月別アーカイブ: 2017年10月

「旅の恥はかき捨て」だが「受け入れ側の恥はずっと残る」という話

インバウンドの伸びに伴い、様々なトラブルも増えている

インバウンド需要が益々高まる中、同時に様々な課題や問題も起きています。

例えば、以下のようなものが挙げられます。

訪日ラボ

「観光公害」とは何か?京都の夜桜ライトアップ中止に見る実際の観光公害事例

https://honichi.com/news/2017/06/21/kankokogai/

新たな観光公害 訪日客の「医療費未払い問題」…解決策はあるのか?

https://honichi.com/news/2017/08/21/medicalexpensesunpaid/

観光庁 温泉などの入浴施設にタトゥー・入れ墨を入れた訪日客への対応改善を促進も、日本人一般客は半数が入れ墨NO!

https://honichi.com/news/2016/08/16/kankochoonsennadonony/

訪日香港人観光客が好む移動手段:レンタカー利用者が多い反面、事故などのトラブルも多発

https://honichi.com/news/2016/05/27/honichihonkonjinkanko/

これらは、外国人観光客側への十分な説明が不足していたり、外国人観光客側のマナーの違いとそれぞれのギャップによるものだったりしますが、外国人観光客数が増えれば増えるほど、今後もこういった何らかのトラブルや問題は起きると言えます。

「観光立国」を目指していく以上はこれらのトラブルへの対応や事前の対策もさらに徹底していく必要があります。

そもそも旅行というのは「非日常」であるわけで、普段経験できない事やモノを見たり、聞いたり、触れたり感じたりしたいわけです。

「旅の恥はかき捨て」という言葉もありますが、誰しも気持ちが解放的になるのは仕方がないことでしょう。また「非日常」の世界に移動するわけですから、文化的な背景や知識を持っている観光客の方が珍しいという前提で考えるが妥当です。

これは外国人だからというわけではなく、旅行する人なら誰でも当てはまることです。

しかし、一方で「かき捨て」ることができないのが、受け入れ側の問題です。受け入れ側として上記のようなトラブルや問題を起こさないために、何ができるのでしょうか。

【解決法:1】まずは外国人観光客が困っていることをきちんと解決する

受け入れ側が真っ先に行うことは、どこにでも載っていますが「外国人観光客が困っていること」を順番に解決することです。

観光庁:受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査を行いました

http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000233.html

こちらのアンケート結果にもありますが、Wifi 問題は解決の方向に向かっています。

しかし一方で「コミュニケーション」はあまり改善しているとは言い難い状況です。特に「飲食や小売店」でのコミュニケーションです。

具体的には、以下のように「スタッフとのコミュニケーション」と「多言語表示」に分けることができます。

※弊社サイトでも接客英会話について記載しております。

これさえ覚えれば大丈夫!外国人観光客向け 接客英会話 22フレーズ(飲食店編)

コミュニケーションをどう円滑にするのか

アンケートを見てもわかるように、言語の違いはあっても、結局はコミュニケーションの問題ですので、本質をしっかり抑える必要があります。

「コミュニケーションの本質は何か」と言えば、それは「思いやる心」「慮る心」「姿勢」です。

受け入れ側として、まずは「外国人観光客が困っているコミュニケーションを改善する」ことに腐心しなくてはなりません。

「とにかくメニューを多言語化し、注文はタッチパネルで」というのは理解できますが、それ以上に相手の状況を理解したり声をかけるという部分は人間にしかできない部分です。

「ハードとソフトの組み合わせ、そしてバランス」という点は今回のテーマとは異なりますので、割愛しますが、外国人観光客がコミュニケーションが取れないと感じるのは、何も「注文がスムースにできればそれでいい」ということだけで解決するのではないということです。

何故なら現地の「人との触れ合い」も旅の醍醐味だからです。

そういう意味での「コミュニケーション」をどうスムースにしていくのかと言えば、言語のプロフェッショナルとしては「地道な学習と実践しかない」というお伝えするしかありません。

