要が高まる中、同時に様々な課題や問題も起きています。

例えば、以下のようなものが挙げられます。

忍び寄るオーバーツーリズム 日本も危機に?

https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_1017.html

「観光公害」とは何か?京都の夜桜ライトアップ中止に見る実際の観光公害事例

https://honichi.com/news/2017/06/21/kankokogai/

新たな観光公害 訪日客の「医療費未払い問題」…解決策はあるのか?

https://honichi.com/news/2017/08/21/medicalexpensesunpaid/

観光庁 温泉などの入浴施設にタトゥー・入れ墨を入れた訪日客への対応改善を促進も、日本人一般客は半数が入れ墨NO!

https://honichi.com/news/2016/08/16/kankochoonsennadonony/

訪日香港人観光客が好む移動手段:レンタカー利用者が多い反面、事故などのトラブルも多発

https://honichi.com/news/2016/05/27/honichihonkonjinkanko/

これらは、外国人観光客側への十分な説明が不足していたり、外国人観光客側のマナーの違いとそれぞれのギャップによるものだったりしますが、外国人観光客数が増えれば増えるほど、今後もこういった何らかのトラブルや問題は起きると言えます。

「観光立国」を目指していく以上はこれらのトラブルへの対応や事前の対策もさらに徹底していく必要があります。

そもそも旅行というのは「非日常」であるわけで、普段経験できない事やモノを見たり、聞いたり、触れたり感じたりしたいわけです。日本の伝統や文化などに触れたり、日本でしかできない体験などを求めています。

「旅の恥はかき捨て」という言葉もありますが、誰しも気持ちが解放的になるのは仕方がないことでしょう。また「非日常」の世界に移動するわけですから、文化的な背景や知識を持っている観光客の方が珍しいという前提で考えるが妥当です。

これは外国人だからというわけではなく、旅行する人なら誰でも当てはまることです。

しかし、一方で「かき捨て」ることができないのが、受け入れ側の問題です。受け入れ側として上記のようなトラブルや問題を起こさないために、何ができるのでしょうか。

【解決法:1】まずは外国人観光客が困っていることをきちんと解決する

受け入れ側が真っ先に行うことは、どこにでも載っていますが「外国人観光客が困っていること」を順番に解決することです。

観光庁:受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査を行いました

http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000233.html

こちらのアンケート結果にもありますが、Wifi 問題は解決の方向に向かっています。

しかし一方で「コミュニケーション」はあまり改善しているとは言い難い状況です。特に「飲食や小売店」でのコミュニケーションです。

具体的には、以下のように「スタッフとのコミュニケーション」と「多言語表示」に分けることができます。

旅行の場面ごとの多言語表示・コミュニケーションの課題が明らかになりました ~多言語表示・コミュニケーションの受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査を実施~

http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000239.html

※弊社サイトでも接客英会話について記載しております。

これさえ覚えれば大丈夫!外国人観光客向け 接客英会話 22フレーズ(飲食店編)

コミュニケーションをどうやって円滑にするのか

アンケートを見てもわかるように、言語の違いはあっても、結局はコミュニケーションの問題ですので、本質をしっかり抑える必要があります。

「コミュニケーションの本質は何か」と言えば、それは「思いやる心」「慮る心」「姿勢」です。

受け入れ側として、まずは「外国人観光客が困っているコミュニケーションを改善する」ことに腐心しなくてはなりません。

「とにかくメニューを多言語化し、注文はタッチパネルで」というのは理解できますが、それ以上に相手の状況を理解したり声をかけるという部分は人間にしかできない部分です。

「ハードとソフトの組み合わせ、そしてバランス」という点は今回のテーマとは異なりますので、割愛しますが、外国人観光客がコミュニケーションが取れないと感じるのは、何も「注文がスムースにできればそれでいい」ということだけで解決するのではないということです。

何故なら現地の「人との触れ合い」も旅の醍醐味だからです。

そういう意味での「コミュニケーション」をどうスムースにしていくのかと言えば、言語のプロフェッショナルとしては「地道な学習と実践しかない」というお伝えするしかありません。

