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クイックレスポンスが作り出す「顧客体験価値」の向上

顧客体験

仕事のやり取りにおいて、メールでもチャットでも「もう返事が来た!」と感じた経験は誰しもがあるはずです。その時、どんな感情を持つでしょうか?少なくとも嫌な気持ちはしないはずです。

今回はお客様とのコミュニケーションにおいて必須の、営業パーソンとして(本質的には営業だけではないですが)、心がけておきたい「クイックレスポンス」が生み出す顧客体験について解説します。

「速さ」とは「お客様への約束」

法人営業の現場では、良い提案や安い価格だけでは勝てない場面が増えています。ここに「外資系企業だから」「日系企業だから」といった違いはあまり関係ありません。仕事をしていると気づきますが、クイックレスポンス(迅速で、お客様の役に立つ返事)は、すべてのビジネスシーンにおいて非常に重要です。

お客様からの連絡に対する最初の反応(行動)、つまりクイックレスポンスが、お客様の次の決断を後押しし、安心感を生みだします。この「レスポンスの速さ」は、単なるビジネス上の礼儀ではなく、お客様が感じる体験(顧客体験)そのものを作り上げる「目に見えないサービス」にもなると言っても過言ではなく、結果として、売上やリピートオーダーにつながりやすくなるでしょう。

なぜすぐに対応すると、仕事がうまくいくのか

顧客満足

1時間以内の返事で、商談発生率がアップする

ハーバード・ビジネス・レビューによると、ネットからの問い合わせに「1時間以内」で対応した会社は、「1時間以降」に連絡した会社と比べて、その見込み客が有望な商談になる確率が約 7 倍、さらに「24 時間以降」と比べると 60 倍も高くなったという調査結果があります。

さらに、他の調査では、問い合わせがあってから「最初の 5 分以内」に返信できているのはたったの 20%程度であるという結果もあります。逆に5分以内にレスポンスができると、コンバージョン率を 21 倍に高められるという結果もあります。つまり、多くのお客様は「最初に連絡をくれた会社から買う」ことを選んでおり、この「速さ」が勝敗を分けています。

お客様は「いつでも、どこでもつながる」ことを求めている

前述のように、特に最近の B2B では、お客様は対面、オンライン会議、自分で調べるサイト、チャットなど、約 10 種類もの連絡手段を使い分けていると言われています。

お客様は対面・リモート・セルフサービスを横断し、24時間いつでもつながることを前提に、リアルタイムのサポートを求めています。これらの購買体験はすでに「10チャネル時代」とも言われています。

怖いのは、ここで応答が滞ってしまうと、容易に他社へ乗り換えられる可能性が高まることです。

これは相手の立場になれば容易に想像できるでしょう。

つまり、「まず速く返す」という行動自体が、他社との大きな差別化要因になります。

「素早くて要点を得た返事」は、お客様の新しいニーズに合っている

ある調査では、B2B のお客様のなんと 61% が「営業担当者を介さずに購買をしたい(rep-free)」と答えています。

しかし、(それにもかかわらず)本当に知りたいことや困ったことがあったときには、「要点のある返事を速く、知りたい」と希望しています。このような一見矛盾しているような状況こそが、信頼の土台になるというのも見逃せないポイントです。

またこれは(今さら感はあるのですが)「顧客体験」の良し悪しを決める基本は、何らかの派手さや目新しさではなく「スピードと便利さ、そして的確なサポート」であることもわかっています。この「当たり前のこと」をしっかり守る運用が、実は大きく成果を伸ばせるかどうかを分けています。

4つの視点から考える影響

4つの影響

ここでは、さらに4つの視点(商談の質/ビジネス効率/チームの実行力/経営の成果)から「クイックレスポンス」が与える影響を考察します。

【商談の質】お客様の理解を深め、受注率をアップする

レスポンスが速いと、「要点の確認→仮説の提示→前提条件の更新」というお客様とのやり取りの回数と密度が増えます。これにより、お客様の「わからないこと」や「認識のズレ」を早く解消でき、案件の滞留期間が縮まります(パイプラインのスピードが上がる)。結果的に、商談からの受注率アップにつながります。