根本的な解決は「継続的な学習」しかないためです。

英語の学習法は様々ですが、やはり日々の継続がモノをいうので、コツコツと行うしかありません。そこでまずは外国人観光客の不満を解消するためという目的を持てば、「接客英会話」という括りで学習するのが効果的でしょう。

弊社では「飲食店向け接客英会話」を不定期で開催しております。

「飲食店向け接客英会話」セミナーのご案内(終了いたしました)

※チェーン店様の場合などは、法人向けサービスとしてもご提供しております。ご興味があれば別途お問い合わせください。

この「コミュニケーション」は決して上手である必要はありません。大切なのは、離そうとすることであり、伝えようとすること、相手の言うことを理解しようする「姿勢」です。

その「姿勢」こそが外国人観光客に届けば、多少やり取りが増えたとしても、それを含めた「非日常」体験となるからです。

「楽しんでもらいたい」「楽しい思い出を作ってもらいたい」という「姿勢」こそが、最も大切でそれこそが「おもてなし」なのではないかと思います。

コラム:銀座のお店

銀座にある化粧品店の話です。

そのお店は昨今のインバウンドブームで中国人旅行者が大挙をなしておしかけています。売り上げは順調です。

しかし、ひとつ大きな問題があります。それはお店のスタッフの質です。

・どうせ日本語が分からないだろうからと目の前で「早く決めろ」といったことや「邪魔なんだよ」といった暴言を吐く

・周りのスタッフもそれを止めないどころが、便乗する

こんな態度を取っていれば、日本語が分からなくても誰でも気づきます。このお店はブームの最中にも関わらず、徐々に旅行者が来なくなりました。

実はそれ以前に別の女性スタッフが暴言や接客態度が悪いことを経営陣に報告していたのですが、改善されることなく時間だけが過ぎていっていました。

当然この女性スタッフも「この店は将来がない」と見切りをつけて辞めていきました。

優秀な人は辞め、暴言を吐く人だけが残るお店に、いったい誰が来店するのでしょうか。

【解決法:2】この先も見据えて、「恥にならない翻訳」をする

ちなみに、コミュニケーションをすぐにスムースにすることができるツールとしては(手前味噌になってしまいますが)「多言語翻訳」は今後も重要なツールだと言えます。

最も分かりやすい例として英語で考えると、対人の場合には英会話となりますし、表示物であれば英語への翻訳となります。

飲食店なら

  • 接客英会話(お客様とスタッフ)
  • 英語翻訳(メニューや看板など読むもの)

でしょう。後者の翻訳は、テキスト情報としてずっと目に触れるものです。ですから、その品質を軽んじてしまうと、それなりのものにしかならないということです。

例えば、こんな事例があります。(名称等は伏せております)

  1. 某庁の肝いりのプロジェクトで、日本全国に点在する某施設のパンフレットの多言語翻訳を行なうことになった
  2. 大手代理店や制作会社が担当し、プロジェクトは年度末に向かって進んだ
  3. プロジェクトのキックオフミーティングが開かれることもなく、なし崩し的にプロジェクトがスタート
  4. 仕様が揺れているために、各担当者とのやり取りもどんどん煩雑になり、結果的に制作会社も代理店も翻訳会社も納期に間に合わせるため、やっつけ仕事になった
  5. 結果、納期には間に合い、印刷をし全国の施設に配布されたが、外国人観光客からは「訳抜けや誤訳、スペルミスなどが多く散見されるパンフレットとなった

これらは、よく聞く話と言えばよく聞く話ですね。一番大切な「外国人観光客視点」が完全に抜け落ちてしまっています。

翻訳を行う上で、大切なのは「読者は誰か」を把握し、「伝わる翻訳」を作ることです。その視点を見失ってしまうと上記のような問題は頻繁に起きるでしょう。

これと似たようなケースでは、「コスト優先が強すぎて品質が置いてけぼりされた」ということもよく聞きます。入札案件などでは常にこのリスクを抱えることになります。

莫大な費用をかけて新しい技術を導入するのもいいですが、まずは正確に読者が分かるように翻訳することの方が先決ではないでしょうか。上記のように本末転倒になってしまったプロジェクトは関係者も徒労感に襲われますし、最もまずいのは、受け入れ側として、「この先ずっと残る訳文」になってしまったわけです。

そして、それを利用しなくてはならない外国人観光客はどう思うでしょうか?