根本的な解決は「継続的な学習」しかないためです。

英語の学習法は様々ですが、やはり日々の継続がモノをいうので、コツコツと行うしかありません。そこでまずは「外国人観光客の不満を解消するため」という目的を持てば、「接客英会話」という括りで学習するのが効果的でしょう。

弊社では「飲食店向け接客英会話」を不定期で開催しております。

「飲食店向け接客英会話」セミナーのご案内(終了いたしました)

※チェーン店様の場合などは、法人向けサービスとしてもご提供しております。ご興味があれば別途お問い合わせください。

この「コミュニケーション」は決して上手である必要はありません。大切なのは、離そうとすることであり、伝えようとすること、相手の言うことを理解しようする「姿勢」です。

その「姿勢」こそが外国人観光客に届けば、多少やり取りが増えたとしても、それを含めた「非日常」体験となるからです。

「楽しんでもらいたい」「楽しい思い出を作ってもらいたい」という「姿勢」こそが、最も大切でそれこそが「おもてなし」なのではないかと思います。

コラム:銀座のお店

銀座にある化粧品店の話です。

そのお店は昨今のインバウンドブームで中国人旅行者が大挙をなしておしかけています。もちろん売り上げは順調です。

しかし、ひとつ大きな問題があります。それはお店のスタッフの質です。

・どうせ日本語が分からないだろうからと、目の前で「早く決めろ」といったことや「邪魔なんだよ」といった小声で暴言を吐く

・周りのスタッフもそれを止めないどころが、便乗する

こんな態度を取っていれば、日本語が分からなくても誰でも気づきます。このお店はブームの最中にも関わらず、徐々に旅行者が来なくなりました。

実は、それ以前に別の女性スタッフが、暴言や接客態度が悪いことを経営陣に報告していたのですが、それも改善されることなく時間だけが過ぎていっていました。

当然この女性スタッフも「この店は将来がない」と見切りをつけて早々に辞めていきました。

優秀な人は辞め、暴言を吐く人だけが残るお店に、いったい誰が来店するのでしょうか。

【解決法:2】この先も見据えて、「恥にならない翻訳」をする

ちなみに、コミュニケーションをすぐにスムースにすることができるツールとしては(手前味噌になってしまいますが)「多言語翻訳」は今後も重要なツールだと言えます。

最も分かりやすい例として英語で考えると、対人の場合には英会話となりますし、表示物であれば英語への翻訳となります。

飲食店なら

  • 接客英会話(お客様とスタッフ)
  • 英語翻訳(メニューや看板など読むもの)

でしょう。後者の翻訳は、テキスト情報としてずっと目に触れるものです。ですから、その品質を軽んじてしまうと、それなりのものにしかならないということです。

例えば、こんな事例があります。(名称等は伏せております)

  1. 某庁の肝いりのプロジェクトで、日本全国に点在する某観光施設のパンフレットの多言語翻訳を行なうことになった
  2. 大手代理店や制作会社が担当し、プロジェクトは年度末の納品で決定
  3. プロジェクトのキックオフミーティングが開かれることもなく、なし崩し的にプロジェクトがスタート
  4. 打ち合わせが曖昧で、作業の仕様が揺れているために、各担当者とのやり取りもどんどん煩雑になり、結果的に制作会社も代理店も翻訳会社も納期に間に合わせるため、やっつけ仕事になった
  5. 結果、納期には間に合い、印刷をし全国の施設に配布されたが、外国人観光客からは「訳抜けや誤訳、スペルミスなどが多く散見されるパンフレットとなった
  6. 大型のプロジェクトだったので目立ってしまい某メディアや書籍で「失敗事例」として取り上げられる

