翻訳は「手段」であって「目的」ではない

弊社は、「コミュニケーションサービス」を提供している企業ですが、そのうち、翻訳や通訳といった言語サービスを中心にご提供を行っています。

お客様からサービス提供への対価をいただきながら、経済活動を行っていますが、時折、そこに該当しないケースがあります。より大きな目的(弊社の場合には経営理念の実現)の場合であれば、それは問題ありませんが、そうでないケースも以前は散見されました。

このあたりはもしかしたら業界構造や業界の変化にも関連しているかもしれません。

翻訳の功と罪

今回はビジネスとして「勘違い」してしまいがちな点について考察します。

陥りやすい「手段の目的化」

今はもうほとんどありませんが、以前に多かったのは、手段の目的化です。翻訳や通訳サービスは、それを利用するクライアントのビジネスコミュニケーションをスムースにするためのツールのひとつであるべきで、それ自体が目的になってしまうのは本末転倒です。

具体的には、翻訳者の訳文がクライアントが求めるものとずれ、クレームになる場合などを指します。プロの翻訳者が行なう翻訳作業なのですから、ある一定の精度があるはずです。にもかかわらず、どうしてクレームになるのでしょうか?

考えられる原因はいくつかあります。

  1. 翻訳者の実力不足
  2. 翻訳会社のヒアリング不足、不適切なアサイン
  3. クライアントが翻訳以上のものを求めている
  4. クライアントの好み(恣意的なもの)
  5. 納期等のその他の条件

 

できない原因はあげればキリがないので、このあたりにしておきますが、いずれにしても様々な原因でクライアント期待とは違うものが納品されてくるとクレームになる場合があります。

つまり、上記のような点がずれているから起きてしまうトラブルやクレームが一定数存在します。

何のために翻訳するのか?通訳するのか?

手段を目的化しないために、最初からブレてはいけないのは、この翻訳、通訳の目的は何か?何のためにクライアントは翻訳や通訳を利用するのかということです。

これは翻訳会社としてもしっかりヒアリングしなければならない部分ですし、それをコーディネーターから的確に翻訳者に伝えなければならない点です。

そしてそれをしっかりと汲み取って訳文を作ったり、通訳していくことができれば、大きな齟齬というのは出ないはずです。※特に通訳の場合には、現場での対応になり、クライアントの担当者と直接打ち合わせができることも多いため、本来の目的を確認しやすいと言えます。

どの企業も、どの業界でも共通しているのは、ビジネスのコミュニケーションをスムースにして期待する成果を得ることであり、それを達成するために私たちは何ができるのか?ということです。

これを見失ってしまうと、クライアントの期待する翻訳や通訳サービスにはなりません。誤解を恐れず言えば、独りよがりのサービスになってしまうのです。

翻訳や通訳というサービスは、限りなく商品に近いところにあるために、ついつい勘違いしそうですが、それ自体は目的にはなりません。もし「翻訳すること」自体が目的であれば、それはビジネスではなく、ボランティアや趣味、また自分自身の勉強のためであることがほとんどではないでしょうか。(ちなみに、これらが悪いというのではなく、ビジネスコミュニケーションサービスとして提供する以上はクライアントがいるわけですから、その要望も汲み取っていかなくてはならないということです)

これは英会話なども同様です。英語と言うツールを使って、仕事をスムースに進めることが重要なのであって、英語が話せますという話ではありません。実際の現場では、TOEIC の点数が非常に高くても、ビジネスの基礎がない人は活躍することできないのは説明するまでもないでしょう。

エグゼクティブ専門英会話 [Be Confident]

翻訳という仕事をしていると、どうしても TOEIC が高得点でなければならないといった類のことを言われることも多いですが、実態はそうではありません。「翻訳力」とでも言うべき能力はまったく定義が異なります。

 

「翻訳力」とは何か

 

「お客様に喜んでもらう」ことがひとつのバロメーター

仕事とはどれも相手(お客様)がいます。そのお客様のために価値を提供することが重要なのであり、結果として収入や報酬があるのです。

クライアントが困っていることに対し、自ら蓄積してきた能力や経験で解決することが重要です。大ざっぱに言ってしまえば、人の役に立つことです。お客様の役に立つことを本気で考えれば、自ずととるべき行動は定まってくるでしょう。それは自己満足でも自慢でもないはずです。手段が目的化されている場合には、「自分がやったから結果が出たんだ」となりがちなので要注意です。

それよりも全力を尽くし、その結果としてお客様から感謝されるほうが自分が持つ能力が誰かの役に立てたと思えるのではないでしょうか。こういう真摯な気持ちで仕事に向き合ったとき、人はさらなる成長をすることができます。

翻訳も通訳も「お医者さん」と同じ

翻訳も通訳も様々なテクニックや最新のツールやテクノロジーがあります。ドキュメントによって訳し方が違ったり、分野によっても扱うドキュメントは様々です。

しかしそれ以前のスタンスの問題として自覚しておかないといけないことがあります。

それは、プロフェッショナルとしての翻訳者や通訳者は、その高い専門性や高い言語能力を駆使して、お客様の困りごとを解決できるということです。いわば「お医者さん」と同じように正しい診断を行い、治療法を提案していくこと、また専門性が高ければ、ブラックボックス化せず、インフォームドコンセントを行い、クライアントが満足する治療を受けることができるのです。

この正しい心構えを持ち、最新のテクノロジーを駆使し、自らの能力を最大限発揮することができれば、クライアントの悩み(顕在的/潜在的)を解決することができるのです。