冒頭のアンケートにあった「コミュニケーションが取れないことによって困った」というのは、まさにこのことではないでしょうか。

言葉には100点満点はありません。しかし、インバウンドの大きな潮流の中、文章の品質というのは、外国人観光客に直接目に触れるものであり、決してないがしろにしてはならないもののはずです。

その直接のコンタクトポイントを適当に済ませてしまうことは、長期的に見てもあまりにもリスキーではないでしょうか。

まとめ

一生の思い出で日本に旅行にやってくる観光客もいます。彼らに対してコミュニケーションをしっかりとるためにも、以下の2点は改善していくことが期待されます。

  1. すでに顕在化した「外国人観光客が困っていること」をまずは解決する
  2. 特にコミュニケーションは、会話と文字情報に分け、文字情報は後に残るものとしてしっかり翻訳する
  3. その上でおもてなしの心を持って外国人観光客と接する

 

受け入れ側がしっかりと対応することが、これからのインバウンド対策にはより一層求められていくことになります。

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「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した人の話

ビジネスマンにとって必須の能力である「コミュニケーション能力」。「コミュ障」や「コミュ力」といった言葉が乱立する中、本物のコミュニケーション能力を伸ばすためにはどうすればいいのだろうか。

「僕はコミュニケーション能力があります」という発言

「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した人がいる。

当然これは「ビジネスにおけるコミュニケーション能力がある」という意味での発言だ。

「ビジネスにおけるコミュニケーション」というのは大変難しい要素を多く含んでいる。どんな資格よりも「コミュニケーション能力」を最重要視する企業が多く、「コミュニケーション」というキーワードで Amazon を検索すれば、おびただしい数の書籍が結果として表示されるのは、それだけコミュニケーション能力が簡単なものではないという証拠でもある。

これだけ困難なコミュニケーションについて、それでも取り組まなければならないのは、他者とのコミュニケーションが取れなければ、せっかく培ってきた能力や資格も活かしきれないというのが、(残念ながら)社内外問わずビジネスの現場だし、真実だということだ。

これには大前提がある。

ビジネスは設定した目的を達成することにある。それは言い換えれば、与えられた持ち場で「求められる成果を出す」ということだ。

そのために、様々な能力を持った人間が集まり、プロジェクトチームを作り、一丸となって目的を達成するために日々行動する。

この前提を共有していない場合には、「コミュニケーションとは何か」「ビジネスで求められるコミュニケーション能力とは何か」というテーマを同じレベルで語ることはできない。

「成果を出す」という重要な視点が欠落しているためだ。

冒頭の発言に戻ろう。

「僕はコミュニケーション能力があります」と発言した人は、続けてその理由を述べた。

「僕はいつも『少し静かにしてほしい』と言われるくらいよく話しているからです」

 

いかがだろうか。この発言では、「コミュニケーション能力がある」という証拠にならないのは明白だ。

しかし本人としては、「(自分が)色々なことを沢山話しているのだから、(相手と)コミュニケーションが取れている」という確信があるはずだ。

具体的な内容に置き換えて考えてみる。

例えば、「僕はあなたにクライアントのプロジェクトに関する重要なファイルの話をした。そのファイルの場所も話した。だからあなたは、そのクライアントのファイルがいかに大切か、そしてその格納場所も完全に理解し、覚えていなくてはならない」と言っているのと同義だ。