これらは、よく聞く話と言えばよく聞く話です。一番大切な「外国人観光客視点」が完全に抜け落ちてしまっています。

翻訳を行う上で、大切なのは「読者は誰か」を把握し、「伝わる翻訳」を作ることです。その視点を見失ってしまうと上記のような問題は頻繁に起きるでしょう。

また AI 翻訳のミスとしてこのような事例もありました。

堺筋だけやない、天下茶屋は… 大阪メトロのサイト誤訳

https://www.asahi.com/articles/ASM3M32R5M3MPTIL006.html

「堺筋」→「サカイ・マッスル」? 大阪メトロ外国語版サイト「めちゃくちゃ誤訳」多数で閉鎖に

https://mainichi.jp/articles/20190318/k00/00m/040/164000c

これと似たようなケースでは、「コスト優先が強すぎて品質が置いてけぼりされた」ということもよく聞きます。入札案件などでは常にこのリスクを抱えることになります。

莫大な費用をかけて新しい技術を導入するのもいいですが、まずは正確に読者が分かるように翻訳することの方が先決ではないでしょうか。

上記のように本末転倒になってしまったプロジェクトは関係者も徒労感に襲われますし、最もまずいのは、受け入れ側として、「この先ずっと残る訳文」になってしまったわけです。(大阪メトロの場合はサイト閉鎖という事態に)

そして、それを利用しなくてはならない外国人観光客はどう思うでしょうか?

冒頭のアンケートにあった「コミュニケーションが取れないことによって困った」というのは、まさにこのことではないでしょうか。

言葉には100点満点はありません。しかし、インバウンドの大きな潮流の中、文章の品質というのは、外国人観光客に直接目に触れるものであり、決してないがしろにしてはならないもののはずです。

その直接のコンタクトポイントを適当に済ませてしまうことは、長期的に見てもあまりにもリスキーではないでしょうか。

まとめ

一生の思い出で日本に旅行にやってくる観光客もいます。決して安くないお金を支払ってくるわけですから、その期待に応えていくことはリピーターになってもらう場合でも重要なことでしょう。

彼らに対してコミュニケーションをしっかりとるためにも、以下の2点は改善していくことが期待されます。

  1. すでに顕在化した「外国人観光客が困っていること」をまずは解決する
  2. 特にコミュニケーションは、会話と文字情報に分け、文字情報は後に残るものとしてしっかり翻訳する
  3. その上でおもてなしの心を持って外国人観光客と接する

 

受け入れ側がしっかりと対応することが、これからのインバウンド対策にはより一層求められていくことになります。

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「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した人の話

ビジネスマンにとって必須の能力である「コミュニケーション能力」-「コミュ障」や「コミュ力」といった言葉が乱立する中、「本物のコミュニケーション能力」を伸ばすためにはどうすればいいのだろうか。

「僕はコミュニケーション能力があります」という発言

「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した若者がいた。

当然これは「ビジネスにおけるコミュニケーション能力がある」という意味での発言だ。

「ビジネスにおけるコミュニケーション」というのは大変難しい要素を多く含んでいる。どんな資格よりも「コミュニケーション能力」を最重要視する企業が多く、「コミュニケーション」というキーワードで Amazon を検索すれば、おびただしい数の書籍が結果として表示されるのは、それだけコミュニケーション能力が簡単なものではないという証拠でもある。

これだけ困難なコミュニケーションについて、それでも取り組まなければならないのは、他者とのコミュニケーションが取れなければ、せっかく培ってきた能力や資格も活かしきれないというのが、(残念ながら)社内外問わずビジネスの現場だし、真実だということだ。

これには大前提がある。

ビジネスは設定した目的を達成することにある。それは言い換えれば、与えられた持ち場で「求められる成果を出す」ということだ。

そのために、様々な能力を持った人間が集まり、プロジェクトチームを作り、一丸となって目的を達成するために日々行動する。

この「成果を出す」という前提を共有していない場合には、「コミュニケーションとは何か」「ビジネスで求められるコミュニケーション能力とは何か」というテーマを同じレベルで語ることはできない。

「成果を出す」という重要な視点が欠落しているためだ。

冒頭の発言に戻ろう。

「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した人は、続けてその理由を述べた。

「僕はいつも『少し静かにしてほしい』と言われるくらい、よく話しているからです」

 

いかがだろうか。この発言では、「コミュニケーション能力がある」という証拠にならないのは誰が見ても明白だ。

しかし本人としては、「(自分が)色々なことを沢山話しているのだから、(相手と)コミュニケーションが取れている」という確信があるはずだ。

具体的な内容に置き換えて考えてみる。

例えば、「僕はあなたにクライアントのプロジェクトに関する重要なファイルの話をした。そのファイルの場所も話したし、アクセス方法も教えた。だからあなたは、そのクライアントのファイルがいかに大切か、そしてその格納場所も完全に理解し、覚えていなくてはならない」と言っているのと同義だ。