【ビジネス効率】ムダな手間とコストを削減する

待ち時間が長いと、お客様も私たちも話の内容を「もう一度思い出す」というムダな手間がかかります。逆に、早いやり取りができると、この手間や仕様の認識違いによる「やり直しコスト」を抑え、競合他社への乗り換え(機会損失)も減らすことができます。

結果として、実質的なコストと時間のムダを削減することができます。

【チームの実行力】個人任せにせず、チームで速さを実現する

営業、技術担当(SE)、法務、セキュリティ担当など、多くの人が関わる商談では、個人の「頑張り」だけでは速さは継続できません。連絡方法の統一、ひな形(テンプレート)の整備、現場への権限の委譲、そして回答時のルールを設定することで、クイックレスポンスをチーム全体の進め方として仕組み化し、持続可能な体制を作ることができます。

【経営の成果】決断を早め、売上達成を確実なものにする

最初に「大まかな方向性」を固め、細かい調整は後から共同で進めていく運用は、顧客の経営層による判断の先延ばしや再度の稟議を減らします。価格、納期、セキュリティの方針など、最低限必要な前提条件について早く合意できるほど、お客様の決裁プロセスがスムーズに動き、期中の売上達成の確実性を高めてくれます。

コンペで勝つための「費用対効果の計算」と「素早いやり取り」

また、別のケース(コンペ)の場合も考えてみましょう。他社と提案内容が拮抗し、あと一歩の決め手に欠ける場面では、「お客様が最後に確認したい点」を一緒に明確にし、その中心に「どれだけ効果があるか(費用対効果)」を提案します。

最初は大まかな試算でも構わず、スピーディに進めていきます。その後、利用人数、動く時間、問い合わせ件数、障害の頻度、翻訳の量など、お客様から提供された前提条件を、短いやり取りで何度も更新しながら、試算の精度を上げていくことで提案内容をブラッシュアップさせることができます。

この一連のやり取りの中での「クイックレスポンス」こそが、「最後の決め手」となります。

なお、最終的に契約を決める人(最終決裁者)は、「うちの会社に合わせて、きめ細かく作られた提案」を重視する傾向があります。この「きめ細かさ」を高めるための近道も、前提条件を素早く更新できる、速いやり取りの体制なのはお分かりになるでしょう。

コンペや競合状態になった場合でも「クイックレスポンス」は非常に有効であると言えます。

「すぐに対応する」ためのプロセス

ここでは「クイックレスポンス」の具体的な方法と目安をお伝えします。

クイックレスポンス

※なお、連絡手段が変わっても、お客様との話の内容が途切れることがないように、同じ情報にたどり着ける仕組みを構築しておきます。これは、前述の「B2B で 10チャネルを前提に、24時間365日動いている」というお客様の要望に対応するためです。

サポートとCSの素早い対応で導入後も顧客体験を向上させる

ちなみに、システム導入後の運用(障害対応、変更、多言語展開など)では、「初動の1〜15分で状況を共有」し、「24時間以内に根本的な解決方針を示す」という体制が、お客様の解約率を下げ、追加の契約(アップセル率)を増やすという効果もあります。

結局のところ、営業の時点でも購買後の運用でも、顧客体験の核心は「スピードと便利さ、的確な支援」であるというのは、超重要項目であることは間違いありません。

「クイックレスポンス」は安心感そのもの

いかがでしたでしょうか。クイックレスポンスは、シンプルですが単なる「頑張ろう」という精神論ではなく、運用をどう設計するかという問題に帰結します。

この「最初の一歩」を(クイックに)踏み出し、その後のやり取りの中で提案の精度を高めていく。そして連絡手段が増えたとしても「どこから来ても話が途切れない」ように 1つにまとめ、ルールやひな形、権限委譲で持続可能な状態を構築していくことができます。

「速さ」は、お客様が感じる「安心感」そのものであり、信頼の土台です。これは営業だけでなく、法務、セキュリティ、翻訳・ローカライズ、サポートまで、チーム全体で取り組むことで、確実に成果が上がっていくと言えます。