話し手としては、滔々と沢山の言葉を使って話したことによって、ある種の「自己満足=私は話した」を満たすことは十二分にできるが、聞き手としては「ワーッと話されただけ」かもしれないし、「何を言っているか分からない」かも知れないし、「早く終わってほしい」と思って我慢していただけかもしれない。

コミュニケーションというのは、相手の理解度がどの状態にあるかは、都度、話し手が進捗を確認しなければならないものだ。

当然ながら話し手が「自分の話を一方的に話すこと、また話す量が多ければコミュニケーション能力がある」とはならない。

「自分にはコミュニケーション能力がある」と言い切ってしまってしまうと、「相手の立場や状況」を慮ることができなくなるため、相手のことを完全に無視した状態で話が進められてしまう。

結果、高い確率でその会話は「一方通行」だし、結局「何が言いたいのかわからない」ものに終始するだろう。

「自己満足の話し好き」と「コミュニケーション能力が高い人」は決定的に違うものがいくつかある。

本物のコミュニケーション能力とは

では、「話し好き」ではなく、「本当にコミュニケーション能力が高い人」になるためにはどんな 要素が必要になるのだろうか。

相手への敬意や興味があること

冒頭の「僕はコミュニケーション能力があります」と発言する人の場合、相手のことを理解しようという姿勢が見られないため、一方的な話になりやすい。

「相手は自分と同じ知識や経験をしていない人なのだ」という前提を持ちながら話をするからこそ、相手にとって理解の手助けとなるであろう有効な例え話をしたり、簡略化してみたり、表現方法を工夫したりする。

しかしながらその前提がなく、またそれを怠って「自分の話は伝わっている」と思いこむのは、ある意味であまりに傲慢だし、相手への尊敬の念や相手への興味がないと言われても仕方がない。

ビジネスには必ず相手がいる。それはクライアントかもしれないし、パートナーかもしれない。さらにその先のユーザかもしれない。その人たちへの尊敬や敬意、または興味を持っていなければ当然ながら一方通行のコミュニケーションになりやすい。

相手の立場に立つこと(気を遣うこと)

簡単ではないが、真剣に相手の立場に立って考えてみる。それができれば、自ずと言葉は選ぶようになるし、気を遣うこともできる。

「空気を読む」というのは少し違うが、気遣いができるかどうかは、相手を尊敬しているかどうかに密接に関わっていると言える。

関係性を大切にする

これも同様だが、自分の家族や大切な人であれば、一方的に話して終わりにはならないだろう。それは何故かと言えば、「密接な関係性がすでにあり、自分のことを理解してほしいし、相手のことも心から理解したい」と考えているからだ。

一生懸命聞くし、一生懸命伝えようとする。それも様々なテクニックを使って。

そしてこれは、プライベートだけでなく、仕事でも同じことが言える。

相手にも大切にしていることやモノ、考えがあり、それらを尊敬しつつ、自らの意見や考えを伝えていくことがコミュニケーションの基本だ。

ビジネスの場合には、その目的や方向性が同じであることが重要であり、テクニック以前に「姿勢」が大切だということだ。

信頼関係や相互依存の関係無しに、本物のコミュニケーションは成立しない。

冒頭の発言をした人の真意は測り知ることはできないが、少なくとも、「聞き手である相手はどう思うのか?どう感じるのか?」を推測していないということは断言できる。

まとめ

クライアントとの商談、社内チームとの打ち合わせ、パートナーとの商談、同僚との打ち合わせ、上司への報告、部下への連絡など、どんな状況でも必ず相手がいるからこそコミュニケーションが求められる。

特に「知的労働」に分類される仕事の場合には、チームワークが重要になる。その中で「成果を上げる」ために最も重要で潤滑油の役割を果たすコミュニケーション能力について、どんな組織でも重視するのは当たり前の話で、今後もその要求レベルが下がることはないだろう。

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