話し手としては、滔々と沢山の言葉を使って話したことによって、ある種の「自己満足=私は話した」を満たすことは十二分にできるが、聞き手としては「ワーッと話されただけ」かもしれないし、順番が守られていなければ「何を言っているか分からない」かも知れないし、ほかの仕事があれば「早く終わってほしい」と思って我慢していただけかもしれない。

コミュニケーションというのは、相手の理解度がどの状態にあるかを、都度、話し手が進捗を確認しなければならないものだ。

当然ながら話し手が「自分の話を一方的に話すこと、また話す量が多ければコミュニケーション能力がある」とはならない。

「自分にはコミュニケーション能力がある」と言い切ってしまってしまうと、「相手の立場や状況」を慮ることができなくなるため、相手のことを完全に無視した状態で話が進められてしまう。

結果、高い確率でその会話は「一方通行」だし、結局「何が言いたいのかわからない」ものに終始するだろう。

「自己満足のただの話し好き」と「コミュニケーション能力が高い人」は決定的に違うものがいくつかある。

本物のコミュニケーション能力とは

では、「話し好き」ではなく、「本当にコミュニケーション能力が高い人」になるためにはどんな 要素が必要になるのだろうか。

相手への敬意や興味があること

冒頭の「僕はコミュニケーション能力があります」と発言する人の場合、相手のことを理解しようという姿勢が見られないため、一方的な話になりやすい。

「相手は、自分と同じ知識や経験をしていない人なのだ」という前提を持ちながら話をするからこそ、相手にとって理解の手助けとなるであろう有効な例え話をしたり、簡略化してみたり、表現方法を工夫したりする。

しかしながらその前提がなく、またそれを怠って「自分の話は伝わっている」と思いこむのは、ある意味であまりに傲慢だし、相手への尊敬の念や相手への興味がないと言われても仕方がない。

ビジネスには必ず相手がいる。それはクライアントかもしれないし、パートナーかもしれない。さらにその先のユーザかもしれない。その人たちへの尊敬や敬意、または興味を持っていなければ当然ながら一方通行のコミュニケーションになりやすい。

相手の立場に立つこと(気を遣うこと)

簡単ではないが、真剣に相手の立場に立って考えてみる。それができれば、自ずと言葉は選ぶようになるし、気を遣うこともできる。私たちは学校教育でそれなりの教育を受けているはずだ。

「空気を読む」というのは少し違うが、気遣いができるかどうかは、相手を尊敬しているかどうかに密接に関わっていると言える。

関係性を大切にする

これも同様だが、自分の家族や大切な人であれば、一方的に話して終わりにはならないだろう。それは何故かと言えば、「密接な関係性がすでにあり、自分のことを理解してほしいし、相手のことも心から理解したい」と考えているからだ。

一生懸命聞くし、一生懸命伝えようとする。それも様々なテクニックを使って。

そしてこれは、プライベートだけでなく、仕事でも同じことが言える。

相手にも大切にしていることやモノ、考えがあり、それらを尊敬しつつ、自らの意見や考えを伝えていくことがコミュニケーションの基本だ。

ビジネスの場合には、その目的や方向性が同じであることが重要であり、テクニック以前に「姿勢」が大切だということだ。

信頼関係や相互依存の関係無しに、本物のコミュニケーションは成立しない。

言葉で意思の疎通を図りたければ、言葉以外の部分に注意を払わなければならない。

冒頭の発言をした人の真意は測り知ることはできないが、少なくとも、「聞き手である相手はどう思うのか?どう感じるのか?」を推測していないということは断言できる。

まとめ

クライアントとの商談、社内チームとの打ち合わせ、パートナーとの商談、同僚との打ち合わせ、上司への報告、部下への連絡など、どんな状況でも必ず相手がいるからこそコミュニケーションが求められる。

特に「知的労働」に分類される仕事の場合には、チームワークが重要になる。その中で「成果を上げる」ために最も重要で潤滑油の役割を果たすコミュニケーション能力について、どんな組織でも重視するのは当たり前の話で、今後もその要求レベルが下がることはないだろう。

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