課題 導入効果
  • 技術ブランドの過小評価: 英語版「技報」の翻訳品質が国際基準の語彙や論理構成と一致しておらず、企業の卓越した技術力が海外の専門家や投資家から正当に評価されないリスクがあった。
  • 世界基準の信頼獲得: 用語集の整備や国際的な学術スタイルガイドの適用により、技報に「学術的品格」が付与され、海外の提携先や投資家からの信頼性が飛躍的に高まった。
  • 研究開発リソースの毀損: 高度な専門知識を持つ研究員が、翻訳会社から納品された訳文の修正や用語チェックなどの非専門業務に忙殺され、本来のミッションである研究開発(R&D)に集中できる環境が損なわれていた。
  • 専門業務への集中と生産性向上: 翻訳プロセスの最適化と資産化(翻訳メモリシステム構築)によって社内チェック工数が大幅に削減され、技術者がコア業務である新技術開発や特許創出に没頭できる体制を実現した。

 

技術報告書(技報)は「コスト」ではなく「企業の顔」

日本の多くの製造業において、長年の研究開発の成果をまとめた「技報(Technical Report)」は、企業の技術力を示す最大の証明書だと言えます。しかし、企業がグローバル展開を加速させる中でその「翻訳」がボトルネックとなり、本来の価値が海外のステークホルダーに正しく伝わっていないケースが散見されます。

本事例では、日本を代表する大手総合重機メーカーA社様において、技報の翻訳クオリティを劇的に改善し、技術ブランドの再定義に成功したプロジェクトの全貌について解説します。

一流の技術が翻訳によって過小評価されるという「見えない損失」

世界トップクラスのR&D投資と、一流の技術力を誇るA社では数十年にわたり、日本語版と英語版の技報を定期的に発行してきましたが、グローバル市場での競争が激化する中、技術経営(MOT)の観点からいくつかの課題に直面していました。

「直訳調の翻訳」によるブランドの毀損

A社の従来の翻訳体制では、一般的な翻訳会社による「言葉の置き換え」に留まってしまっていました。その結果、最先端の論文でありながら、専門用語が国際的な学会や業界標準の語彙から逸脱し、文脈が不透明な箇所が散見されました。

これは単なる「読みづらさ」の問題に留まりませんでした。海外の競合他社あるいは機関投資家から見て、「英語表現が正確でない=技術そのものの精度も低いのではないか」という心理的な不安感を与えてしまい、企業の知的資産価値を著しく過小評価させるリスクとなっていたのです。

研究開発リソースの毀損と機会損失

さらに最も深刻だったのは、社内の技術者・研究者にかかる過度な負担でした。

翻訳会社から納品される翻訳の質が低いため、世界レベルの知見を持つ研究者が、本来の研究業務を中断し、数日間におよぶ「翻訳の修正」や「用語の整合性チェック」という非専門業務に忙殺されていました。

高度なスキルを持つ専門職が、本来のミッションである技術革新や研究ではなく、慣れない「訳文のチェック」という事務的作業にリソースを割かれている現状は、企業全体のイノベーションの速度を鈍化させる大きな機会損失となっていました。

企業の知財を守り価値を最大化する「技術再構築」アプローチ

弊社では、A社様の技報を「単なる文書」ではなく、グローバル市場における「戦略的な資産である」と定義しました。

単に言葉を翻訳するのではなく、「技術的価値を再構築する」という視点で、以下の統合的なソリューションをご提供しました。

グローバル標準に基づく「戦略的用語集(Glossary)」の構築

まず初めに着手したのは、社内固有の技術呼称と、世界基準の専門用語を紐付ける「用語集」の厳格な整備です。これにより文章全体での論理的な整合性を確保しました。用語集に準拠することで翻訳のブレを根絶し、海外の専門家が納得できる「プロフェッショナルの技術報告書」としての発信を可能にしました。

国際的な学術論文スタイルガイド(Chicago/MLA/APA等)の徹底適用

論文としての品格を担保するため、欧米の学術機関や技術系メディアが信頼を寄せる標準的な表記スタイルガイドを全面的に採用しました。

句読点、引用形式、図表のキャプション記述に至るまで、国際的に認められた学術様式に則ることで、視覚的な信頼性と論理の透明性を高めました。これにより、技報自体に「世界で通用する学術的な品格」を持たせることができました。

技術の核心を読み解く、「サイエンス専門翻訳者」のアサイン

弊社が誇る「最大の強み」は、製造業ドメインにおける実務経験と高度な専門性を併せ持ったネイティブ翻訳者のネットワークです。今回のプロジェクトでは、物理、機械、材料工学などのバックグラウンドを持ち、技術の論理構造(なぜこの技術が凄いのか)を深く理解できる翻訳者を厳選しアサイン。機械翻訳などには不可能な、「行間に込められた技術的な意図」を汲み取り、英語圏の読者が評価しやすい論理構成へと再編、翻訳しました。

翻訳メモリ(TM)による知的資産のデータベース化

最新の翻訳支援ツールを活用し、これまでの良質な翻訳成果物をデータベース化しました。 これにより、継続的な発行における表現の一貫性を保証するだけでなく、将来的な翻訳工数の削減と納期の短縮、さらにはコストの最適化を同時に実現するインフラを整備しました。

コストから「資産」へ―世界が認める技術ブランドの確立

プロジェクトの導入後、A社様の英語版の技報は、従来の「配布物」から「強力な営業・ブランディングツール」へと変化を遂げました。

ステークホルダーからの評価が飛躍的に向上

海外の機関投資家や共同研究先から、「論理構成が明快で、A社の技術的優位性を正確に理解できるようになった」という具体的なフィードバックが届くようになり、グローバルにおける企業の信頼性はより強固なりました。

研究開発へのリソース集中を実現

翻訳の品質が安定したことで、社内研究者が翻訳チェックに割く時間が大幅に削減され、研究者が本来の主業務である新技術の開発、特許の創出、実験などに没頭できる環境が整い、組織全体の生産性が向上しました。これにより、単なる翻訳コストの削減を超えた「経営資源の適正配置」という大きな成果をもたらしました。

貴社の技術資産に「正当な評価」を

日本の技術が世界で戦うためにはその価値を正しく伝える「言葉の品質」が不可欠です。

弊社では、「言葉のプロフェッショナル」として日本の製造業様が持つ卓越した知的資産を守り、世界から賞賛されるブランドへと昇華させるお手伝いをいたします。